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あい/抵抗  作者: 十矢


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39/125

ミリロリからブルー

 サッと、わたくし用に購入した少し小さめ姿見で、服装を確認する。

 下は薄いブルーパンツ姿で、上は少しだけ丈の短いピンクシャツに、上着に軽めな白地の猫耳フードつきの七分丈袖。

 靴下も薄いブルーで、少しだけフリルがかわいいやつ。


「うん。わるくないでしょ。むしろよし。いってきますわね」


 わたくしは、玄関で靴を履く。

 先日にそらくんと購入したブルーの厚底チェーンのものだ。

 シャラっと音がする。


 もう一度、部屋を振り返り、わすれものがないか確認してから扉をあける。


 外の日差しに、少し眼を細める。

 ここはオートロックなため、あとは閉めるだけ。

 それでも、二回は閉まっているか確認する。

 確認してから、首にふれると、ちゃんとネックレスもしていた。

 けっこう質感のあるダイヤモンドのネックレスだ。


「ブルーはツンデレ。ブルーはツンデレ」


 わたくしは、配信のくせやセリフがでないように、ブルーになりきるためいくつかのセリフをしゃべりながら、駅までのみちをゆく。


「ミリロリ嬢は、お嬢様」


「ブルーはツンツン」


「そら」


「あお」


「あい」


「ツンっておいしいのかしら」


「そらってあいかしら」


「宝石はひかるあなた」


「ノートに記した」


「あおい透明な」



 駅について、もうすでに汗ばむなか、駅の改札を通る。

 ピピッと二回音がする。


 続いて入ってきたひとは、エラーしたらしい。

 ピコンと警告音がした。


 駅のホームで、二度ほど辺りをみまわしてから、スマホをだす。

 時間はちょうどよい時間だろう。

 もうくるはずだ。

 駅員さんのアナウンスをきき、入ってきた電車に素早くのりこむ。


 席に座り、またスマホをチェックする。

 ミリロリ嬢として活動していくなかで、わかったことと、アイとして活動していてわかったことがある。


 配信者は、あまりプライベートがない。

 姿見はヴァーチャルでも、さまざまな部分で、わたくしの部分をださなければいけない。

 例えば配信部屋は、できるだけ片付けておく。

 なにかしら映り込みやものおとがしたときに、慌てて配信をストップしてしまったり、映像が急変してしまうのをできるだけさけたい。


 時間もそう。


 昼間にいらっしゃるかたと、夜中まで配信をみていてくださるかたは、ずいぶんと違うようだ。


 だから、できるだけ昼間と夜に、両方で楽しめる環境を提供する。



 アイとして活動していてわかったことがある。

 アイ個人は変化しているのに、リリスタでのイメージはずいぶんとお姉さま風で、それでいて積極的にどんな私生活をしているかをけっこう深くきかれるのだ。

 アイには、ある種類の何でも言って許してくれるという、女神にも似た想像がされているらしい。


 わたくしは、電車で移動しながらも、アイとして発信をしていく。


 そして、できるだけリアルタイムなように、周囲の会話や状況ですら、利用する。


「これかわいいね」


「この話しひどくない」


「みたみた! いいよね」


 電車のイスに座りながら、話し声などをできるだけ掴みとり、リリスタの材料として仕上げる。


 "移動中だわ

 高校生たちかわいいね

 いまも前も流行は高校生だね

 あぁでも、あの芸能人は、流行とはいえ、あんなこといっちゃうのか

 わたしとしたいとかいったら笑ってあげる


 すぐにリリスタのマークがついていく。

 コメントもすぐにいれてくれるが、コメントは常連さんのようだ。

 あるひとは、親しげに、あるひとは馬鹿にして、あるひとは、ひとことでくる。


 いまはりーちゃんのアカウントは、少なめに発信しているけれど、私信もかねているりーちゃんのアカウントより、反応がいい。



 そういえば、アイが言っていたことを想いだす。



「ウォーターバックって言うけどほんとに水の流れよね」

「自然水はおいしいものね」

「流行は自然と流言と、少しの間よね」

「悪魔の魔は、あいだの間ともつながるのかも」

「ねぇりーちゃん、たずねてもいいの?」

「なんですの、なんですの」

「りーちゃんのそれは、あざといじゃなくて、かけ言葉に言い換えとかな気が、するんだけど」

「お嬢様はいつでも品のよく、言葉づかいで魔法をとなえますのよ」

「あざとい女子の恋愛マニュアルとか読んでそう」

「な、な、な……なんですの!? わたくしが、そのようなものを読んでいるやもとか、なぜそのようなことを……」

「これは、読んでる反応ね」

「アイそういうのは、自然と聴き流して自然水のように、飲みこむものですわよ」

「いいから、りーちゃん。ホントはリアルお嬢様で、恋愛とか男の子と会話したことないんでしょ?」

「ちょ、ちょっとやめてくださらない? なんだか、まるでわたくしが、低年齢みたいに。わたくしもう、立派なレィディ! ですわよ」

「レィディねぇ。じゃとりあえず、アイの代理になったときは、クズコメントとか、サラッと躱してね」

「ササッ! モンスターは、攻撃をかわした。ゼロダメージ、ノーカウント」

「カウンター相手には」

「ボディーブローにかかとおとし」

「そうね。ノールックパスでおとしあな」

「穴におちた獲物は」

「あとは」

「わたしのテリトリー!」



 はぁ、懐かしいですわ。

 アイとは無限に配信ネタや言葉あそび、男の子の生態などの話しをしていた。

 まだそんなに経っていないのに、アイのことがひどく離れたところに感じてしまう。

 そんなことを考えていたらもう降りる駅だった。


「わたくしは、メンタルサイキョーお嬢様」


 リリスタの反応は、注目の数字と人気と有名と、そして流行だ。

 アイは一般人、フォロワー数3万2415のいまをはしる注目者だ。

 そして、ブルーでもある。

 トキメキ ♡ マジカルフェアリーにつき後ろの端末に、受けとったカードをかざすと扉がひらいた。


「わたくしはブルー」


 このなかでは、ツンデレキャラで、そして、チェキも写る。


「おはよ」

「おはよ、ホワイト」

「イエローもおはよ」


 それぞれで、今日の担当衣装に着替えて、姿見で確認する。


「ブルーは、はじめてだっけ」


 この衣装は、予告の通知はきていたけど、着るのは、はじめてだ。


「そうですわね」

「ブルーは小物わすれないでね」

「はい」

「ピンクちゃんは今日は夜かな」

「夜にはなっていたけど、先日は具合わるそうだった」

「そうなの」


 わたくしは、ピンクちゃんとはなかなか当たらないらしい。

 たしか、初日ともう一回ほどだったかも。


「あ待って」

「はい、なんですの?」


 ホワイトに呼ばれて振り返ると、胸もとに手を伸ばしてくる。


「襟がもう少しちゃんとして、あとリボンをこう拡げて」

「はい」


 でる前に、もう一度鏡で確認しよう。


「あ、無線はいったよ。交代ね」

「はい」


 わたくしは、慌てて耳に無線イヤホンをつける。

 少し雑音がしたあと、いくつかのメンバーの声が聴こえてくる。

 配信とは違う緊張感。

 いいですわね。

 ブルーのこれは、配信にも利用できるわ。

 終るときには、しっかりメモをとらなくては。


「さ、いくわよ」

「はい!」


 タタッと廊下を走り、バックヤードからでる直前の姿見で、もう一度衣装をチェックする。

 わたくしは、ブルー。

 青い衣装でツンデレ、そして、笑顔で魅了する、ブルー。


「いらっしゃいませ! ようこそですわ」



 店内に広がる光景は、ここは異世界かって感じだわ。

 キラキラとした照明に、衣装を華やかに飾ったスタッフたち。

 運ばれていく食事でさえ、どこか美味しそうでいて、味がよくわからなさそう。

 もし、ここで寝落ちをしていて、その時に夢でもみていたら、わたくし、一度しんだのかしら、とか想いそう。

 もっとも、仕事してるわたくしたちは、無線に指示はいりまくりのツンツンツンにデレ対応のチェキで、無愛想なのか歩合制なのか、怒っているのか、嬉しいのかよくわからない。

 特にブルーは、わたくしはまだキャラクターが統一できなくて、ときどき「キャッ」とか「あ……」とか、言ってしまい、お客様のほうが「ブルーってドジッ娘だね」とか、「仕草上品ね」とか、いってくれるため、間違ったなとわかる。

 アイさんからかいにきてごめんなさい。

 アイさんが、ブルーとして懸命にやってるなか、ほんとに申し訳なかったです。

 でも可愛いかったです。

 ツンデレからのとびっきりスマイルにやられてましたわ。


 そうか、と想う。

 ブルーも、配信もこうしていけばいいのか。

 またひとつ、アイから教わる。

 わたくしは、アイからいろんなことを教わっている。

 あぁアイ……と想い出に浸る余裕などなく、せわしなく動きまわる。

 一時間ごとにお水休憩という、バックヤードにいって、何分か休憩するという時間でイエローと会うため、少したずねてみる。


「ねぇイエロー、少しいいかしら」

「うん、なに」

「ツンツンって、ヤバいですわね」

「そ、そう?」

「ツンってするでしょ、変な汗きますわね」

「あぁ」

「イエローは、はきっ娘ですわよね」

「元気娘よ!」

「げんきぃ〜って聴くとき、なんかヤバくならないです」

「慣れ」

「慣れでごさいますか」

「練習」

「練習でございますか」

「思考ストップ」

「思考ストップでございますか」

「あとこれ」

「これ?」


 小さい鏡をみせてくれる。


「鏡のなかのわたし」

「鏡のなかでございますか」


 わたくしは、小さい鏡のなかをみる。

 ブルーに染まったわたくしがいる。

 わたくしのなかのわたしがいう。


「わかりましたわ、わたくしそのものがブルーなんですのね!」

「いやよくわからないわ」

「イエローそんなぁ~」

「ただ、鏡でもみて表情だけでもつくるのよ、わたしげんきぃ! ってね」

「な、なるほどでございますわ」

「もうそろそろいかなくちゃ」

「はい、イエロー」

「そっか、今度練習しよっか?」

「え、練習」

「休みの日あわせて、練習しよっ」

「は、はい」


 う〜ん、練習したいのはやまやまで、そこそこなんですけれどスケジュールはたにたにで、へろへろなんですのよね。

 あ、でも、そらくんに練習をお願いすれば、電話では練習できるかしらね。

 あぁでも、そらくんにツンツンばかりしていると、練習とはいえ、そのうちミリロリ嬢はそんなじゃなかったとか、言われないかしらね。

 わたくしは、ミリロリ嬢とブルーのどの役目がよりそらくんに、突き刺さるのか、試さなくちゃいけないのね。

 いいえ、これは試練なのよ。

 練習という試練を越えてこそ、尊き恋人と得難き青春と、一ミリグラムの隙間の少女を手に入れられますのよ。



「おつかれさまでした」

「おつかれさまでございますわ」

「おっつつ〜」


 混み過ぎですわ。

 何度「はやくきめてよね、トロいんだから」と、「またきてよね。まってるからね」を言ってしまったのだろうか。



 もはやわたくしは、

 ツツツツツツツツ ン デデデデデデデデデデ レ

 なのではないかしら。


「ねぇ、ホワイトさま」

「え、なに」

「少し前から気づいてはいたのですけれど、この際だから訊いてもいいかしら」

「なになに?」

「ナゼヒトはそんなにもツメタクされたあとでヤサシクされるとオチルんですのかしら? それならば、いっそのことデデデデデデデデデデデデデデデデ………………」

「ちょっと壊れた?」

「……レにしたほうが両者至極満足度百萬点なのじゃないかしら」

「う〜~~~ん、それってさ」

「はい」

「ギャップ萌えじゃないかしら?」

「ギャップですかしら」

「そうね、例えば純なかわいいホワイトがいるでしょ」

「いますわね」

「キュンとか言ってる子が急にエ○いこと言い出したら、イチコロね」

「そういうこと」

「それそれ」

「ひくわぁ」

「だれ!? 引くとか言うの」

「ホワイト、おおきい声ですわ」

「ホワイトは、純だからなんでもありだよ」

「純愛に、純粋に純水」

「お水混ざった」

「これあるからね」

「ペットボトルね」

「それ美味しいよね」

「ですよ〜」

「あ、ブルーはキャラクターの話し?」

「てか、イエローが何気なく一番ラクなんじゃって話し」

「それそれ〜」


 じゃないですわ。

 ていうか、わたくしはこの更衣室兼控え室で、実は浮きまくっているんですかしら。

 でも、このかたたちのマックステンションについていけるのかしら。

 やってみようかしら。


「あ、ねぇ」

「ふぇ!? なんですの?」

「ホワイトが、集まらないって」

「え、集まるんですの」

「特訓ね」

「練習ね」

「みっちりね」

「ネチネチね」


 このかたたち情緒ヤバくないですか。

 もしかして、このキャラクターもまた演出の一貫なのかしら。


「と、とっくんでございますの?」

「ブルーのデレは完璧みたいだから、ツンのクールをひとまずレベルアップね」

「レベルアップは、得意なんですの」

「え」

「いえ、なんでもございません」

「シフト表から、あいてるところチェック!」

「やっぱり土日祝日は入ってるわね」

「でも、空きまってると先になっちゃいますわ」

「そうそう〜」

「強行いくか」

「いきた〜い!」


 やっぱりこのひとたち、情緒不安定なんじゃ? やっぱりヤバい集団?


「三日後、それぞれ隙間でき次第に、どこかに集合ね」

「カラオケか、スタバね」

「カラオケいいね」

「じゃスタバね」

「なんで!?」

「歌ってばかりいたら特訓にならないでしょ」

「やむなし! カラオケは、デートでいこう」

「だれといく〜?」

「もちろん、ブルーとよ! ね」

「は、はい、ですわね?」

「ほら、ブルーもデートしてくれって〜」

「言ってませんですわ」

「え、ブルーデートしてくれないの? おかしくない」

「ここでは、一回はデートしてお持ちかえりされるんですよ」

「マジでございますか?」

「そんなわけないでしょ」


 だんだんと歌が完成してきそうですわ。

 これでもわたくし、歌つくりますのよ。

 情緒不安定 真剣(マジ)マックス控え室ですわね。

 ササッとスマホを手に取り、いま思いつくかぎりの歌詞を描いてメモしておく。


「それで、夏と秋冬で、キャラクター変更祭を開催して……」


 話しは続いてるみたいだけど、わたくしは、いまスマホでメモしたことの気分を忘れないようにする。

 気分で繊細な部分がときどき変化してしまうのだ。

 いい部分の変わりもあるけれど、配信ネタやパッと出る瞬間のは、できるだけ迅速にチャージしないといけない。

 まだ会話が続いてくなか、尊き恋人が待つわたくしは、そろそろ、と席をたつことにする。


「それじゃ、わたくしはこれにて」

「え、ブルーは予定あるの」

「ええ、まぁ」

「ふ〜ん?」

「じゃ」


 ササッと、荷物を持ちすぐに、扉をでていく。

 なるほど、控え室で作戦会議がひるひる、ゆうゆう、よなよな開かれているのね。

 裏の扉を開いて、いちおう扉がパタンと閉じるのを確認してから歩きだす。

 一度スマホで、連絡したあと、駅までの道を優雅に歩いてく。



「ねぇ、ブルー!」


 急に背後から呼ばれるため、ビクッとなる。

 後ろを向くと、ホワイトがいた。


 衣装から私服になっていて、少し薄暗いため、表情が暗い。


「びっくりしましたわ」

「あぁ、ごめんなさい」

「どうしましたの?」


 わたくしはバックを持ちなおして、正面に向く。


「特訓もいいけど、少し話さない?」

「あぁ、えと」

「駅までの道でいいわ、いきましょ」

「うん」


 横に並んで歩く。

 この時間も人は多いけれど、これなら話しながら歩けそうだ。

 バックのなかで、ときどき通知が鳴っている気がする。

 ホワイトは、そういえば手帳にメモがいくつか書かれていた。



 "ホワイトのファン"


 "ファンの目移り"


 "階段"


 ……

 ……



「ブルーは、今回の衣装もよかったわ」

「ありがとう」

「なにか、モデルとかしていたの?」

「モデル? それは、少し違いますわ」

「違うのね」


 正確には3Dモデルですわね。

 Vがつくやつですわね。


「モデルじゃなくても、美人だしメディアにでるとか、声優とかどれかチャレンジしないの?」

「う〜ん、挑戦しまくり」

「そうなの!?」

「ホワイトは、目指すものはなにか」

「いまのところ、雑誌インタビューとアイドル活動だけど、アイドル戦国だからね」

「たしかにですわ」

「よかったら、ブルーも一緒になにかしましょうよ」

「事務所のかたでしたか?」

「事務所の所属のかたです」

「ふふふ」

「あ、ねぇウチの事務所、ホント活動幅広いから、少しでも喫茶続けるなら、考えておいてね」

「はぁい」

「あと、今度遊ぼうよ」

「それは、特訓でございますね」

「違うわ。プライベートで一緒したいな」

「あら、デートですわね」

「そう、デートしましょ?」

「考えておきますわ」

「これは、フラれそう」

「まだ、そうとは決まってないわ。わたくしのこれからの観察眼がひかりますわ」

「そっか、期待するわ」

「じゃ、これで」

「あ、それから……」





「りーちゃん、どうしました?」

「あ、そらくん」

「ボーッとしてません?」

「あぁ、少し仕事のことをね」

「配信大変ですよね」

「それも、ですけれど、いまはブルーのことでしたわ」

「ブルーのツンデレ、レベルアップできそうですか?」

「ええ」


 帰り電車にのり、買いものの合間でそらくんに連絡して、部屋まで来たのはいいけれど、電話を繋ぎながら、うっかり考えごとを(ひた)はしってしまいましたわ。

 せっかくのそらくんとの電話ですのに。

 これは、ツンツンするしかないわね。


「それはよかった」

「そらくんは配信の姿を見慣れているから、わたくしが青いフリルを着ていても、そんなにキョーミわかないわよね?」

「え、そんなことは」

「たとえそらくんが、お店にこなかったり、コメントがおそいからって、寂しくなんかないんだからね」

「そんなぁ」

「おデート相手が増えましたし、そらくんとの連絡も少しおそくなるかもね」

「そうなんですね…………あっ! もしかして、ツンツンしてます?」

「まぁそんな、ツンツンしてるなんて、そんなことあるわけない」

「そっか、電話で練習してたんですね」

「話し聴いてます?」

「デート相手って男の子ですか」

「あらあら、嫉妬してくださるんですか? いやだぁ恥ずかしい」

「キャラおかしくないです?」

「え……どの辺でしょうか」

「デレというより、別の方向にいってる気がします」

「あわわ、まだわたくしデレを習得していないんですのね」

「りーちゃんは、できれば素でいてくれると嬉しいんだけど」

「いいえ! デレますツンします!」

「ブルーも大変だなぁ」

「そらくんこそ、大学順調ですの?」

「大学生活、というよりバイトを上手にこなすのが、大変かな」

「新しいのとか、なにかしないんです」

「新しいバイト、いいのあるといいなぁ」

「バイトじゃなくて、配信以外で趣味とか、スポーツとか」

「りーちゃん以外にあまり興味ないからなぁ」

「まぁ! なんてこと」

「なんで驚くの」

「大学は、高嶺の花なんですのよ」

「そうなんですか」

「間違いましたわ。花より団子ですわ」

「どう間違えたの?」

「学業も確かにいいけれど、続青春オンステージとか、たくさんいるキラキラガールさんたちに目移りするとか、シャキシャキウーマンさんたちと探検するとか」

「りーちゃんの大学イメージってどんなの」

「さぁね、わたくしのは、控えめに言ってワクワクパラパラですわね」

「ぼくが、目移りしてたりするわけないじゃないですか」

「わかりませんわよ。大学は底知れぬ闇と聴いておりますわ」

「どこの情報なんですか!?」

「あら、女の子のひみつを知りたくて? ハレンチな」

「この前から、言いたくてこの際だから、言っていいかな」

「ええ、なんですの」

「その言葉、ちょっと卑怯な手口じゃないですか?」

「あら」

「ハレンチとか、そういうので返事されると、こちらは口を閉ざすことになります」

「あらあら」

「せめて、違う返事がいいです」

「えーー! どうしましょう〜! わたくし世間一般に詳しくないですわ! それは、そらくんのほうがきっと詳しいんですわよ」

「そんなことは、ないでしょう。りーちゃんは、かなり勉強してるし……」

「っていう返しじゃダメかしら?」

「返しのところか。でも、それを毎回するの?」

「えーー! そらくんのほうが勉強熱心だし、わたくしよりアワワなことやソレソレのこととかも詳しいですわよ」

「りーちゃん、ツンツンはいったいどこに……」

「……そらくん、わたくしいま、いくつもの主人公を操るため、どこまで統一感を保てるか、怪しいですわね」

「りーちゃんは、分身中……」

「返信と分身って似てますわね」

「りーちゃんは、変身して分身……」

「分身してから返信すると、効率いいですわね」

「りーちゃんは、変身して分身してから効率化……」

「…………そらくんいま変な想像しましたわね?」

「ふぁ! はい! いいえ!」

「なにそれ、中間の返事? ですこと」

「えと……な……んでもない」


 そらくんは、これは変な想像をしましたわね。

 わたくしはわかってきましたわ。

 わかってきてしまいましたわ。

 そらくんは、なにかしら会話の返事の途中で、変な想像を増して、ときどき、会話よりも妄想にいってますわね。

 よくわかりますわ。

 男の子ですものね。

 男の子が、そういう生き物であるって、わかっていますわ。

 つまりは、そういうことよね。

 想像を足して足して足して、気づくと遠い世界に旅だつのよね。



 かわいいことね。



「ふぅ…………カワイイそらくん」

「え?」

「ううん。いいの! 平気よ。わかってますわ。そうよね。青年期ってかわいいわ」

「あの……りーちゃんなにか勘違いしてませんか」

「へ、平気よ! じゃ、じゃあ、またね。ううん。うふふ、そうよね。平気ですわ!」

「まてまて! やっぱり勘違い……」

「じゃ、ごきげんよう!」


 そらくんの返事は待たずに、通話を終わりにしてしまう。

 終わりにしてから、うふふと笑ってしまう。

 ニマニマしてしまう。

 そらくんは、お逢いするとかっこいいのに、会話を続けると、どこかかわいらしい。

 男の子には、かっこいいと言うほうがいいと聴くけれど、やはりどこか。

 うふふ。


「は、しまったわ。ツンツン稽古ももう少ししなくては、いけないわね」


 スマホを充電状態にすると、さっそく鏡を取り出して、ツンツンしてみる。

 鏡のなかのわたくしに向かって、いくつかポーズをつくり、表情の練習をする。

 ツンツンしているうちに、また想い出す。

 アイのこと。


 ブルーとして、かなり評判のよかったアイは、あのお店を有名にするのに、だいぶ貢献したようだ。

 一時期、ブルーの代わりにブラックが登場してから、ブラック人気もあったけれど、予想よりブルーを推す声が多かったそうだ。

 ブルーのキャラクターの人気以外の思惑もあったに違いない。



「アイなんて、もう知らないんだからね」


「アイがいたって、わたくしは変わらないんだからね」


「わたくしは、アイではなくてブルーなんだから」


「そらくんだって、ブルーのわたくしがお気に入りなんですもの」


「愛を知らないわたくしが、アイを知って空と繋がった」


「次は、愛してるって言うのよ?」


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