会合という試練
ブルーとイエローとホワイトと、という衣装ではないため、周りから観るとなんのメンバーだかは、わからないだろう。
でも、会話の内容は怪しすぎる。
それはなにかのチームの合言葉のようでもあるし、冗談を言い合っているようにも聴こえるし間違いを重ねれば、どこかの芸術団体のようでもある。
「あとで、ブラックも来られるかもって」
「ブラックと、あまりプライベート話してない」
「そうよね」
「ブルーははじめて?」
「ううん、少しスケジュールとかのことで話しましたわ」
「わたしたちは、ときどきお茶してるのよ」
「紅茶だけどね」
「ブルーは、それなに」
「ブルーフラペ」
「え! なに入ってるの!」
「ブルーベリー? ラズベリー?」
「青い花を入れてるらしいわ」
「マジか」
「おハーブかしら」
「色的には、毒どくしいわ」
「ふふふっ、わたくしに似合いますの」
「ねぇ? ブルーキャラクター変わってない?」
スタバC店に来ているけれど、スタバE店が近くにあって、これは系列店なのか、とても気になるところ。
そういえば、これはなんの会合なのだろう。
イエローとホワイトが、集まる日程を決めて、こちらで合流にはなったけれど、実のところ話しの内容は、雑談か少しプライベートの質問をされるだけで、特にはなにもしていない。
「毒と花が似合うのは、とても嬉しいですわ」
「ブルーハーブティーね。ウチのメニューに考えようかしら」
「毒入りですわね」
「ちょっと! 怖いこと言わないで」
「飲んだひとが、バタバタ倒れていく、そんな飲みものもときにはいいんじゃなくて?」
「ただのホラー喫茶だよ」
「でも、ハロウィンにはいいよね」
「クリスマスには、いつもの通りよね」
「ミニスカサンタか、バニーガールサンタ」
「……意味が理解できませんわ」
「いいのよ、クリスマスは赤い服とかわいい格好すれば、クリスマスになるの」
「そうそう!」
「なんか、騙されているような……」
「ブルーは、おかたいのね」
「まっじめ」
ふう、と近くの席をみると、二人がけの席にひとりで、パソコンをしている男のひとがいる。
うるさいかしら。
でも、特には気にしていなさそう。
ふと目をこちらに向けるから、とりあえず会釈をしてみる。
あいさつが返ってくる。
そらくんも、大学の授業を受けているときは、こんな感じで真面目なんだろうな、と思ってしまう。
「大学ですわね」
思わず言葉にしてしまう。
「ブルーは、大学生なの?」
「いいえ、違いますわ」
「え〜でも、女学生って言われてみたい」
「今度の企画は、学生服ってことにしない?」
「なんか、それって応援団っぽいね」
「体育祭とかでやるやつですわね」
「チアガール」
「おす!」
「イメージあわないね」
「企画書かかなくちゃ」
なにやらホワイトとイエローが、小さなノートをだして書き込む。
ふと、思いついて聴いてみる。
「もしかしてですけれど、喫茶のコンセプトって、だれが決めているのかしら」
「アンケートとわたしたちよ」
「当選ね」
「当たりましたわ」
「オーナーの趣味かと想うでしょ」
「そうですわね」
器用にノートに書き込みながら、いまの、コスメティックスセレクトプレイヤーカフェについての次の衣装やカタチをだしていく。
「通称マジ ♡ カフェじゃなかったんですのね」
「それは店名じゃん」
「わたしたちの喫茶店では、コスプレイヤーじゃなくて、コスメティックスセレクトプレイヤーっていう略なのよ」
「オトナの事情」
「自浄作用よ」
なんとなくぼんやりと、わたくしが喚ばれたわけがわかってきた。
「イエローとホワイトは、新しく基軸を検討しているのかしら」
「わぁお!」
「ブルーってツンデレなだけはあるわね」
「ほめ言葉、意味不明ですわね」
「イミフ」
「トウフ」
「ワリフ」
「リーフ」
「いとをかしですわね」
「それよ!!」
イエローが、短い髪をぶんぶんふる。
短い髪を抑えてあげたいですわね。
「女学生イメージで最先端のいやんなインパクトを与えるのよ」
「まったく意味がわかりませんわ」
「わかったわ」
ホワイトわかったんかい!
どれだけイメージ共有できてるのですか。
「じゃ、ブルーそんな感じでね」
「どんな感じかなにもわかりませんわ」
「この次のアンケートでは、ツンデレ女学生衣装を入れるわよ」
「応援団かしらね」
「チアガールでポンポンのなかに、ナイフにしましょ」
「フレーって言ったら刺してしまいますわ」
「安心して、偽物よ」
「……ホンモノできたらもはや殺人現場ですわよ」
そろそろそらくんに助けてほしいですわ。
そらくん。
次はナイフで刺しますから、受け止めてね?
逃げちゃだめよ。
血だらけのそらくん、いいですわね。
いや、ブルーってそんな性格でしたかしら。
血をみてコーフンして、そのあとデレてたらヤンデレなんじゃ。
それか、ただのサイケデリック。
そのあともイエローとホワイトは、企画満載の絵を何度か見せてくれる。
つまりは、ツンデレの訓練というよりも、企画会議に参加してほしかったらしいと、察知しましたわ。
配信ネタはよく考えているから、そのための準備や最新のゲームなど追いかけたりするけれど、喫茶店の企画となると、少し別に考えなくては。
特に、このごろは "コンプライアンス" という名前の生きものを相手にしなくてはいけないから、あまり過激にセクシーにしてしまうと、コンプライアンスゴーストが眼の前に現れて、追いかけられあっという間に背中からがぶり。
「あのぉ、あまり過激チックはよろしくなくてよ」
「平気よ!」
ブラックさん、早くこないかしら。
ブラックさんなら、もしかして、と想う。
以前ごあいさつさせていただいたときには、けっこう律儀で真面目な印象でしたわ。
キレイな顔をされていて、わたくしの次点でおキレイでしたわ。
もちろんミリロリのことで、いまのわたくしという意味ではないけれど。
「あっ!」
ブラック登場ですわ。
ゴスロリで全身黒ですわね。
「ブラックおそい」
「先に企画会議よ」
やはり企画会議なんですのね。
それにしても、ゴスロリでスタバのカップを抱えて立っていると、さらに魅力増しですわ。
これは臨時店員じゃ、ちょっともったいないですわね。
イスを並べかえて、ブラックの座る位置を示すと、わたくしはホワイトの隣になりましたわ。
ところでホワイトはなぜそんなに、わたくしのすぐ隣によってきて、腕を組むのかしら。
「ごめんなさい、移動に苦労しちゃった」
その服装ですものね。
「ブルーですわ」
「あ、この前は、丁寧にありがとうございます」
「いいえ、こちらこそ丁寧にですわ」
にっこりとブラックは微笑むため、ニコニコですわ。
すぐに座るブラックですけれど、ホワイトがとても睨んできますわ。
「ブルーわすれてないわよね」
「なんのことかしら?」
さらに、お胸を押し付けてくる。
これは、触ってくれってことなのかしらね。
でも、ここで気を取られると、きっとあとでセクハラとして、証拠の写真とともに、拡散されますわね。
危ないあぶないですわ。
ホワイトのおデートのことは、よく覚えていますわ。
でも、いくらモテていてもショッピングにはいけても、ほかの時間はできればそらくんと一緒がいいですわね。
でも、ホワイトの存在をそらくんに紹介すれば、そらくんも少しは安心でしょうか。
「覚えてるわよね?」
「ショッピングにいくのでしょう。ホワイトは、せっかちさんですわ」
「え、ホワイトとブルー仲良しなんですか」
「そう! いいでしょ?」
「ええ、よくお似合いです」
ブラックがお世辞を言ってくれている。
でも、ホワイトはお世辞に全のっかりですわ。
わたくしに体重を載っけておりますわ。
そろそろ限界。
「ふわぁ!!」
ホワイトは、わたくしと一緒に崩れる。
あぁ、そらくん。
せめて、ここにそらくんがいれば。
もはや、ここまでですわ。
ブラックが、気を利かせて助けてくれましたわ。
これからは、ホワイトからブラックに乗り換えしましょうかしら。
「ねぇ、ほらふざけてないで、企画と衣装!」
「イエローさん、ホワイトをとめてくださいまし」
「ブルー、ホワイトは気に入るといつもなの。もっとツンツンしていいから」
「あぁ! それで、イエローはあんなことを」
「そうそう!」
ようやく少しだけ発見しました。
ツンツンはホワイトに使ってこそだと、そういう意味でしたのね。
企画会議は、ブラックがきたことで真面目な空気になり、イエローが少し方向を変えて、さきほどよりはマシなものになりましたわ。
「そういえば、他のスタッフのかたは、いつもどうされているのかしら」
他のメンバーは、あまりプライベートで話すことがないため、よくわからない。
「レッドとグリーンは不在ね。ピンクは不思議なひとよ」
「そうなんですのね」
「シャインとシャドウもいるけど、空きのときの臨時だから、あんましシフトには入らないわね」
「けっこういるんですのね」
「マネからなんか聴いてない?」
「マネージャーですかしら」
「芸能活動の事務所のようにもなってるから、シャインとシャドウは、ときどきそちらで声がかかるのよね」
「ふぇ! 芸能人でいらっしゃるのね」
「あまり目立つ活動はしたくないらしいよ」
「噂程度だけれど、資産令嬢で外にでるために入ったとか」
「いろいろありますのね」
配信の活動をしているから、なんとなく臨時のかたがたに親近感がわく。
反対に、イエローとホワイトのほうがなんだかわたくしには、少し理解が追いつかない。
企画や喫茶の仕事が楽しいのはわかりますわ。
けれど、それだけを支えに何年も続けるのは、大変な業務だと想う。
ブルーになるときに聴かれたのだ。
入れ替わりも多いから、できれば続けてほしいと。
アイは、どうだったろうか。
仕事の話しは少なかったけれど、楽しそうに話しをしていた記憶はある。
アイにもっと話しを聴けばよかったかしら。
「それで、女学生と男装とペアで、テーマ和風ダンスパーティーでいかがでしょうか」
ブラックが、話しをまとめてくれる。
「それいいわね!」
「やるじゃん」
「ブラックのその格好とてもよくお似合いですわ」
「え! ホントですか」
「もちろん!」
薄く化粧をしていて、ほんのり目元が紫で、唇もオトナしい。
けれど、前面にかわいいが好きなのがでていて、好感がもてますわ。
「ブルーさん、優しいですね」
「そうなのかしら」
「お店での様子だと、怖かったから」
「怖がられてましたのね」
「あ、いまは違う」
「いいんですの」
ようやく、次の企画が決まりつつあり、アンケートに今日の提案も載せるようだ。
きてよかった。
あとは、サッサと帰らなければいけないわね。
たしかにおしゃべりは楽しいし、ホワイトの様子は気になるけれど、また機会を選びましょう。
おデートも日にちを考えなくてはいけない。
「じゃ、わたくしはこれにて」
「え、ブルー、これからデートしないの?」
「あら、ホワイトそんなにわたくしがいないと寂しいの?」
「うん……」
「ふふふ、あなただけじゃないわ。でも、あなたの白さは、まだこれから引き立つわ。今度ゆっくりにしましょうね」
「え、うん」
「じゃね」
わたくしは、バックを手にとり飲んだカップを片付ける。
後ろの席を振り返り、手をふる。
ブラックと眼があった。
少しなにか言いたそうな感じがする。
あとで、連絡してみよう。




