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90 職業学校の体制が決まって来ました。 〜 趣味からその先へ

 12月に入り、副校長予定のワトソンさんがベルトラン様の補助員として学校に来ました。ワトソンさんの部下として、キュラスのバファローズさんとシャフェーのユナイトさんも年明けから着任するそうです。問題はやはりフェーブルの工房関係者で、プレパトさんの調査結果が不明瞭で選出出来ていないのだとか。


 フェーブルが決まっていたら、本当は相談役もワトソンさんと一緒に勉強を始める予定だったそうで、それを聞いていたバッファローさんは地元キュラスという事もあり、


 『仕事は早く覚えたいから、年内はボランティアとして参加する。』


 とワトソンさんに申告して来たそうです。偶々、フェーブルのビーズ工房にシャフェーから来た職人さん経由で、ボランティア参加するバッファローさんの噂を聞いたユナイトさんも、


 『毎日は難しいが、仕事は早めに覚えたいから、俺も年内からボランティアするぞ。』


 と連絡して来たとか。頼もしい人が選ばれた様でホッとしました。


 私の初仕事で組織図を明確に貼り出して、役割としての上下関係を位置付けました。此処に年齢や職種は影響されません。トップは副校長。領主夫人は顧問として、副校長より少し上の位置。相談役は副校長の下で実行部隊。と位置付けました。相談役は三人居ますが、その力関係には口出ししません。表向きは横並びですけど。


 ベルトラン様をトップに運営するのは当然として、職業学校の指導方針を決めるのはワトソンさんになります。私の仕事は指導方針の指針を示す事や、問題が起きた時の応援と言うか、処理ですね。所謂裏方です。


 カヴィヨンが入学する来年からも一応今年と同じ事を進める予定で動いていますが、その次の年からは今年を振り返って新たな事をするのか、このままの路線で続けていくのか、色々考える事は多そうです。


 と言っても、何を教えるのかは各工房で決めるので、私達の決める事は少ないかも。ワトソンさんには何か相談が有ったら直ぐに伝えて下さいね。と伝えました。


 ギルドに行きリーバスさんに、話の出なかったフェーブルの相談役はどうなっているのかを聞くと、やはり、プレパトさんがやらかしていたそうです。相談役を打診するリストの為の人選なのに、碌に調べもせずにリスト外の前工房長を、『この人。』と連れて来たそうです。


 推薦理由が曖昧で要領を得ないので、仕方ないからリーバスさんがその前工房長を調べた所、グランダイ領の息が掛かったと言うか、グランダイ領に本店を持つ工房の元工房主で、出身もグランダイだそうです。当然ですが認められず、未だにフェーブルの相談役はまだ未定のままだそうです。


 因みにこの件を持って、プレバトさんの罷免が決定したそうです。気弱なオプショさんの補助をしていたせいか、自分の考え最高な変な自信が有って、リーバスさんの教育を馬鹿にしていた様ですね。


 『彼はグランダイの考えから更生出来ないと諦めました。根は素直だとオプショさんは庇っていますが、素直な処を洗脳されて刷り込まれたからこそ、ヴェルムの考えを受け入れられないのでしょうね。』


 とても疲れた顔つきでリーバスさんが言い放ちました。プレパトさんの後任は、オプショさん達の監視役も込みで投入していた元キュラスのギルド職員が副ギルマスになるそうです。元々の職員でオプショさんの補助を勤まりそうな人が居ないって事も問題では?と思いましたが、口には出しません。


 それにしても、賄賂が有れば何でも出来る。って思っていると言う事は、正義ってお金で買う物って思っている事なのかしら?とグランダイの考え方を不思議に感じてしまいました。ただ、マジックバッグの不正がバレて憤っていた事を思い出して、こう言う事かぁと納得もしましたけどね。



 お茶会で頼まれたビーズアクセサリーを持って、クリミアナ義姉様に会いにリストランテに行きました。一緒に頼まれていたビーズ用のワイヤーも一緒に納めます。


 クリミアナ義姉様が依頼する鍛治工房はまだ決まっていないようで、リストランテから見習いの職人が来ていないので、キャリーの監修でペリーヌの作ったワイヤーです。


 詳しくは知らないのですが、材料の混合に秘密が在る様で、ペリーヌの作品とは言え、多少のムラがあるものの目立たない程のキチンとした出来です。私も事前に幾つか作って試したので強度の保証は出来ます。ただ、キャリーが作った方が滑らかで捻れにくいような気はしますが、其処は当然でしょう。


 一緒にビーズ工房に行き、クリミアナ義姉様にワイヤーでアクセサリーを作ってもらうまでが今回の約束です。クリミアナ義姉様も工房の隣りに教室を開く目的が有るのです。ジャレットと一緒に作った事のあるお花のブローチと、今回の花のリングの二種類を作ります。


 ビーズ工房に着くと既に何人か集まっていました。その内の2人を紹介されました。見覚えが有りますね。


 『マリレーヌさんにまた教えを請いに行きます、キースとエディです。僕たち、工房で器用さを競い合って選ばれたんです。是非、雫型ビーズを作れるようになります。』


 やっぱり、リストランテから来ていた子達でしたね。そう言えばヴェルムでドロップビーズが量産出来ないならと、キエランさんから打診されていたのでした。


 『話は聞いてます。マリレーヌ達が作れる数には限界が有るので、他所にはまだ販売出来ないでいるのです。あなた達がリストランテの分を作ってくれるなら助かります。よろしくお願いしますね。』


 学生時代から楽しげに蜻蛉玉を作っていた子達です。彼等なら早々に技術を物にして、リストランテでドロップビーズを生産してくれそうです。クリミアナ義姉様も、


 『ビーズ工房は話が早かったのですけど、ワイヤーを頼もうとしたら、どの鍛治工房も良い顔をしなかったらしくてキエランが困っているのよ。どうも、若い子に教わるのは抵抗が有るみたいね。』


 と頬に手を当てて困ってみせます。ベンも若いけれど、更にキャリーは女性ですからね。


 『実は、キュラスの鍛治工房でも序列の問題は有って、兄弟子達の態度が悪かったの。だから、ギブソン工房のワイヤー部門という形で分けているし、見習いも孤児院から連れて来て素人から育てているの。秘匿したい技術も有るから、何処にも繋がっていない事が大切だとギブソン工房長も言っていたし。

 ワイヤーの件も何処まで教えるかは私の口出せない問題なのは伝えてあるでしょ。その伝えられないだろう秘匿の部分が引っ掛かっているのかも。』


 折角、頭を下げて送り出しても、技術だけで肝心な所を教えてもらえないなら意味がない。と考えても仕方ないでしょう。材料を引っ張って伸ばす事で細くなるんだろうなぁって事なら私でも想像が付きますけど、その材料の配合は教えられないんじゃないかな?


 『でも、ギルドに登録してしまえば問題ないんじゃ無いかしら?』


 キースとエディを前に、ワイヤーやビーズを用意しながら話していると、集まっていた人の中から、


 『其処なんです。どうしたら教えてもらえるのでしょうか。』


 と声が掛かりました。若い職人さんがこちらから見つめています。


 『あの、オレ、コバルと言います。鍛治工房に勤めています。今日は領主夫人様が来ると聞いて待ってました。オレ、手先は器用ですけど、力が無いから、見習いから上がれません。でも、親方がワイヤーは子供が作っているおもちゃみたいな物で、立派な鍛治職人が作るもんじゃねえって言ってたの聞いたんです。

 なら、子供でも作れるならオレでも作れるんじゃないかって………』


 だんだんと声が萎んで行きますね。キエランさん経由でリーバスさんに行き、其処からギブソンさんに行った話だから、私はそんなに詳しく知らないのですよ。


 ヒョロっとした見た目の青年はとうとう俯いてしまいました。いつの間にかキースが肩を抱いて支えています。


 『あの、コバル兄さんに今日の事を教えたのは私です。コバル兄さん、本当に手先が器用です。私以上に器用なんです。でも、病気がちで力仕事に向いていないのに、親戚の鍛治工房だから抜けられなくて。その、ワイヤーの話も私が工房で聞いて、コバル兄さんに伝えたんです。鍛治工房で話が出たら思い切って手を上げなよって。』


 クリミアナ義姉様と顔を見合わせてしまいました。今日はビーズアクセサリーを作る筈だったのですが、予定変更した方が良さそうです。


 『えーと、キエランさんを呼んだ方が良いかしら?クリミアナ義姉様、どうしますか?』


 『そうねぇ、ギルドに行って、キエランを交えて話した方が良さそうね。』


 取り敢えずビーズ編みは次回と言う事にして、コバルだけ残して解散してもらい、先触れを出してギルドに向かう事にしました。話によってはギブソンさんとベンやキャリーにも相談ですね。


 キエランさんを交えた話し合いの結果、ギブソンさん達の許可を得たら、コバルのいる鍛治工房の工房長を呼び出して説教した後に、コバルを研修させる事になりました。


 その前に、ワイヤーの秘匿項目のギルド登録と情報料などの設定を、リーバスさんと決めなければいけないそうですが、仕事の出来るリーバスさんの事です。たぶん、もう終わっているんじゃ無いかなぁと思っています。


 後日、クリミアナ義姉様と日程を調整して、公爵邸に前回の人を集めて、ビーズアクセサリー作りをしました。ヴィクトリアも作りたいと言う事なので、ジャレットも一緒に向かいました。今回は邪魔が入らない場所なので、ゆったりと作りましたよ。


 ヴィクトリアはお花のリングをマスターしてよろこんでましたし、クリミアナ義姉様はなんと、レシピを描きながら小花を集めたブローチにチャレンジして、見事にレシピを完成させました。(笑) お花のリングは更に簡単なので其方もレシピ化するそうです。


 『ビーズの数や順番を理解出来たから、このレシピを見ながら用意してもらったワイヤーを使い切るまで練習すれば、私にだって綺麗に作れるようになるわ。ね、ヴィクトリア、貴方もそう思うでしょ?』


 とにこやかに宣言されるクリミアナ義姉様。


 『母様は細かい絵もお得意なのですね。とても分かり易いです。』


 とレシピを見ながらヴィクトリアが誉めてます。ビーズをワイヤーに何個通して、次はこのビーズにこちら側から通して、と作りながら口で説明するよりも、一目で見て分かる図解は教わる側にとても親切ですね。流石、クリミアナ義姉様です。


 たぶん、今回用意したワイヤーを使い切る頃には自分だけのオリジナルを作っていると思いますよ。と言うよりも、見本を見ながら?レシピを描き出す能力が凄いと思いました。次に会う時にはクリミアナ義姉様のオリジナルを含めて、更に多くのレシピを見せて頂けそうですね。



 年内を忙しく過ごしたお陰で、ゆったりとした年明けを迎えられました。私達が立ち上げた工房や関係した工房の問題点も、いろいろと整理してこれからの方針を立てる事が出来ました。


 ワイヤーの件は、ギルマス同士が動いた結果、無事、コバルがベンの下に付いて研修が始まりました。コバルの親戚のやっている鍛治工房とギブソン工房で、工房単位の守秘義務契約を結ぶ事でコバルを受け入れたそうです。ギブソンさんが出て来た事で若造云々が言えなくなって、下に付く事を受け入れたのだそうです。


 キースとエディについては、最初の段階で守秘義務契約を結んでいたので、問題無く雫ビーズの研修を進めています。元々、姉妹協定を組んでいるビーズ工房同士だから問題自体無いのですが。


 エルーシャ義姉様の魔石工房は、元々、私の名義貸しみたいな物でしたし、双子の出産の時に、私自身が魔石の補充をしなくても良いように冒険者と契約をしたので、魔石の補充も私の手からは離れました。そこで名前だけの工房長は卒業して、経営からは外れさせてもらいました。


 ハリシエダ様もブリアさんの工房の材料問題で、サイトバル兄様と共同でトレントを定期的に納入してもらう取り組みを立ち上げて、冒険者の底上げに取り組んだ事で、領内は良い方へ動いているとサリシン義父様から褒められました。まぁ、私が持っているトレントの質より落ちますが、一般販売には問題無いと思います。希少なエルダートレントは、王家とか、忖度が必要な相手の時用に確保しておく事になりました。


 ショコラ工房は元々フォニアム様に輸入業務をお願い、と言うか、材料を用意して貰って、ショコラティエが作ってますからね、ハリシエダ様は所謂後見人でしか無い立ち位置です。私もチョコのレシピを渡して、基本的なカカオの扱いを教えたり、新商品のアイデアを出すだけで、経営は最初からノータッチです。


 まぁ、ヴェルム領内で領主夫妻が関わっている産業はどれもこれも順調のようで、一安心です。

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