01-04 魔術と魔法
○魔法
魔素や魔力等が働く法則。
○魔術
魔法に則って行使する為の技・
これで分かる訳が無い!
『この世界では、万物み魔素が溢れ、また万物が魔素によって構成されています。
物質は魔素の変質によって、個々の性質が与えられ、それらが集まる事で構成されるのが、人が認識するところの、生物も含む物質となります。
こうした魔素や、生物の体内で変質した魔力等の働く法則は、世界の理によって定められており、その法則を魔法と称します』
『説明の途中で悪いけど、ちょっと質問。
称しますって言うけど、それって誰が決めてるのかな?』
脱線だって事は分かってるんだけど、気になったんだよね。
だって先刻カイは、『神聖種じゃ無いと魔法は無理』って言ってた。
って事はさ、人にとっては魔法って、きちんと認知されてるものじゃ無いと思うんだよね。
『呼称は総じて、名付けた存在が明確では無い場合、一定数以上の存在がそう認識し、呼称したものが、世界の記憶で正式呼称として扱われます。
多くの場合は、絶対数の多い人の呼称が、そのまま取り上げられる形となります。
魔法の場合は、所謂魔術を扱うその法則性を、漠然とそう呼称している為に、その本質を含めて魔法と称する形に至りました』
ふむ。つまり人は、魔素とかの働きから魔法に至ったんじゃ無くて、結果から何となく法則性を感じて、それをそう認識してる訳かあ。
『では続きですが、魔術は魔法を、意識に依り発動させる為の術を指します。
人の多くの場合は、魔法に則った範囲の結果を導くものであれば、意識イメージに見合う消費魔力を用い、周辺魔素に影響を与え、結果を得る事になります。
その結果を得るまでの一連のものが、魔術と呼称されています』
イマイチ良く分からないから詳しく聞いたら、こんな感じらしい。
そもそも体内で変質した魔素が魔力と呼ばれるものになる。この魔力には種族、そして個々で固有の波長が含まれるんだとか。
これを魔力波と言う。
この魔力波に乗って、人の意識、イメージが魔素に広がり、求める結果を引き起こす。つまり例えば、定番中の定番ファイアーボールを発動させるには、火の玉が飛んで行き対象に当たる処までのイメージ--当然、火そのものへのイメージも必要--を乗せた魔力が起爆剤みたいになって、周辺の魔力がその結果を引き起こすから、ファイアーボールが発動する訳だ。
当然その起爆剤が足りない、つまりは体内魔力が発動に満たなければ、魔法は発動しないし、より強い効果や結果を求める場合は、より多くの魔力が必要になる。イメージが不明確、つまり単に火の玉が飛んで行くだけのイメージだと、火という、熱を持って対象を焼き、燃やすイメージが曖昧だから、当たってもあまり効果は得られない、と。
その為にこの世界での詠唱は、『小さき力を注く、火の球を以て、彼の的を破する事を願う。ファイアーボール!』という感じで、どれだけの魔力分を使って、何の効果が出る様にし、何を行うのか、自分のイメージを固める形になるんだとか。
当然イメージ展開が上手ければ、その分詠唱は短く出来るし、詠唱破棄で『ファイアーボール!』っていう求める結果だけを口にすれば魔法発動出来たり、何も言わない無詠唱でも発動可能にもなる。
まあ、実際に必要な要素は多いから、詠唱破棄や無詠唱が出来る人って、相当少ないらしいけどね。
で魔法っていうのは、イメージする目的から結果に至る。
ファイアーボールを例を挙げると、そもそもは離れた対象に、火によるダメージを与えたいからファイアーボールっていう魔術になる訳だけど、法則的に言えば過程は関係無くて、その対象に火のダメージを与えれば目的達成になる訳だ。
だから魔法が扱える存在が、同じ効果、結果を得ようとすると、イメージを描いた段階で--それが法則に則ってさえいれば--過程の火の玉が飛んで行って対象に当たるとか云々抜きで、対象に火によるダメージが与えられるという結果を生じさせる。
つまりは、カイみたいなのを作り--創り?--出そうとすると、本来ならどういうものなのか、事細かにイメージしないといけないから、魔術でそれを実現するのは不可能に近い。
それこそ意識や精神、情報とか、様々な要素を一纏めにイメージし切れるかって言われると、僕はムリって思うし。
絶対何か抜けたり、余分な事とか混ざりそう。
でも魔法の場合は、求める目的をイメージすれば、それが法則に則って結果を生じさせる訳だ。そりゃ人にはムリだよねえ。
逆に言えば、僕は魔術を行使出来ない。行使しようとすると魔法になる訳だ。
過程を吹っ飛ばして結果が生じるなんて、それこそ『僕は特別ですよ~!』って宣伝する様なものだよねえ。
『その場合、あえて過程を生じる様にイメージし、発動させる事で、見た目だけは取り繕えます』
つまり、僕が見た目ファイアーボールを望めば、火の玉が飛んで行く過程が生じるらしい。
ただ、魔法だから結果はもう決まってて、相手が防御したり、避けたりしても、結果は変わらないというオチが付く。
そこら辺は上手く誤魔化さないとマズいだろうなあ。
『イメージ次第って言うけど、どんな事が可能なんだ? って聞き方も分かり難いかあ。
ええっと、このステータスカードって、偽造とか出来ないかな? あと、魔宝って自前の魔力で作れたりするのかな?』
どこまでが魔法の範囲内か分からないけども、原則が『魔素や魔力等が働く法則』であるなら、物質の構成や変化も可能だと思うんだけど。
魔術にも錬金術っていう、物質の構成をいじったり、構成する物があるみたいだし。
基本的には魔法薬を製薬したり、魔法鍛冶で精錬したりっていう事に用いられているみたいだけど、実際には錬金術で必要な鉱石から直接、剣を作り出したりも出来るらしい。
とは言っても、他の魔法も同じだけど、体内魔力量の関係で、殆どの人はあまり凄い魔術は扱えないらしい。大体は扱えても初級魔術程度が限界で、中級魔術が二つ以上が扱えてやっと、魔術師と名乗れるらしい。
ちなみに上級魔術が一つでも使えれば、魔術の道を識る者として、魔導師という扱いになるんだとか。