01-03 サポートの話し
魔術の行使は、頭の中に望むものをイメージして、それを実現させようと、自分の体内に巡る魔力を放出すれば良いらしい。
必要な放出量は体が知っているから、意図的に結果を強めるつもりが無いなら、特に意識する必要も無いんだとか。
魔力の放出も、この世界では取り込んだ魔素を体が魔力に変換して溜め込むから、基本的には常時、余剰魔力が放出されている。つまりは魔力の放出も体が知ってるって事になる訳だ。
だから僕がする必要があるのは、明確なイメージを頭に思い浮かべるだけになる。このイメージが足りないと、魔術が発動しなかったり、発動しても結果が不十分だったり、必要な魔力量が増える事になるんだとか。
だからこの世界では、イメージを補強する為に、発動キーとして詠唱するのが通常で、何度も発動させてイメージをしっかり出来る様になると、詠唱省略や無詠唱で魔術を発動出来る様になる。まあそれが出来るのは、何十回何百回と、その魔術を行使した場合になるらしいけどね。
でも僕、と言うか元居た世界では、人にもよるけど空想したり、想像する事って結構当たり前にやってたから、むしろ詠唱みたいな事をする方が、そっちに気を取られてイメージが不十分になりそうだけどね。
さてと。僕が思うべきなのは、自分に対するサポート。正確なところは理解出来て無いけど、世界の記憶から得た知識をそのまま、頭の中で読み上げる感じ。
サポート用の人工知能みたいのが、頭の中に在るっていう感じにイメージするっていうのが一番正確かも。勿論、それがどういう事なのかとかは、僕も分かって無いけどね。
とにかくまあ、自分が理解し切れない事を翻訳してくれたり、フォローして貰えるものを望む。その為の情報元は当然、世界の記憶になる様にイメージを加えるから、僕自身が理解していなくても、情報元に困る事は無い筈。
イメージを強く固めて、それが実現する事へとイメージを広げると、体全体が若干熱を持つと言うか、体を何か力が巡る様な気がした。その後、直ぐにそんな感じは無くなったんだけど、これで魔術は発動したのかな?
『イエス、正常に行使は終了しました。
また正確には、魔術では無く魔法となります』
「え? 何今の声・・・声?」
『正確にはイメージの伝達となりますので、頭の中で思い浮かべて頂ければ、マスターの意図は伝わります』
何か、頭の中で声が響く感じ。耳で声が聞こえるのとはちょっと違うけど、上手く表現出来ないな。
声的には女性のアナウンスを機械処理したみたいな感じかな。要はそうした音声案内とかで、良く聞く系統って感じ。
「ええと、キミがサポート役? 機能?」
『イエス。どちらも正解ですマスター。
正確にはマスターの意識の片隅、本来考えずに機能している部分に、意識伝達要素を付加した疑似的なものとなります。
つまりは、マスターの身体機能の一つとなります』
「ええっと、何でマスター?」
『あくまでもマスターのイメージを元にしておりますので、話し方や呼び方は、マスターの意識に依っております。
正確には、マスターが持つ人工知能等のイメージからの結果かと』
僕の体の機能なのかあ。それって多重人格的な感じなのかな。でも確か、実際には多重人格だと、主人格と副人格がスムーズに意思伝達出来ないとか聞いたしなあ。
・・・まあ良いか。僕が望んで魔法を行使した通りの結果だし、それこそ詳細を知らなくても、それが使えるならそれで。
ニアとか、誰かが来る前に、最低限一人で確認しておきたい事があるから、時間無いしなあ。
それにしても、僕の意識に依るのか。って事は声もその結果なのかな。
まあ僕には、人工知能とか良く知らないから、元の世界での印象とかがかなり強く出てるんだろう。
『頭の中でイメージするって、これで良いのかな?』
『イエス、此方に伝えようとマスターが思えば、その意思は伝わります』
『そっか。それじゃあ幾つか聞きたいんだけど、先ずはキミの事は、何て呼べば良いのかな。あと、人工知能みたいなものなのか?』
『名称は設定されていませんので、マスターの決定に沿います。
人工知能と言うよりは、世界の記憶とマスターを中継する為の、支援精霊が近いと思われます』
『支援精霊?』
『精霊とは魔力によって存在が構成されている魔力生命体です。魔素を基にした様々な元素や、その構成体が持つ基礎性質を司る存在でもあります。
わたくしはマスターの魔法によって、疑似的に創生された情報精霊の様なものであり、その存在理由はマスターを支援する為に限定されておりますので、支援精霊が近いかと』
何となく分かるけど、良く分からないや。
そういう存在だと思っておけばまあ、間違いは無いか。
『ん~、それじゃあカイと呼ぶよ』
カイ・・・まあ単純に解って事で。
僕にネーミングセンスなんか無いよ。
『それでカイ、キミみたいな機能と言うか、そういうのって、この世界の人なら可能なのかな?』
『ノー。そもそも世界の記憶に対し、限定的でも自身のみでアクセス可能なのは、人の上位種である真人族や精霊族といった、人の世での基本存在よりも上位種からとなります。普人族等の基本存在では、伝承の書や鑑定石といった魔道具を用いなければ、世界の記憶へのアクセス権を持ちませんので』
つまり、かなり限られた存在しか、元々そういう機能を体に持っていないから不可能って事か。
『また魔法は、神聖種でなければ行使できませんので、神族か半神族でなければいけません』
つまり、神に近い存在か、それこそ神じゃないと無理って事だね。そりゃもう、世界こそ違うけど、これまで単なる人だった僕が理解出来る訳無いよ。
種族とかについてはカイに聞かなくても、世界の記憶から知識は得られるから何となく分かるけど、要はこの世界に居る大多数がムリって事だけは確かだから、この世界の人でも理解出来ないだろうし。
カイについてはほんと、そういうものだって認識しておこう。
『ところでカイ、その魔法と魔術の違いって何なのかな?』
世界の記憶からの知識でも、違いはあるっぽいんだけど、僕が理解出来る範囲を超えてるみたいで、良く分からないんだよね。




