41 苦労は続くよ何処までも⁉︎
…ヴェルム伯爵領の経営をするにあたり、『ハリシエダ様の補助』にサリシン義父様が来て下さいました。アネトール義母様の件で私に迷惑を掛けてしまった為、お手伝いして下さるそうです。公爵家の領地の方はマジェンダ義兄様がほぼしているそうで、『問題無いから。』と笑ってました。
マジックバッグに関する件で増えた領地の、ギルド問題はマジェンダ義兄様を介した王都の両ギルド長に適正な人材の補充を確約させて、今は様子見な状態です。調査した結果、あの侯爵領の『貴族と癒着する体質』を重く考えて、王都のギルド職員と交換した上で教育する事になったそうです。トップが腐っていては、下の教育を頑張っても意味がありませんからね。
教会との鳴り物入りで始めた上に、王家に囲われているSランク冒険者の好意を踏み躙ったツケを誰に払わせるか?という事でしょうね。ギルドとしてもグローリーのギルマスだけでは足りなかったようです。謁見の場での侯爵の失態もマジェンダ義兄様に聞いたらしく、侯爵も不正な利益を得た筈として考えているとか。
私としては、私の好意を台無しにされた事に対して、誰も私に謝罪しない方が気になるのですが。唯一あったサルカンドの教会からの謝罪は、『私達は同じ被害者だと思いますよ。』と返して受け取りませんでしたが、ホントに、なんだかな〜です。ま、今後は伯爵(夫人)ですからね。今までより依頼は断り易いです。というより、無視しても良いくらいに怒ってますけど。
王家の管理地がヴェルム伯爵領として下賜されてしまって、子爵時代と比べて領地が倍以上に増えたので、サリシン義父様とマジェンダ義兄様を含めた4人で相談した結果、伯爵位を私からハリシエダ様に移して領地経営をしてもらう事にしました。私が伯爵位を持つ事でハリシエダ様が王配ならぬ伯爵配でしょうか?になるらしいのですが、実質、仕事をするのは子爵の身分のハリシエダ様なのですよ。私は『領地経営に手を出さない。』と了承の上での陞爵でしたから、伯爵位自体を移行しても問題ない筈です。多分ね⁉︎
…とは言え、Sランクの冒険者の地位って、何処まで上がるのでしょうか?私が陞爵した理由って、ほぼダンジョン関係なのですよ。という事は、つまりは女神様のお陰なのでしょうね。
陞爵以降、マナーを含む貴族教育が必要になりました。伯爵は上位貴族になるので、下級貴族の子爵夫人の教育では知識が足りないそうです。…やっぱり迷惑だったと思っても許されますよね⁉︎ 公爵夫人でもあるアネトール義母様に教えを請うのが常識的には当然なのでしょうが、ハリシエダ様に私を追い出す目的で愛人をけしかけた人には教わりたく無いのです。『妻とは関わらなくて良い。』とサリシン義父様にまで言われましたので、私の感情に合わせても間違ってはいなさそうですが。
どなたに師事すれば良いのか?と悩んでいたら、とんでもない処からお声が掛かりました。
…私、本気で泣いても良いですか?王宮から、それも王妃様に呼び出されたのです。王太子妃様に呼び出されていた時は、依頼を受けた専属冒険者の立場でしたので、装いには拘らなくて良
かったのですが、今回は伯爵夫人としてのお声掛かりです!侍女の選んでくれたドレスを身に纏って、足音を立てないで静々と参りましたよ!あーっ裾踏みそう〜‼︎
招待されたお茶会の席には王太子妃様もいらして、我が家に侍女を手配してくれた侍女さん達も居ました。仕方ないので子爵夫人の挨拶をしましたよ。だって上級貴族の挨拶をまだ習ってないのですから。逆ギレに近いかも?と思いながら開き直りました。すると、王妃様の侍女長がスッと側に来て、正しい挨拶の仕方を教えてくれました。
ニコニコと機嫌良く王妃様が紹介して下さいましたが、侍女長は現在伯爵夫人ですが、生まれはルガリア公爵家の次女だったそうです。王妃様の学生時代からの親友なので、結婚してからも侍女を続けて、今では侍女長の役職に就いているそうです。嫁ぎ先はトレミリー伯爵家だそうです。
王宮の作法にも詳しい侍女長のルイジアナ様を教師として派遣?して頂ける事になりました。ルイジアナ様はアネトール義母様の事もご存知で、
『辺境伯様は強さの大切さも良くご理解なさっておいででしたが、女性であるアネトール様にはあまりお教えにならなかったようです。王都の華やかさに憧れが強く、当時、王都の学院で人気の高かったリストランテ公爵様に一目惚れされ、まとわりついていたお話は有名でしたよ。』
などと教えて下さいましたが、良い印象を持っているようには聞こえません。王妃様も苦笑いで、
『お隣りの辺境伯様に頼まれては、父も断り難かったでしょうし、他に年回りのあった令嬢の少ない時でしたからね。家格を見れば丁度良かったのですよ。私としてはルイジアナを推していたのですが、トレミリー様の方が早かったので、してやられましたわ。』
思わぬ爆弾が投下されました!サリシン義父様は王妃様のお兄様だそうです!初耳ですよ!
『あの、サリシン義父様が王妃様のお兄様だと初めて知ったのですが、それって貴族の常識の一つですか?アレ?でも家系図は教わった筈なのに?なんで私、教えてもらっていないのかな?』
と混乱しまくっていると、何故か笑いの細波が広まっています。
『辺境伯と王家の両方に縁付くと、力関係にひびが入る危険性があるかもしれない。という政治的な考えから、私はリストランテ公爵家の籍を離れて、ルイジアナの姉としてルガリア公爵家の籍に養女として入ってから、王家に嫁いだのです。
ルガリア公爵家には、ルイジアナしか娘が居なかったので、親友の私の養子先にはお互いに好都合だったのですわ。ですから、私とルイジアナは親友であり、義姉妹でもあるのですよ。
サリシン義兄様は自分の婚姻の方が後で決まったのに、私がリストランテ公爵家の籍から外れる事になったのをずっと気にかけておりましてね。妬きもち焼きのアネトールにはそれが面白くないのでしょう。私は妹なのにね。(笑)』
貴族の婚姻って大変なんですね。あれ?そういう事は実質、王太子様とハリシエダ様って、従兄弟?私、早まったかもしれない?そっかぁ、血が近いから、子供同士での王家との婚姻は考えなくても良い面があったのですね。女の子を産んでも大丈夫そう?
あー現実逃避をしていたのがバレた様で、注目を浴びてます。
『あ、もしかして、ハリシエダ様が従兄弟だから、王太子様方が婚姻のお祝いに来て下さったのですか?私はてっきり、食いしん坊聖獣様につられたのかと。』
『ええ、知っている方は気付いたのでしょうが、声高に明かす事でもないので。(笑) サリシン様は私の代わりだと気付いたみたいですが。アネトール様はどうでしょうかねぇ?ハリシエダの為に箔が付いた。と喜んだぐらいかしら?』
少し⁉︎怒っているような気がします。さわらぬ神に祟りなしかも。やっぱり、アネトール義母様は自己中な方のようですね。公爵夫人として行動するなら、もう少し周囲を観る視野が広まらないと不味い気がします。辺境伯様の教育に疑問を感じますね。…私が指摘すべきではありませんが。
私が対応に困っているのを察してか、ルイジアナ様が今まで教わって来た淑女教育の内容などを聞いてくれて、話題を変えてくれました。王太子妃様も、私の対応を思い出しながら、『言葉遣いは基本的に問題ないけど、行儀作法は最初から確認した方が良いでしょう。』などと助言を入れながら、皆様で私のカリキュラムを組んで下さいました。…些細な振る舞いで優雅さに差が出るのです。繊細さ。何処かに落として来たかな?拾いに行くべきよね?
アネトール義母様を見ていても分かりますが、政治的な活動はハリシエダ様に全面的に任せて、私が出しゃばらなくても問題無いそうです。お茶会を開いて友好的な関係を構築するのが、夫人としての一番の仕事らしいのですが、コレが私には問題で、ルイジアナ様に教えを乞う中心です。
基本的には気持ち良い空間を提供して、楽しく関係を深める場を作れば良いそうです。此処で腹の読み合いが物を言う訳ですが、上級貴族になる程感情を隠すのに長けてくる訳で〜依頼の場などで結構、顔に出ている方が多い記憶があるのですが⁉︎ 〜『中途半端に感情を制御して失敗する位なら、馬鹿正直に対応するのも有り。』と頭を撫でられてしまったのは何故でしょう?
お茶会の話題になるもてなし方ですが、私のインベントリにある素材と、私の作る料理で、殆どの問題は解決するでしょう。との事です。だから、『変に貴族ぶって出来もしない腹芸を学ぶ必要は無いのよ?そんなのが必要な人に近寄らなければ良いだけだし、寄せ付けなくても良いの。』と王妃様に微笑まれて終わりました。
ルイジアナ様によれば、王家に囲い込まれている私は注目の的で、Sランクの冒険者になった時から水面下の争いが大変だったそうです。筆頭公爵家のリストランテ家が初依頼を勝ち取り、その後は王太子妃様の専任のように位置付いたので、他の貴族は諦めたそうです。それが子爵夫人になった事により、貴族としての繋がりを求める貴族達が再浮上して騒いでいたとか。でも、宴の席から消えて表舞台に戻らないでいたせいで、皆、ガッカリしたそうです。
あの時はマウントを取りたがる貴族ばかりで、頬の筋肉が引き攣りそうな位でしたが?何処に友好的態度が有ったのでしょうか?まぁ、もう済んだ話でしょうから聞き流しましょう。
王太子妃様の話から聖獣様の話になり、モリーノがランティス様と出て来ました。モリーノが私にお菓子をねだるので、王妃様にお伺いを立ててからフルーツパフェを出すと、何時の間にかパール様が絶世の美女の姿で現れて『私には?』と拗ねてます。洞窟で話していた時にモリーノが突然姿を消したので、何事が起きたかと慌てて探したそうです。
モリーノに、『突然呼んだ私も悪いけど、誰かと一緒にいる時は断わってから来てね?』とお願いしました。私が皆様にパール様を紹介している間に席が整えられて、フルーツパフェを囲んでお茶会が再開されました。
モリーノがいる事で、話題が『モリーノの涙』になりました。王太子妃様には私から数点、アクセサリーに加工して贈ってありますが、王妃様は王家のティアラでしか持っていないそうです。王妃様が自分専用には持っていないと聞いたモリーノが、王妃様の手のひらに特大の涙を落としたので、インベントリから材料を出して、その場でアクセサリーを作りだしました。
王妃様の好みを伺いながら手持ちの宝石をインベントリから出して、ミスリルのワイヤーでネックレスとイヤリング、指輪のセットを作りました。ネックレスの中央にはモリーノが出したばかりの特大の涙が輝いています。王妃様の胸元を飾る特大の涙に、モリーノが満足げに頷いています。
モリーノの涙が最近市場に出ない話をルイジアナ様が始めたので、私が湖の周辺に落ちていた物は殆ど拾い集めてあって、売る先を選んで出している事を告げました。
『数年前の出来事になりますが、サルカンドの宝石店主の息子の態度の悪さに始まり、依頼の内容が気に入らない事が多いので厳選しています。下心無く、相手を想っての依頼って少ないのです。』
とモリーノを撫でながら話すと、皆様、頷いていました。
週二で王都のマジェンダ義兄様邸に転移して、王宮内でルイジアナ様に付いて勉強してましたが、妊娠が判明したので、暫くお休みになりました。正直なところ、悪阻が酷くて驚いてます。でも病気じゃないから安心なんですが。
クリミアナ義姉様が最初に気付いて、王都のマジェンダ義兄様邸で落ち着くまで生活を〜なんて話が出て、慌てて迎えに来たハリシエダ様に、キュラスに連れ帰られました。
あ、結局。伯爵領都はキュラスのままになりました。幾ら細長い領地になったとは言え、新しくもらった土地が領地の真ん中だから。という理由で移転するのもしっくり来なかったので。
「いくら領地の真ん中と主張されても、今まで他領だったクナードに移転するのは本末転倒ではないでしょうか?馬車で2、3日の移動なら、あちらにしてもらうのが妥当だと思う。」
と、例の4人で集まった時にハリシエダ様が言い出して決めました。もっともタレイアからだと、領地の端と端なのでもう少し掛かりますが。私もキュラスの冒険者ギルドで活動すると決めて、ラキアさんを安心させたばかりですし、元。とは言え、あの侯爵家に関係する土地なので、偏見とまでは言いませんが、優先させたいとは思いません。
という訳で、キュラスの領主邸に戻って来ました。安定期になる迄は外出を控えるので、我が儘のきくサルカンドも良かったのですが、ハリシエダ様に却下されました(笑) 生まれてくる子供は自分の傍で育てたいそうです。…生まれてくる性別は関係無く手元から離しそうに有りませんね。(笑)
匂いに反応する事が多かったので、悪阻の酷い時は特に部屋で寝たり、物作りをしていました。幸い?インベントリに材料は溢れてますので、気の向くままに作っています。マジックバッグは、サルカンドだけで無く、キュラスのサイトバル兄様のギルドでも内緒で売る事にしました。裏商品なのでラキアさんのお眼鏡に適ったパーティーにしか売りませんけど。
アクセサリーは基本的に女神様や王家にしか贈っていないので、今回はグレードを落として、商業ギルドに売る物を作ってみました。サミュエル兄様を通せば、私を隠して売りに出せるので、廉価版は同じ物を沢山作りました。魔石や宝石の代わりにビーズを使い、ミスリルの代わりに銀や金のワイヤーを使ってネックレスなどのアクセサリーを作ったのですが、商業ギルドで査定してもらったところ、意外と高値が付きました?…金や銀も高い素材だそうです。銅でも良かった?
インベントリを整理していたらスパイダーシルクの糸が出て来たので、モチーフを編み溜める事にしました。キラキラ輝く小さく編んだモチーフはイヤリングの飾りにしても可愛いです。今回は足りなくなっても採取に行けないので、小物を作ります。
集中していたせいか、気持ち悪いのを忘れていたようです。久し振りにお腹が空いて来ました。
悪阻が治った頃から、息抜きに食事を作ってますが、私を知らない料理人がいて、領主夫人が料理するなんてと最初の頃は驚かれました。でも、仲良しの料理長が味方なので、気ままに料理を作りましたけどね。…材料の高級食材を誰が獲っているか知ってますからね。料理長が反対する訳が無いのです。




