表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あい/抵抗  作者: 十矢


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/93

わたしはブルー

 今日は、夜にコスプレ喫茶の時間が短めなバイトがあるため、少しだけ時計を気にしてしまう。


「まだ平気ね」


 駅をでて、十分くらいしたところにファストファッションのお店があり、そこに入る。

 けっこうにぎわっているなか、いま着ているのと似たようなショートパンツと、もう少し長めなロングのをみつけるも、少し色や形が気にいらない。


「うーん。もう少しタイトか、ブルーめかな」


 試着室前に持っていくが、やはりイマイチで、戻してしまう。

 すぐにお店をでて、次のファッションのお店にいく途中で、男の子二人に声をかけられる。


「モデルどうっすかね」

「え、いいえ」

「じゃ、連絡先だけでも」

「あのナンパですか」

「ナンパでもいいけど、写真だけでも、どうですか」

「いえ。いりません!」


 さっさと、二人から逃れてから、スマホで、リリスタ投稿してみる。


 "ナンパだか、モデルだか誘われた

 でも、怪しいの


「ふぅ」


 後ろを振り返ると、まだその男の子二人は、こちらをみていた。

 気づかないフリをして、次のお店に入る。



 "アースアンドファンタジーウインター"


「ここは、知ってる」


 人気のBGMが流れるなか、店内をみていくと、さきほどのよりタイトなジーンズと、ダメージ風なショートパンツがあった。

 試着室で、はいてみる。


「うん。お尻の形もいい感じ」


 すぐにお会計に持っていき、

 ブラックカードで支払いをすます。

 外にでたあとで、二つめのショッピングバックの写真を撮って、投稿しておく。


「ホントは、ここの袋もお気に入りなのよね。でも、ギフトじゃないし」


 駅のロッカーのところで、買ったパンツも収めると、駅ビル内にある

 スタートバックスに入り、チョコフラペを注文する。

 写真を忘れないで、撮る。


 "チョコ


 スマホをみると、ラルルンが、何件もきていた。

 座りながら、チョコフラペを飲みつつきてる通知を流していくと、いくつか気になる連絡がきていて、それだけ返事をしていく。

 その間にも、リリスタの返信とリリスタマークは続いてる。


 あとは時間みて、コスプレ喫茶にいくだけ。


「それにしても、アイはずっとこんなの続けてるんだね」


 アカウントフォロワーは一万を超えていて、今日だけで、また百は増えた。


 通知はずっとなり、投稿するたびに返信がくる。


「一ヶ月くらいしたら、二万くるかな。まさかね」


 スタートバックスのカウンターで、四十分くらいいて、ゆっくりしたあと、リリスタに投稿してから、移動することにする。


 "チョコよき

 冬にはいちご



 ふと、気になる。

 アオイのときには、アイの一番でいたくて、ずっと一番リリスタマークを狙って、アイ通知がなると、すぐにスマホをチェックした。


 いまは、アオイがいないから、誰かがその一番を狙っているのかもしれない。


 わたしの一番は、

 って投稿しようとしてやめた。

 すぐに、五件ほどマークがつく。

 このうちの誰かなのかもしれない。


「アイコンと、ネームもそろそろ覚えないとなんだよね」


 きっとみんなアイの何者かになりたくて

 必死でリリスタに投稿して返事をもらうのだろう。


 かつて、わたしはそのひとりだった。

 そして、そういえばと思い出して、手帳をみる。

 ストーカーあり注意、という手帳の一覧を思い出したのだ。


「ストーカー」


 あっと、気づくとリリスタで、

 会いたいとか会おうよとか、連発してくるひとがいて、それかも、と思う。


 たしか、元恋人らしい。

 あれ、そしたら、わたしの元恋人って意味になるのか。


「ヤバいね」


 移動して、駅に向かい、ナンパの男の子たちがいないことを確認しながら、来た道を戻っていく。

 駅の改札に入る前に、ちらっと後ろを向くも誰もついてきていないはず。


 駅の時計を確認すると、時間はちょうどいいはずだ。



 駅ホームでボーッとしているとすぐに、電車が到着する。

 あとは、バイト先の駅で降りて、バイトのコスプレに着替えればいい。



 電車に揺られながら、あの不思議な状態を思い出す。



 アイのツンデレキャラのシフト時間が、空いてしまっているはずと、バイトに応募しにいくと、まるでわたしを待っていたかのように、即日アルバイトが決まってしまう。


「シフトはいつ入れますか?」

「はい。あの大学生なため、平日午前からは講義も入るため、夕方や夜か、休日が主なのですけど」

「では、夜の時間三、四時間と、休日の空いてる日にシフトを入れましょう」

「はい」

「あ、それから、ときどきプライベートなことなのですが、休みたい日があります」

「ええ、いいですよ。事前申請するか、二日前までに、シフト連絡をリーダーに伝えてください」

「はい」



 帰りに、仮に埋められたシフト時間表をみると、それは手帳にかいてあったアイの予定とほぼあっていた。

 違うのは、わたしのプライベートな "バイト" 時間の日程だけ。

 でてから、もう一度手帳と見比べた。


「まるで、アイの穴うめをわたしがするのが、わかっていたみたい」



 駅から、歩いてコスプレ喫茶の前にたつ。

 看板をみながら、その裏口にまわる。


 今日から、わたしは "ブルー" と呼ばれる。



 それは、 "アイ" のバイトのときの呼び名だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ