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40 半年経ちました

 マジックバッグの件は、サミュエル兄様からギルマス経由で王都の商業ギルドにも伝えて、調査してもらった結果、想像通りに不正が見つかったそうです。きっかけは王都の冒険者ギルドから横槍が入って、マジックバッグの販売権を冒険者ギルドにも回させられたそうです。その為に商業ギルドが予定した数に足りなくなって、1年では済まなくなったのだそうです。やはりね。何故か1年だけの約束だった筈が、有耶無耶の内に更新を繰り返されてもう3年になるのです。


 最初から不正をしていたのは、例の子爵様とグローリーの冒険者ギルドのギルマスだけだったそうです。それがマジックバッグの配布⁉︎が翌年も続いた所為で、最初の1年目はキチンとしていた貴族やギルドも、他の処が不正をして懐を潤している話を聞き付けてから、複数の不正者が出てしまったそうです。お陰でこの不正が理由となって、次回を最後に支援のマジックバッグの製作は本当に辞めになりました。


 既にかなりの数を作って来たので、私としてはもう充分だと思うのですよ。それに私以外の付与製作者もいますし、基本的にマジックバッグは高価な物な筈です。私の作る特例品が悪目立ちして、他の製作者の迷惑にならないか、ずっと悩んでいたのでホッとしました。


 因みに、サルカンドのみで販売している数量限定の高ランクパーティー向けの支援品は、時間経過遅延ですがその分容量少なめで作ってます。勿論、有り得ない安さの筈です。多分、通常の半額以下(笑) です?気の向いた時しか作らないし、数を出さない。出会えたらラッキー‼︎ですね。



 キュラスに戻って3ヶ月が経ちました。私は冒険者活動を4、貴族教育を6ぐらいで過ごしてますが、淑女教育を受けて貴族の女性の不自由さに感心しています。必要に迫られて覚えてますが、私にはムリ!と音を上げたいです。


 足音を立てないのは気配遮断すれば誤魔化せますが、食器の上げ下げでも音を出してはいけない。となっては気の休まる事がなく、食事が美味しくありません。挨拶のカーテシー?なんて筋肉使いまくりでは無いですか!そうですか。インナーマッスル鍛え放題って事なんですね。貴族子女の細さが筋肉で出来ているなんて思いも寄りませんでしたよ。冒険者の鍛え方に通じる物があるかも?


 という事で、息抜きに教会に来ましたが、隣りには何故かハリシエダ様がいます。ハリシエダ様が付いてくると女神様の機嫌が低下するのですよ〜。私が勘違いして女神様に嫉妬して詰めよった事を未だに根に持っているそうです。(笑)


 『今回のネックレスとイヤリングは、かなり派手で豪華にしてみました。今までの上品さを全面に出したアクセサリーとは全く違うと思いますが如何でしょうか?』


 と渡すと、暫く手に取って眺めていらっしゃいましたが、やっと身に付けて微笑みました。


 『やっぱりミスティーヌの作るアクセサリーは素敵ですね。散りばめられた宝石は豪華ですが、繊細なミスリル細工が上品にまとめて仕上がってます。軽減の付与が掛かっているから、大振りなデザインですが重さを感じませんし、着けているだけで気分も向上しますね。やはり上品ですよ。このまま宝箱に入れたら、また、国宝だと騒がれますよ。入れませんけど。』


 とベタ褒めです!喜んで頂けて良かった。二人で世界を作っているせいか、後ろで拗ねている方はおりますが、此処に招かれているのですから、その態度は褒められませんよ?女神様が出して下さったテーブルセットにお茶とお菓子を用意しながら、


 『そう言えば、何故ハリシエダ様は付いていらしたのですか?』


 と話を振ってみました。せっかく気分転換に邸をこっそりと抜け出したのに、見張っていたかのように付いて来たのです。以前のように、楽しい雰囲気で女神様とお茶会をしよう。としている処に、1人憮然としていらしたら雰囲気が悪くなりますからね。一応、気を使って?声を掛けたのです。


 『女神様にミスティーヌを取られないように見張りに来ました。と正直に言いたいのですが、私はミスティーヌの笑顔を見ていたいだけです。その為には余計な口を挟みませんから、背景の1つとしてでもしておいて下さい。』


 と拗ねてます。思わず女神様と目を合わせて笑ってしまいました。


 『あら、正直ね。そう言うならせめて笑顔で背景をしていなさいね。そしたらミスティーヌを返してあげても良いわ。…って言い方をするとミスティーヌに叱られそうね。』


 と大笑いしてます。私もハリシエダ様に対して、怒りの為のパワーが尽きて来て、流され始めているのですが、なんとなく笑顔を見せたら負け。のような処があって素直になれずにいます。でも、顔を見せる度に『愛してます!』とか『綺麗だ。』とか言われ続けていると、恥ずかしくないですか?私も女性ですからそれに絆されてしまうのは仕方ないと思うのですよ。


 「では笑顔を保つ為に、ミスティーヌだけ見ている事にします。」


 って。もう、どうしましょう?


 「ハリシエダ、素直過ぎるのも考えものですよ。ミスティーヌが真っ赤ではないですか。」


 女神様がハリシエダ様をからかいますが、私にも飛び火が来ました。元々、一緒にいた期間はそんなに長く無いのです。学生時代の1年間は助手の先生としか見てなかったし、カシュー様がウザかったので、なるべく近寄らないように逃げてました。卒業後に押し切られてお付き合いを始めた後も、一月に数日会うかどうかでしたから、自分から好意を感じる距離が無かった?ハリシエダ様に押し切られて結婚にのぞんでしまった感は否めません。だからこそ、裏切られた!と思った瞬間で切り捨ててしまったのですし、離縁を望んだのです。


 「そうは言いましても、ミスティーヌに尽くす為には誠意を見せるしか無い。って皆さんから知恵を頂きましたし、私にとって誠意とは正直に愛情を伝える事ではないかな?と思ってます。私の爵位が借り物だと話しても意味が無いと思いますから。」


 いや、なんかズレている気がするのですが。でも、爵位が本来は私の物と貴族全体に明かすのは、私の為には本末転倒ですし、なんなら、伯爵位まで内々でもらってますけど。これは私がハリシエダ様と離縁出来ても私に着いてくる。と王様に明言されてますので…


 女神様とハリシエダ様の会話に、どんどんと外堀を埋められている気がします。慌てて、アクセサリーに使っているミスリルを獲った時の事や、一人でのダンジョン攻略は意外と寂しかった事などを話して気を逸らそうとしましたが、一人で寂しいに女神様が更に喰い付いて来て私をからかうので、諦めて教会を後にしました。



 王太子妃様が無事に嫡男のカーライト様を出産されて、王都を挙げてお誕生祝いをしてました頃、私もハリシエダ様と名実共に夫婦になりました。貴族からは逃れられないと決まったのだし、ハリシエダ様の一途な誠実さを見せつけられて、堕ちてしまいました。


 王太子様からは早くも男の子を望まれています。私の能力を持つ側近が欲しいそうです。…私に似た女の子が産まれても嬉しくない。と聴こえて、王太子妃様と二人で溜息を吐いてしまいました。私だってやらかした自覚はありますけど、ねぇ…


 と思ったのですが王太子様の考えは違ったようです。たとえ女児が産まれてもハリシエダ様が手放す訳が無い。と言うのです。…想像出来るので、返答出来ませんでした。否。ハリシエダ様の笑顔が総て物語っていました。私も素直に跡取り息子を希望しますとも。平和が一番です。


 今日、王宮に招かれたのは、内々で招待されたカーライト様の3ヶ月目のお披露目だけで無く、私の伯爵位授爵式の為です。時間が来たので謁見の場に移動しました。やっと終了したマジックバッグの件や、ダンジョン関係の功績や、王家への度重なる献上品などの、今迄の功績を積み重ねた実績を鑑みた結果、領地を任せるに足る働きが有ったと、王様自らが貴族方に語って下さいました。


 更に、マジックバッグの件で不正を重く見た結果、最初から不正をしていた子爵家を有する侯爵家の土地を一部取り上げ、王領として運営していた土地を、功績のあったミスティーヌに新たな家名を立てて下賜すると宣言されました。


 今、ハリシエダ様が治めているキュラスに繋がる場所ですが、全体としてかなり細長い領地になります。ですがキュラスはリストランテ公爵領ですから、伯爵領だけを独立して下賜されるとしたら、夫婦別れて領地経営する事になるのでしょうか?それはそれで面倒ですし、頂いた領地だけでは伯爵の名には見窄らしいので、正直言って遠慮したいのですよね。


 私が困った顔で王様を見ると、隣りで王太子様がニヤッと笑ってます。何か考えがあって、根回しがされていそうですね。ハリシエダ様と一緒に来たマジェンダ義兄様がスッと一歩前に出ると、


 『発言をさせて頂きたくお願いします。我が公爵家には伯爵位も認められています。ですので、今回、ミスティーヌに下賜頂きました伯爵家の土地も、伯爵家単体として独立させずに、我がリストランテ公爵領に含まれると取ってよろしいでしょうか?陛下におかれましては、まさか、ハリシエダ夫婦を別居させての領地経営をお望みでは無いですよね?』


 と、笑顔で提案するマジェンダ義兄様。対する王様も笑顔で、


 『当然だとも。最初からリストランテ公爵領に含む予定で場所を検討したのだ。不正を行ってミスティーヌ達に被害を与えた子爵家の領地をそのまま飛び地として渡しても困るだろうと思ってな、領地替えをした上で制定したのだ。独立しなくともミスティーヌに異論はあるまい?』


 と私に話を振ります。あれから頑張った貴族教育は子爵夫人程度の貴族の振る舞いのみです。それすらも付け焼き刃程度で心許ないのに、更に領地経営までなんて…国外に逃げますよ!と思いながら、


 『はい。私には想像もつかない仕事なので、領地経営は精通している夫のハリシエダ様にお願いしたいので、独立は遠慮させて頂きたく、私からも重ねてお願い致します。』


 と頭を下げて返事をすると、集まった貴族達の中から、土地を取り上げられた侯爵と思われる男性がしゃしゃり出て、


 『平民に盗られたと思えば悔しくて我慢ならないが、リストランテ公爵と縁が結ばれたと考えれば嬉しくも思えますな。いっその事、その平民を離縁して、私の孫娘のカシューを娶りませんか?そうすれば更に縁が深まりますぞ!』


 と声高に言い出しました。アレ?王様の前なのに勝手にマジェンダ義兄様やハリシエダ様に話し掛けても良いのでしょうか?私は伯爵位を授かったので既に平民ではありません。それにハリシエダ様が私と離縁したら伯爵領が独立してしまって、リストランテ公爵家とあの領地は縁が切れます。それを理解出来ないのでしょうか?


 『グランダイ侯爵。少し見ない間にだいぶ年寄りになったようだな。私はミスティーヌ個人に伯爵位と領地を下賜したのだ。リストランテ家にではない。それに、あの領地は既に王領であって、侯爵家とは関係の無い土地だ!

 この場がお前の勝手な発言の通る場所でない事も分からなくなったとは、さっさと息子に家督を譲った方が良いと思うぞ。私の怒りによって更に領地が狭くなる前にな!』


 冷たい視線で王様が告げます。そもそもカシュー様の親がやらかしたから私に土地を譲る羽目になったと言うのに、そのカシュー様を充てがうなんて、分かっていないのでしょうか?


 そう言えば最近アラン父様から聞いて知ったのですが、サルカンド伯爵家の双子のオリハルト様とガスパール様が王都から戻って来て、サルカンドの領地経営を始めたと知って、懲りもせず?付きまとっているそうですね。ハリシエダ様が子爵当主なので、それより上の伯爵家を継ぐ方と結婚して見返したいらしいのですが、二人ともカシュー様が苦手で逃げ回っているそうですよ。


 子爵家の領地が取り上げられて、実家の侯爵家に出戻ったせいで、勘違いしたカシュー様が暴走しているそうで、伯爵が困っているとか。『リストランテ公爵家に紹介してもらえないだろうか?』とアラン父様を頼って相談に来ているそうです。


 王様から雷を落とされたグランダイ侯爵は真っ青な顔色になり、後ろに下がりました。ハリシエダ様は睨んでますし、マジェンダ義兄様は無視していますね。と、ハリシエダ様が、『この場で発言させて頂けますか?』とお伺いを立てました。王様に許可を得ると、


 『カシュー子爵令嬢には、学校で助手として教えていた時に、授業の邪魔ばかりされた上に付き纏われて、大変迷惑を被りました。子爵家に苦情を入れましたが、まともな対応をされず、なんて非常識な家だ!と憤慨した記憶は消えてません。非常識なのはあの親子だけかと思っていましたが、更に遡っても非常識な家系だと理解しました。私は常識の通じない方と縁を繋げる事は有りません。』


 と宣言して、なんと拍手を浴びました。…貴族の方もお疲れな事があるのですね。って一番拍手されているのはサルカンド伯爵でした。この方も非常識に振り回されている、現在進行形のトップでしたね。ただ、幸いな事に家同士の付き合いはあの時で切れているそうです。当時アラン父様から聞きました。でも、あちらは理解出来ていなかった様ですね。


 変な騒ぎがあったものの、式典は終了しまして、私達は新たにヴェルム伯爵家という家名を頂き、公爵家の臣下の地位につきました。ヴェルム領は細長く、キュラスは端になってしまいます。中心は新たにもらった旧クナード男爵領になりますが、王領に変わったばかりで、全統治者からの引き継ぎさえ終わっていない、混乱した状態です。旧タレイア男爵領と旧クナード男爵領に関しては、数年間は王領として引き継ぐ文官をそのままトップに頂いて行政を行う方針です。


 王都の商業ギルドからの報告でも、此処もマジックバッグの不正に関わっていたので、調査が入ったそうです。侯爵領として3年間で合計360個のマジックバッグの販売記録が各ギルドにある筈です。元々、金貨5枚で売っても、金貨2枚と銀貨5枚の利益配分があるのです。それはギルドに任せていたのに、更に欲を出すなんて。誠実さに欠ける集団には仕事を頼みたくありません。


 そういう訳で、この2つの領の商業ギルドの職員も入れ替え中です。リストランテ公爵領に組み込まれるのですが、私はリストランテの商業ギルドのギルマスをよく知らないので、マジェンダ義兄様に仲介をお願いして職員を派遣してもらう事になりました。

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