02-10a 退城後の話し
「リク様、お疲れ様でした。
また第一王妃陛下・・・いえ、母の事、助けて頂き本当に、ありがとう御座います」
僕とニアは、ニアの母親である第一王妃の治療を終え、城に行った時と同じ様に馬車で教会施設まで戻って来たところだ。
ニアの母親は治療と言うか、神力の影響で簡単に完治したし、その神力も内蔵とかへの治療魔術の様な形で、魔法として投入したから、体そのものは完治と言うよりも、健康体になってる状態みたいだ。そこら辺は僕は詳しく無いけど、お城の医療師--治術師や薬師等、元の世界で言う医療に関わる様な人達--が言ってたし、カイも世界の記憶からの情報がそう示してるって言ってたから、まず間違って無いと思う。
ただまあ、体力と言うか精神力かな、かなり疲労が蓄積してるみたいで、眠ったままではあったけども。それでも多少時間が経てば目を覚ますし、それこそ普通なら弱ってる筈の筋力も知力効果の魔法で健康体、こういう場合は健常体って言うんだっけ? になってるから、目が覚めれば直ぐにでも動ける様になるらしい。
ハイエルフに進化した分、基礎体力や生命維持、身体的な強化も上がってる訳だし、これまで以上に元気に動けるんだろうね。
こういう部分は、魔法と言うか魔術と言うか、そういう力って凄いなあと思うよ。とは言っても、実際にやってみて分かったけど、欠点と言うか問題点もあるんだよね。まあでも、よっぽどの事がないと問題でも無いんだけどさ。
とにかく、ニアの母親は助かったけど、ニア自身はあの時、父親に対するのから王様に対する態度へと変えたまま、僕の侍祭と言うか婚約者としての立場を貫いてたんだよ。
で、教会施設に帰って来て、部屋に入って他に誰も居ないこの状況になって、母親のお礼っていう態度を出したんだと思う。
そこまできっちりとしなくても、僕は良いと思うんだけどねえ。・・・まあでも、結構頑固なところあるから、言うだけ無駄だろうし、一々指摘しないけどね。
「気にする事は無いよ。あくまでもニアの関係者で、助ける方法があったからやっただけだし」
画に描いた勇者なんか、僕はやる気無いしね。出来る事で、しかも僕の気が向いた時しか、他人を助けようなんかしない。
僕みたいな、要は力あるから出来る事を振り撒けば、そこに傲りが生まれたりして、僕が嫌いなあの国の権力者共みたいに、自分が行う事こそ正しいなんて勘違いしかねない。そんな傲慢な態度は、見た目や数字上の成果を出せても、隠れてたり、見え難い不幸や不満、不備を、見える成果以上に生み出すからねえ。
その被害者に自分の身内が居た僕からすれば、自分が届く手の範囲を誤った人は、それがどんなに立派に見えても、それがどんなに評価を得ても、所詮は偽善を振り撒き、多数を切り捨てる害悪に成り下がる事を、身に染みて知ってるから。
それ以前に、現神になった所為だと思うけど、人に対しての感心がかなり薄れて来てるみたいで、特定の感心対象以外だったとしたら、同じ毒を盛られた状況でも、もしかしたら何も感じなかったかもなんだよねえ。
「ですが・・・いえ、今のは私の気持ちでしかありませんので、リク様はお気になさらずに」
それにしてもニアは、十四才って年齢のわりにはしっかりしてるよなあ。学問的に学べる場や機会がほとんど無いこの世界だからこそ、逆にリアルに関わる事は経験とかで学んで、より成長可能なのかもしれないね。
勿論それには、個々の性格とかもあるんだろうけどさ。
さて、それじゃあとっとと、この勇者装備から着替えて、此の教会施設から出るとしますかね。
流石にお城で着替えて出て行けば、姿バレするかも知れないから一旦帰って来たけど、何時までもお世話になってる訳にも行かないし、時間的にも丁度昼時だから、どこかで昼食にしてから宿を探す事にしよう。
◇ ◆ ◇
---Side・ウィサレフス
「今までのところ、報告は以上となります、陛下」
「うむ」
ホセファビエル奴が毒を用い、しかも入手ルートは隣国ストロエフからと言う。
ストロエフはここのところ、都市国家でしか無いと言うのに、吾が娘であるヴィクトーリアとの婚姻話を進めようとしていた。まさか受け入れなかったが為、この様な手段に出たか? ・・・いや、おそらくは逆であろうな。
そもそもが、ヴィクトーリアとの婚姻により、吾が国アランブルの正当王家との血筋を残し、フォセファビエルを利用して吾等王家の地を絶やす。その後にフォセファビエルを追い落とせば、正当王家の血筋はヴィクトーリアを残すのみ。推測ではあるが、そんなところであろう。ホセファビエルが最近、ストロエフとの婚姻話を支持し始めていたのも、おそらくは互いの利によるものか。
ホセファビエル自身はストロエフを利用して魔素薬を入手し、邪魔な吾等を亡き者として王位を得る。ホセファビエルにとっては、ヴィクトーリアも、王位を得る邪魔者でしか無かったのであろうな。。
エウジェーニアに関しては、御使い様へと下った。これで最悪の場合でも、エウジェーニアによって血筋は維持される。
ホセファビエルにも、御使い様の召還が成された事は伝わっていた筈だが、それによってエウジェーニアがどうなるのか、判断出来ぬ程に目が曇っていたか。
どちらにしろ、ストロエフが禁忌である澱んだ魔素を用いた魔素薬を、吾が国の王太子に流した事は、御使い様の言葉によって明確だ。無論現在騎士団が調べているホセファビエルの私室にて、証拠が見つかれば更に良いが、無くてももはや事実は覆らぬだろう。
後は御使い様のお披露目迄、ホセファビエルの事がストロエフに知られなければ、どうとでも出来るであろうが、口惜しいな。ファスティンを苦しめる原因となったストロエフ如きになど、今直ぐに攻め入り滅ぼしたいところではあるが、それではストロエフに住む民にさえ被害も出よう。
ホセファビエルにしても、今直ぐ極刑としたいが、それではストロエフに知られてしまう。今は体調不良を理由に、隠し通すしか無かろう。
だが・・・その我慢もお披露目迄だ。
吾がアランブルに、不当に害を成す者達には、目に物を見せてやらねばならん。
「皆も分かってるとは思うが、この話しは時が来るまで一切の口外を禁ず。
情報はこの場に居る内務卿、外務卿、軍務卿に留める事。軍務卿はホセファビエルの調査に関わる騎士を限定し、情報漏洩を徹底して避けろ」
「「「はっ! 畏まりまして」」」
御使い様があの様な御方であった事で、この様な柵から完全では無いにしろ外れるエウジェーニアは、むしろ幸せかも知れぬな。
---SideEnd




