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俺が家長になってからすでに5年の月日が流れた。
すでに、15歳になった俺だが、
え?成長が速すぎるだって、いや、特にこれってことをやってきたわけじゃないんだ、新たな出会いがあったわけでもなく、なんかすごい魔物が襲ってきたわけでもなく、まあ、周りの開拓は進めてはいたし、いろいろな生活道具は作っていたけどさ、新たな発見なんかも特になかったから、全然話すことがなかっただけなのだがな。
まあ、そんなこんなで、今の俺の家の状況といえば、敷地は2.5キロ×2.5キロまで拡張しており、それぞれの家畜の敷地も200メートル×200メートルほどに拡張した。
毎日、卵、牛乳、それぞれの肉なんかは、倉庫の中に保管していっているので、大量に保存できている。
無限倉庫にしておいたときに、中の時間は経過しないようにしておいたので、悪くなることはないのだが、量がたまる一方なのだ。
家畜もある程度増えてくれば、屠畜して数を減らしている。
しかし、この肉も増える一方なのだ、村の人に少しは配っているが、増えるほうが多いので、少しでも村の人口が増えてくれることを祈るばかりだ。
それと、生活環境を変えるために始めたことは、蚕を飼い始めた。
この世界の服は、基本的に魔物の皮から作ったものか、木の樹皮を加工して作った物がほとんどで、他の種族が作ったとされる衣服が行商から手にはいることもある。
ただし、肌触りが最悪で、冬場なんかは寒くてたまらないのだ。
出来れば羊を飼育したいのだが、この辺りに野生の羊がおらず、このところ行商に頼んではいるのだが、まだ、音沙汰がない。
そのため、蚕を飼い始めたのだが、蚕が2、3センチほどであれば可愛いげがあるのだが、この世界の蚕は、5、60センチのサイズなのだ。(生まれた時は、15センチほど。)
しかもこの蚕、繭から出てくるときに、繭を破って出てくるのではなく、繭を紐解いて出てくるという生態を持っている。出てきたあとも、サイズが大きくなっているだけで、変体するわけではないのだ。生まれて死ぬまで蚕なのだ。
このサイズにもなってくると、なんとなく人の言葉も理解しているようで、エサを運んでくる人に、繭をほどいたものを受け取るような仕草をするようだ。
まあこれは、すでに1度繭を受け取ったからなのだが、しかも繭を作るのは、1年に何度も行うようで、どんどん貯まっていっている。
餌にかんしては、植物の葉であれば何でも食べるようで、屋内で飼育していれば、冬眠もしないようだ。
「フォル、この繭はどうするんだい?まさか、これも食べるというんじゃないだろうね?」
「違うよ母さん、これはね、紡いで編んで布にするんだよ。」
「布?布って行商がたまに持ってくる、あの高いやつかい?あんなの作ってなにするんだい?」
「布はね、縫い合わせて服にするんだよ。今の服より暖かいよ。」
「ふ~ん、それならばあたしにも教えておくれよ。フォルが色々と生活をよくしてくれているんだい、あたしも何かしないと申し訳ないよ。」
「でも。」
「でもじゃないよ、一緒に頑張るって決めたんだい、いいから教えなよ。」
「わかったよ、でもこれだけ繭が貯まっているんだ、母さんだけじゃ追い付かないし、何かあったときにこまるから、村のみんなにも声をかけようと思うんだ。どう思う母さん。」
「フォルの考えがわかったよ。そこは、母さんが引き受けようじゃないか。どっちにしても頼むつもりなんだろ。でも、材料はうちから出すんだろ。」
「そこわさ、村長に話をして買い取りしてもらうか、出来た布か、服を行商に買い取ってもらったお金から何割かもらうってことで進めようと思うんだ。」
「それはいいね、どっちにしても村に利益が出るからね。村の特産になるだろうからね。」
「それじゃあ、村長に話をするのは母さんにお願いしていいかな。俺は、道具作りをするからさ。作業場所は、家から隣の間に建てようと思ってるから、場所を聞かれたらそう答えておいて。」
「お金は、何割にする?」
「最低3割で。」
「あいよ、それじゃあ早速村長の所に行ってくるかね。」
母さんは、すぐに出発していった。
「ルシア、ルシア~。」
「何?あんちゃん。」
「家と隣の間に、新しく建物を建てたいと思うから木を伐って、土地をならしといてくれ。」
「ん?何の建物建てるの?」
「ああ、蚕の繭があるだろ、あれの縫製工場だ。」
「縫製工場って何?」
「蚕の繭から糸を紡いで、布を作る工場だ。場合によっては、それから服まで作る作業もしてもらおうとも思っている。」
「ふ~ん、それルシアの服も作ってくれるの?」
「ああ、勿論だとも。」
「ルシア頑張る。」
ルシアは、ものすごい笑顔で飛び出していった。
やっぱり親子だなと、実感させられる光景だった。
2人が出かけていったので、俺は、工場で使う機械を作ることにした。
まずは、糸を紡ぐための糸車だ。
基本的な動力は人力で、ほどけている糸を紡ぐ機械を作るのだが、神様からもらった知識を元に、人力で稼働できるように仕上げていった。
人力といっても、一昔前の足踏みミシンのように座ったまま踏板を踏み続けるというものだ。
この機械の作業は、この足踏みと、繭の設置、糸になったものの移動までだ。
次の機械は、機織だ。
これは、昔ながらの作りにした。
何かあったときに、修理が容易に出来るようにするためだ。
ただ、多くの人が作業出来るように数が必要だ。
糸車が10人ほど、機織が同じく10人ほどで作業出来るように機械を準備した。
流石に俺も家を建てるのにはなれてきたのだ。しかも、魔法を使って建てているし、元の世界の様にコンクリート建てではないので、建坪50坪ぐらいであれば1時間もあれば建ててしまえるようになっているのだ。
ん?、あそこに見えているのは母さんだ。
なんか様子がおかしい、出掛けるときには、あんなに張り切って出かけていたのに。
「母さん、何かあった?」
「すまないね、フォル。」
「ん?何が?」
「村長に言ってきたんだけどね、何馬鹿なこと言っているんだ、そんなもの作っても売れるわけないだろう。って、馬鹿にされたのさ。」
「いいよ、母さん。布なんか、こんな村に回ってきても誰も買えないからね、知らなくて当然だよ。」
「そうかい。これからどうするんだい?」
「そうだね、とりあえず母さん1人で始めてみるかい?一応考えはあるからさ。」
「そうだね、そうしようかね。」
俺は、母さんに機械の使い方を説明した。
使い方は、そんなに難しいものではないけれども、1人でやることは多いから、そんな量が出来ないと思う。
それでも、嬉しそうに作業を始めた母さんを見て、それでもいいと思って、家へと戻った。
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