表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セカンドライフ〜インベントリって素晴らしい  作者: 清香


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/92

25 幸せの絶頂に居た筈だったのに…ハリシエダ視点

 詭弁とも取られない言い回しで迫り、やっと婚約をもぎ取り、直ぐにでも結婚するつもりだったのに。私に実績や功績が無いから爵位が付かない。ミスティーヌには資格が在るが、それでは私が婿入りの扱いになってしまい、私の立場がなくなってしまう。王宮の文官として王太子様に覚えが良い私は、仕事で上を目指した。


 幸い、ミスティーヌは結婚を急いでいないし、冒険者としての依頼も多く、また、工房主としての仕事も有るので、私の準爵するのを快く待ってくれている。私の携わった王太子様の結婚式が縁で、王太子妃様の専属となった為に、月に一度は王都で仕事をするので、その度に私の邸で会っているから、清い関係だが心も通じ合っていると思う。本音を言えば身体毎私の物にしたいが、何故か罪悪感を感じてしまって、そういう雰囲気になれないのだ。


 私の文官としての仕事が認められたのと、ミスティーヌの度重なる指名依頼の達成や、ダンジョン踏破などの功績を鑑みて、私に子爵位が与えられた。父から領地が分与される事になり、文官を辞して、キュラスに領都を置く子爵に決まった。ミスティーヌを呼んで領地を案内すると、ミスティーヌの両親のお墓を見つけた。ミスティーヌはミストと言う名の商人の子だったのだ。母親は男爵家の出だったそうだ。アラン殿に引き取られて、養女という名の実子の様な育てられ方を受けていたのだ。まぁ、ただの平民とさして変わらないから、気にしない事にした。今迄関わりの無かった男爵など、貴族と言えど、探してまで式に呼ぶ事も必要ないだろう。


 兄から領主としての仕事を学びながら、結婚式の日時を決めて、招待状を各位に配った。ミスティーヌの事も考えて、王太子妃様にも送らせて頂いた。すると、王太子妃様に呼び出されたのだ。領地経営の勉強や何やで私は忙しいのだが、急いで王宮に向かった。案内された王太子妃様の部屋には既にミスティーヌが呼ばれていて…


 転移だ!ミスティーヌは転移のスキルを持っていたのだ!以前から、仕事の依頼の話しなどを聞く際に、日程に無理が有る様に思っていたが、転移が出来るなら話しは別だ。納得出来た。うん。やはりミスティーヌは素晴らしい。ミスティーヌを選んだ私の目に間違いは無かった!


 結婚式の会場設営や料理は全てミスティーヌに一任してたが正解だった。王太子様の結婚式を彷彿とさせる、ブーケタイプのテーブルフラワーや、滅多にお目にかかれない、レッドサーペントの肉料理やワイバーンのステーキを始めとした豪華な料理に加えて、他では味わえないデザートの各種に、王太子様ご夫妻も含めて、招待客の皆が感嘆したのだった。私の元に、皆が喜んで祝福しに来てくれて、交わされるお酒も進み、気分の大きくなった私は、宴の締めとしてとっておきの爆弾を落としたのだ。皆が只の平民と侮っている私のミスティーヌが、只のSランクでは無いと知らしめるのだ!


 『私のミスティーヌは転移のスキルを持っている。』


 ミスティーヌは自分から自慢したりしない控えめな性格だからこそ、こんな素晴らしい花嫁を得た私が代わりに自慢してあげるべきだろう。多少酔いも手伝っていた。だが、私にだけ敬意を示す客達の挨拶をずっと聞いていたから、私だけで無く、ミスティーヌにも賛辞を浴びる権利が有る。と思っている心の広い私は、この場で発表する事が一番だと信じたのだ。


 だが、発表した次の瞬間、横に居たミスティーヌが消えた。転移したのだ。うんうん。早速、能力を顕示したのだな。と私は思った。直ぐに戻って来て、皆から称賛を浴びようとしたのだな。やはりミスティーヌも自慢したかったのだ。私は正しい事をした。と自画自讃をしていた。


 だが、ミスティーヌは暫く待っても現れない。仕方なく私は一人のまま決意表明を終えた。アラン義父と父が何やらヒソヒソ話しをすると、式を閉めて、招待客を退場させてしまったのだ。私は出口に『独り』控えて、帰って来ない妻の幼い行動を謝る挨拶を繰り返したのだった。



 別室に呼ばれて行くと、王太子様ご夫妻と、私の両親と、アラン義父とマリアナ義母、マジェンダ兄が居た。『邸内を探させたが、まだミスティーヌが見つからず、挨拶させられずに済みません。』と謝るも、王太子妃様から、『何故、ミスティーヌのスキルを発表したのですか?ミスティーヌに相談した上での事でしたか?』と問われた。質問の意図が見えなかったので、『相談はしていませんでしたが、転移は滅多にない珍しいスキルです。それを自慢するのは変ですか?』と質問で返答した。すると、王太子妃様が泣き崩れてしまった。


 父が『スキルの事を、何故、ミスティーヌが秘密にしていたのか、考えた上での事だったのか?』と重々しく聞くので、『彼女は控えめだから言わなかっただけでしょう。私が言った途端に能力を誇示したではないですか。』と答えた。それを聞いたアラン義父は『ミスティーヌの何を見て、控えめなんて言葉が出て来るのか、理解に苦しむ。』と睨んで来ました。


 暫く、泣き崩れていた王太子妃様を抱きしめていた王太子様が、『ランティス様が呼び掛けに答えてくださらない。私達は王宮に帰らせてもらう。書類上、一応、婚姻は成立しているので、お前は子爵のままだ。せめて、良政に尽くせ‼︎』と言い捨てて、帰られてしまった。


 マリアナ義母が暗い声で『ミスティーヌはね、受けた侮辱は必ず返すわ。控えめなんて形容詞からかなり離れた存在よ。彼女は信頼した相手には尽くすから、ハリシエダ様には控えめに見えたのかもしれませんが、それはあまりにも表面しか見ていないというだけです。ハリシエダ様はミスティーヌを含めた私達家族からの信頼を捨てた事を理解して欲しいと思います。アラン、こんな事になるなんて、私、反対すれば良かった。』と、泣き出しました。


 アラン義父もマリアナ義母の方を抱きながら、『私達も帰らせてもらう。ハリシエダ様は、一度口から出た言葉は二度と戻らない。という言葉の意味をしっかりと考えた方が良いと思う。』とだけ言うと両親に一礼し、部屋を出て行ってしまった。


 残された両親と兄は、『バカはナイジェルだけかと思っていたが、隠れバカが此処に居た。』と私を睨んで来ます。『紙一枚の希望でしか無いが、一応、婚姻は成立している。今からでも出来る事をして、ミスティーヌが戻って来てくれる様に頑張るのだな。』と言います。酔いが覚めて来たのか、私は自分の正義が揺らいでいる事に気づき、『私の何がミスティーヌを始めとすると皆を怒らせているのですか?』と聞いてしまった。


 母が『何故本人に相談もせず、人の秘密を暴露するのか理解出来ませんでしたが、ハリシエダはそんなに常識が無かったのですね⁉︎』と驚いた言い方をしました。『ミスティーヌに相談が必要でしたか?私は、良い事をしたつもりでした。』と小声で返すと、兄が『転移のスキルを王太子妃様はご存知だったが、王太子様にさえ内緒にされていたそうだよ。ミスティーヌは強いけど、身近な誰かを人質に取られたら、自分を犠牲にしてでも助けそうだから、悪い輩にスキルを知られて悪用されない為にも、誰にも明かせない。と黙っていらしたそうだ。』と、泣きながら王太子様に語っていた話しを教えてくれました。


 それを受けた父が『お前の浅慮な言葉でミスティーヌは追い詰められたのかもしれない。このまま身を隠して、戻らない可能性が強いな。全てはお前の撒いた種だ。自分で刈り取りなさい。』と匙を投げたかの様な発言をした。


 この頃には完全に酔いも醒めて、皆の話しもだいぶ分かって来た。そうだ。最初に決意表明と思っていた内容は、『私がミスティーヌを幸せにするから、皆様も支えて下さい。』という筈だった。ただ、私の元に祝い事を伝えに来た方々が、『平民の癖に貴族の元に嫁げるなんて幸運を、自分の実力と勘違いしない様に。』等とミスティーヌを見下げる発言をして嘲笑っても、ミスティーヌが笑顔を貼り付けたまま言い返さないから、『私のミスティーヌはこんなに凄い!』って言い返してやりたかっただけだった。


 家族にそう告げると、『今更そんな言い訳しても遅い。』と、更に叱られた。だが、私は本当に、愛するミスティーヌを見下げた事を彼らに訂正して欲しかっただけで、ましてや、ミスティーヌの信頼を裏切るつもりなんて考えて無かったのだ!


 翌々日になって、執事と侍女長の二人だけが帰宅したが、ミスティーヌに付いては一言も話してくれなかった。冒険者ギルドのサイトバル義兄と、工房を構えているエルーシャ義姉の所には見張りを付けて、ミスティーヌが戻ったら、直ぐに駆け付けられる様に手配した。サルカンドの実家には毎日謝罪と求愛の手紙を送っている。返事は来ないが、返却されないだけましだと思う。手紙だけでは無く、領都に視察に出た際に見つけた贈り物なども一緒に贈る事にした。…ホントは直接渡したいが。


 一月近く経った頃、工房に付けていた者から連絡が来たので、仕事を放り出して駆け付けたが、工房にすら入れない。結界が張ってあるのだ!という事はミスティーヌが来ているに違いない!私は大声でミスティーヌを呼ぶが返答が無い。誰一人、出て来さえしない。声が枯れるかと思った頃に執事が来て、私は家に連れ戻され、仕事が終わるまで監禁された。


 執事には、ミスティーヌの信頼を取り戻したいなら、領主の仕事を熟し、領民に負担を掛けない様にするのは、最低限の内容で、ミスティーヌに伝えたい事が有るなら、誠意を示すなら、橋渡しをしない事も無い。と告げられた。モリーノ様と聖獣繋がりが有るので、出来なくは無いらしいが、私の一方的な願いに応えるつもりは無い。と言い切られた。このままミスティーヌが戻らないと、私は見限られて、キュラスを中心としたリストランテの地から聖獣様の加護も無くなるらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ