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セカンドライフ〜インベントリって素晴らしい  作者: 清香


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66 三度目の出産 〜 ビーズ工房が始動しますよ

 3回目の出産を控えて用意は既に終わっているのですが、予定日を過ぎたのに、今回は産まれる気配がしません。前回より大きなお腹に育ったので、足元が見えず、家の中を歩くのにさえ神経を使います。


 『今度の弟妹達はノンビリ屋さんですねぇ〜』


 と笑いながら近寄って来たカヴィヨンは、私のお腹に向かって、


 『早く母様お腹から出て来て一緒に遊ぼう。』


 と話し掛けて促してくれています。着いて来ていたクリスティやジャレットも真似をして、


 『出ておいで〜』


 と二人で誘っています。これも胎教の一つかしら?


 外はまだ寒く、私は暖炉の前の日当たりの良い長椅子に座り、暖かな室温にノンビリと編み物をしていた筈ですが、3人の子供達に囲まれて過ごす内に、何時の間にか一緒にうたた寝してしまっていたようです。


 何かが身体の中から抜け出して行く夢に、思わずあげた自分の悲鳴で目を覚まし、私の悲鳴を聞いて駆け付けたフェンリル母様に分娩室に飛ばされました。


 邸内に一気に緊張が走り、お産婆さんや女医さんもフェンリル母様の転移で連れて来られました。私はうっかり寝ている間に、またしても破水してしまっていたのです。夢に見た何かは羊水だったのでした。


 前回、回復の付与魔石の効果が有り過ぎて破水してしまったのに気付かずに動いていたから、今回は気を付けていたつもりでしたがうっかり寝てしまって意味が有りませんでした。


 破水の知らせを聞いて駆け付けてくれたハリシエダ様ですが、子供達3人よりも慌てているそうで……ちっとも学習しようとしない?ハリシエダ様は、騒がれるだけでも迷惑とばかりに、子供達と一緒に部屋に閉じ込められてしまったそうです。分娩室の外で彷徨かれる気配だけでも迷惑って…と笑ってしまいました。


 予定日が過ぎても降りて来なかったお腹の子達は、とてもノンビリ屋さんと思っていたのに、いざ出て来ると決めたらせっかちなようで、破水から一時間も掛からずに出産が終わりました。かなり安産で後産の処置も問題無く終わりました。


 今度も仲良く男女で産まれてきた子供達は、綺麗にされて初乳を飲んでます。クリスティ達より大きく産まれてきたせいか飲み方が上手くて、軽くげっぷをした後、回復と結界の付与魔石を付けたベビーベッドに寝かされました。今はハリシエダ様と子供達に見守られながら、二人とも健やかに寝ています。流石に私も疲れたので、隣りの部屋で少し寝て回復する事になりました。



 疲れたミスティーヌをぐっすりと眠らせてあげる為に、ハリシエダ達は双子の寝ているベビーベッドを囲んで静かに覗き込んでいます。ミスティーヌのベッドにはフェンリル母が結界を張ったので、少しの物音なら聞こえない筈です。


 『クリスティとジャレットが産まれた時よりも、この子達の方が大きな気がしますね。でも、可愛さは同じですねぇ〜。二人と初めて会った時の事を思い出して懐かしい気もして来ます。

 お父様、もう二人の名前は決まっているのですか?』


 カヴィヨンがベッドを覗き込みながら、隣りのハリシエダ父様に囁くように聞きました。クリスティとジャレットもニコニコしながら黙ってベッドを覗き込んでいます。ミスティーヌ母様を起こさないように、フェンリル母様に注意されているので、子供達は皆、大人しくしているのです。


 『いろんな名前を沢山考えているから、ミスティーヌが目覚めたら相談して決めるよ。その時は皆んなも一緒に考えてくれると嬉しいな。』


 ハリシエダは子供達を見回すと、にっこり笑って小声で囁きました。クリスティとジャレットは兎も角、跡取りの自覚がめざましいカヴィヨンは口を挟みそうだなぁ。と思ったので。


 『ボクたちも、この子たちのお名まえ、かんがえりゅの?』


 『ニーニだけじゃなくて?ワタチなやんじゃうね!』


 一生懸命、声を小さくしたつもりだったようですが、興奮した双子の声は少し大きかったようで、『ふぇ〜』と言う泣き声がベッドからしました。慌てて人差し指を唇に当てて、『シーッ』としましたが、時既に遅く、4人は敢えなくフェンリル母様に部屋から出されてしまいました。



 出産後、一週間程経ってから、気を利かせてくれたモリーノによって、順々に祖父母達が訪れて双子を祝福してくれました。双子は家族会議を経て、カトリーヌとセドリックと名付けられ、お披露目されました。今はとても良く寝ているので、寝顔ばかり披露してしまい、


 『授乳以外で起きている事はあるのか?食欲が満たされれば不満を訴えない、謙虚な子なのか?』


 『赤ちゃんの頃のミスティーヌはこんなに食意地が張っていたのかなぁ?私達が会った時は子供に成長した後だったからなぁ。美味しい物はよく作ってくれていたけど。』


 『まぁ、元気なら問題はありませんが、次は是非とも起きている時に呼んで下さいね。』


 サリシン義父様、アラン父様、マリアナ母様が顔を見合わせて、残念そうに笑っています。ミスティーヌも苦笑しながら、


 『手の掛からない子なのかもしれませんが、まだ、7日目です。個性もこれから出るでしょうし、偶然、今日は眠っている時間に当たっただけですよ。いきなり食いしん坊と決めつけないで下さいね。』


 とベッドの上からお願いしました。


 『処で、ベビーベッドに回復と結界が付いているのね。これって、妊娠時に使っていた物なのよね。もしかしたら、この付与魔石のお陰でぐっすりと寝ているのかしら?』


流石、マリアナ母様。目の付け所が違います。何となくですが、結界で護られているなら、心穏やかに寝ていられるのでは?と思いついて付けてみました。我が家は私が付与しまくるので魔石は余っている為、仕舞って置くぐらいならと軽く考えて付けただけなのです。ハリシエダ様が、


 『可能性は高いですね。外的な不快感が少ないせいか、お腹が空いたり、不快を感じると大声で教えてくれるので、分かり易くて助かってます。ねぇ、フェンリル母様。』


 と話し掛けると、


 『上のお子様達の時と比較すると、私達が慣れたせいもありますが、確かに楽に感じますね。』


 と、何時目覚めても良いようにといろんな準備を済ませたフェンリル母様が答えました。見慣れたマリアナ母様の笑顔に、私は取り敢えずアラン父様に、


 『サルカンドの冒険者達は優秀ですから、魔石の依頼は受けてくれると思いますが、付与をする錬金術師の当ては有るのですか?

 と言うか、私、錬金術ギルドと和解した方が良いですか?ダニエルには思う処がない訳では無いのですが、正直、錬金術ギルドとは直接対峙していなかったので、今ではもうどうでも良いかな?としか思っていないのですよね。』


 と問いかけると、


 『ギルマスが交代した事もあり、昔のままの態度ではいられない。と分かったらしいからな。今ではサリーナの工房の方が上に見られている事もあって、誠実な対応が取れる様に変わって来ている。

 魔石の付与ならば、サリーナの工房が忙し過ぎる様なら、直接ギルドに依頼を出せると思うぞ。』


 と教えてくれました。何時の間にか和解が成立していたようですね。私が伯爵位を授爵した辺りでアラン父様が動き始めていたそうで、今のギルマスは、アーノルド伯爵を通したアラン父様の知り合いなのだそうです。私に直接繋がる気は無さそうとみたアラン父様が代理として交渉を締結していたと聞き、


 『お手数お掛けしました。ありがとうございました。』


 と一応、お礼を伝えました。そしてマリアナ母様には、


 『もし、何か考えついたなら、アラン父様とよく話し合ってから行って下さいね。』


 と、アラン父様の顔を見ながら伝えました。だってマリアナ母様の暴走を止められるのはアラン父様だけですからね。私は育児や仕事が忙しいので面倒見切れません。



 カトリーヌとセドリックが産まれて2ヶ月に入る頃。キュラスとリストランテではビーズ工房が稼働し始めました。見習いで入っていた錬金術師の卵達が学校を卒業して、正式に各工房に勤め出しました。


 取り敢えず半数以上が、シードビーズを作れる様になっていたので、販売数量を少なめに設定した上で、販売数を抑えながらの開店になりました。生産が安定していないのと、出始めで希少価値が付くので、多少高めの値段設定にも関わらず、リーバスさんが試験的に先行販売をしていたのも手伝って、注文は多く集まって来ていて、既に数カ月予約待ちの嬉しい船出になりました。


 シードビーズより作り易いとは言え、一点物という事で少し高い値段設定をした蜻蛉玉も人気です。服に縫い付けるには重いので婦人服などには向いてませんが、穴を大きめにする事でループタイの需要が出て、此方は紳士服のお店から発注が相次いでます。


 キュラスの工房では、近くの川の砂から採れる石英などがまだ回復していないので、原材料はサルカンドのアラン父様に依頼を出してます。キュラスのギルドにはサイトバル兄様が常時依頼としていたのですが、当面、停止してもらったので、足りない分の依頼です。


 リストランテの工房はクリミアナ義姉様が采配を振るっているので、私は口を挟んでいませんが、たぶん、材料はリストランテの冒険者ギルドに出しているのだと思います。クリミアナ義姉様に地産地消の話をしたら、とても食いついていらして、


 『地元。自分の領地を栄えさせるのは、領主として基本中の基本ですわ。ミスティーヌは領主夫人としても素晴らしい働きが出来ているわね。』


 とベタ褒めされてしまい、少し恥ずかしかったです。


 リーバスさん経由で入って来るキエランさん情報では、やはり、王都の商業ギルドから、


 『何で王都にも声を掛けないのか!直ぐにでも王都にも工房を!』


 と苦情が来たそうです。ため息。逆に、何でワザワザ王都に声を掛けなきゃならないのか、私はその根拠が知りたいですよ。当然ですがリーバスさんは、


 『技術を教える対価を用意した上で、技術者の派遣を希望されるのでしたら、指導者の派遣に於いて協力する考えは有りますが、私達が自から支店を出す予定は今のところ有りません。』


 と言い切ったそうです。前回のチョコの時は王太子妃様の頼みも合って我慢して協力したのですが、嫌な思いをさせられたのを忘れていないそうです。それを踏まえてのリーバスさんの発言でしたが、


 『学生に毛が生えた位の職人に教わるのに、技術料なんて発生しないだろう。流行の発生は王都から始まるから価値が有るんだ。俺達が作ってやるからさっさと教えろ!』


 などと言い出したガラス職人がいたせいで、無事に話は流れたそうです。何様なんでしょうね?指導者は私ですけど。伯爵より地位の高い職人が王都にはいるのですね。と笑ってしまいましたよ。


 工房で出来上がったビーズを眺めていると、工房長に連れられてマリレーヌが来ました。彼女はエルーシャ義姉様の工房で働いている職人さんの娘さんで、錬金術師のリーダーを任せているお嬢さんです。


 『領主夫人様。私はシードビーズの担当をしていますが、出来上がりの評価を頂けますか?』


 手を胸の前で組んで、ジッと私を見つめます。私がビーズを見に来たのに気付いて来た様です。とても努力家で主席で卒業した才女さんですが、真面目過ぎと言う一面も持ってます。自分のビーズの評価の為に私が来たと心配しているようで、ドキドキさせて申し訳なかったのですが、そういう意味で見ていた訳では無かったのですよ。


 『大きさも揃っていますし、濁りも無く、キラキラとして、綺麗に出来上がっていますね。服飾の職人さんも喜ぶでしょう。このビーズを使って刺繍された服なら、貴族の方の目にも止まりそうですね。』


 緊張させたお詫びではありませんが、素直にチョットだけ誇張して誉めました。今は単色で作ってもらってますが、慣れて来たら、蜻蛉玉の様に多色遣いのシードビーズが有っても良いかもしれません。まぁ、最初は自分で作って試してからになりますが、蜻蛉玉の様に世界で一つのビーズになったら面白いかもしれませんね。


 鈴を作ってもらっていたキャリーに依頼した細いワイヤーが、安定生産出来るようになれば、いろんなビーズを使ってアクセサリーの革命を起こせそうでワクワクしています。


 イルミナが卒業する来年を目安に、キャリーとベンには頑張ってもらって、いろんな大きさの鈴と、細いワイヤーの安定生産をしてもらう計画は、私の中では決定事項なのですよ。


 工房長からも褒められて、安心した顔付きに戻って帰って行ったマリレーヌを見送って、元々はガラス職人の工房長とはステンドグラスの話で盛り上がってしまいました。


 『私はこれまで、透明なガラスを作る事しか考えず、色が付けるなんて思いも付かなかった。』


 と何度も繰り返す工房長ですが、ガラスを作る過程で色付け出来る顔料さえ分かれば、誰でも思い付く事でしょうから、頭の硬さが問題でしたね。とも言えず対応に困ってしまいました。


 因みに、最初のステンドグラスは絵心の有る職人さんに女神像を描いてもらって、キュラスの教会に寄贈しました。……王都の教会にバレて、2作目に二回りも大きいステンドグラスを作って贈る事になったのは、想定の範囲内でしたとも。


 真っ先に教会を飾った事で、ステンドグラスは宗教色が濃くなったかな?と思いましたが、練習で作っていたランプの傘などの小物を商品化した処、やはり、貴族からの注文が多く入って来ているそうです。でも、窓程の大きさになると現在では高額過ぎて、王家や高位貴族でないと難しいそうです。

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