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現代天狗奇譚  作者:
2/3


部屋に入ってため息をつく・・・あ。あれ。預かっていた物のことを思い出す。

「明日返せば良いわ。」


古びた小さい箱の中にハンカチに包まれてそれはあった。



 翌朝、なんとなくそわそわしている自分に気が付いた。

 もしかしたら変質者かもしれないのに・・・でも。あの頃は同じような子どもだった。変質者って事はないわね。おばあちゃんが神様の使いって言っていたけど・・・まさかね。



10時ぴったりにドアがノックされた。

「おはよう。」

「おはよう。」

今日も黒いTシャツに黒いズボンだ。黒が好きなのかな?


「かわいい。」

は?私に向かって修験がつぶやく。可愛いって?わたしが?

「うん。可愛いよ。」

口に出した?

「出してないよ。」

心を読んだの!!!

「読んでないよ。」

「読んでるじゃん!!」

「いや。強く向けられたから感じただけだよ。」

「人の心を勝手に読まないで!!」


しゅん・・って感じで小さくなった修験・・・


・・・・・ 我ながら理不尽なこと言ってる・・・反省してしまう。


「行きましょ。時間は有限よ。」

「僕と一緒に・・・」

は?




・・・



お店を冷やかして歩くのは楽しかった。

「はい。」

修験は私の目を向けた物を何でも買おうとしてしまう。

「いらないわ・・」

「これ。美味しそうなんだ。僕はいろんな物をたくさん食べたいから、少し食べてよ。」

そんなことを言われたら断れない。


「美味しいわ。」

「だよね。」


 さすがにかき氷の半分こはいただけないって断ったら、次に別の色のを買って私に寄越した。食べたけど多い。もてあましていたら、

「残ったのをちょうだい。」

残すのを見越してのこと?




正直なところ、凄く楽しかった。昔遊んだときも楽しくて・・・・でも3日?




 楽しい時間はあっという間だ。

「もう12時になるわ。帰らなくちゃ。バイトに遅れちゃう。」

「話が出来なかった・・・」

しょぼんとするので、

「またね。」

といったら、弾かれたように顔を上げて、

「また会ってくれるの?」

と言う。

「いいわよ。楽しかったし。でも、私苦学生だからね。ほとんど時間をとれないわよ。」


「僕が時間を見つけるよ。」

そう言って笑う顔は眩しかった。





まさか大学に来るとは・・・・


月曜日。いつものように学食に行ったら修験が待っていた。

「ほら。今日の特別メニュー買えたんだよ。」

2つの特別メニューを前に満面の笑顔。


「・・・あ・・ありがとう。」



・・

「ここの学生じゃないよね?」

「職員だよ。」

まさか?

「僕は情報処理にいるんだ。」

 気のせいか、お祭りで見たより、年がいっているような気がする・・・



「同じ年じゃなかったの?」

食べながら聞く。

「少し上かな。」

曖昧に笑ってごまかすように言うから、

「少し?」

と突っ込む。

「あ。いや。その話はまた土曜日に。」

声を潜めて言う。


「土曜日?」

「ああ。10時にまた行くよ。」



 修験は、さっとトレイを持って立ち上がって、颯爽と行ってしまう。後ろ姿を見ていたら、何人かの学生に声をかけられていた。本当に?ここの職員なの?



ぼうっとしている私の前に、倫子先輩が座った。

「どうしたの?ぼ~っと見て?」

「え・・・あの・・」

「見たわよ。岩田先生とご飯食べてたわね?」

「岩田先生って・・・知ってるんですか?」

「今年から情報処理に入って来た講師なのよ。なんて言うかな。独特の雰囲気があるわよね。」

「そ・・・そうなんですか・・・」

まさか?・・/本当に大学の講師?倫子先輩がまだ話を続けている。


「結構人気あるのよ。一緒にご飯食べたなんて、妬まれちゃうわよ。」

・・・まさか?



 午後の授業は眠い。教職に就くために必要な教養はとらなくちゃいけないから、眠くてもノートを取るのに必死だ。



眠い2校時の時間が過ぎ、もう5時過ぎだ。急いでバイトに行かなくちゃ。

自転車小屋に言った私は思わず座り込んだ。自転車がない。確かに厳重に鍵を掛けておいたのに。辺りを見回すと、壊された鍵が落ちていた。どうしよう?


 鍵を持って学生課に駆け込む。良かった。まだ職員が残っている。


「すみません。」


私の話を気の毒そうに聞いていた事務のお姉さんが、警察に届けるように教えてくれた。「防犯登録してありますよね?」

してない・・・お金がもったいなくてしてなかったんだ・・・


「出てこない可能性の方が大きいですよ。」



「どうしたの?」

「あ。岩田先生。」

顔を上げたら修験がいた。何でここに?



「・・・と言う訳なんです。」

「そうか・・ちょっと一緒に現場を見てくるよ。」



・・・・・



修験と一緒に自転車置き場にいる。


「・・・送ってくよ。バイトの時間だろ?」

「送るって?」

「車でさ。」


「でも・・・」

「遅刻しちゃうだろ?」

実のところもうぎりぎりだ。今日はビル清掃だけだから、時間に少し余裕があったはずなのに・・・




私は言葉に甘えて送って貰うことにした・・・


「ここが終わる頃迎えに来るよ。10時だよね?」

・・何で知ってるの?

「うん。そう。でも・・・」

夜の道を歩いて帰るのは危険だからって。修験に言い切られ、帰りも頼むことになった・・・

ブックマークを付けてくださった方。ありがとうございます。おかげさまで続きを投稿する気持ちになれました。

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