第4話『再会』
【登場人物】
アーレス 魔法使い
ドルゲン 戦士 銀の斧で戦う
リリカ 僧侶 光の浄化魔法を扱う
ラドクリフ 元剣士?
⚔️
アーレスがアンデッドらの足下に炎魔法を放つ。
「う……があぁぁぁ……!!」
顔を押さえて悶え、やがて魔石の欠片に戻った。
ドルゲンが銀の斧をアンデッドの横っ腹に当てると、「ぐぁ!」と叫び、上半身がちぎれ壁にぶち当たった。下半身はその場で倒れ、上半身と下半身が同時に魔石の欠片に戻った。
「魔石のアンデッドなら、私たちでも倒せますね」
アーレスは魔法を放ちながら、確信を持って笑みを浮かべた。
「はい。攻撃が効いてますよ!」
ドルゲンが銀の斧を振り回しながらアーレスに返事をする。
「油断はせずに、どんどん攻めていきましょう!」
アーレスが指揮を取る。
「はい!」
返事をしたのはドルゲンだけ。ドルゲンが気になり、リリカを見た。彼女は反射的に魔石のアンデッドに光魔法を放っているが、心ここにあらず。
ドルゲンはそれを見て、歯を食いしばった。
(こんな、残酷なことねえよ……)
「リリカ、集中しろ!」
「えっ?」
「戦いはこれからだ!」
「は……はい!」
リリカも表情を戦闘モードに切り変える。
(リリカには酷だが、今はやるしかねえんだ!)
⚔️
カラン──
最後の個体が魔石に戻り、音を立てて地面に転がった。
道は開け、通路の先にはラドクリフが棒立ちしている。
「さあ、ここからが本番ですよ。ここを乗り越えて聖女の幸玉に意地でも辿り着くのです」
(あの男を始末しないと……!!)
アーレスの目の端が吊り上がった。それは冷たく触れると切れそうな目だ。
そっとアーレスが魔法の杖を構え、杖の先に大きな氷の塊を作った。
「ラドクリフ……。お前とはやりたくねえが……!」
ドルゲンも銀の斧を構える。
ラドクリフがゆっくり、三人の方に歩み始めた。
「……めて……」
リリカは僧侶の杖の先に宿る光を消した。
「……やめて! ラドクリフ!!」
ラドクリフの歩みがピタリと止まった。彼はリリカを真っ直ぐ見つめる。
「うぅ……あぁ……」
彼は頭を抱えた。
「ぐあぁぁおぉぉ〜……!!」
ラドクリフは低い声で唸った。それは哀しい響き。ドルゲンとリリカには泣いているようにも聴こえた。
(何をするつもりだ……)
アーレスだけがラドクリフを警戒した。
ラドクリフの唸り声に呼応するかのように、魔石の欠片が浮遊し飛行。一箇所に集まった。そしてそれらが結合して、手のひら大の大きさの魔石へと変化した。
「どういうことです……魔石に意思でもあるというのですか?」
アーレスが静かに驚いた。
魔石はラドクリフの前まで来ると、紫色の強い光を放射線状に放つ。
アーレスたち三人は、目を瞑った。
「「「ま……眩しい!」」」
三人は自分の腕で光を防ぎながら、声を合わせてそう言った。
「グォォーーン!!」
何者かが機械的な声で叫んだ。
次に三人が目を開けたとき、そこに居たのは魔石のゴーレムだった。
ゴーレムの胸には魔石が光る。
ドルゲンは、片方の口角を上げて笑った。
「よお、五年ぶりだな。会いたかったぜ」
鋼鉄で出来たゴーレムの屈強な体は、通路を丸々塞いでいる。
「何と。これではラドクリフさんのところまで行けませんね……」
アーレスは困り顔を浮かべた。
「それにこのゴーレムは私の魔法を反射する」
アーレスは、魔法の杖の先で煌めく氷の塊を消した。
「先生、大丈夫です。こいつは俺がやります」
ドルゲンはそう言ってのけた。
「頼みます」
アーレスはひとことお願いした。
⚔️
ドルゲンがゴーレムに向かって駆けた。
リリカが「ラドクリフ、止めて!」と叫ぶも、奥からは何の反応も無い。
ドルゲンはゴーレムの大ぶりの右拳を躱し、その右腕に銀の斧を打ち込む。
キーーンという金属音が鳴り響いた。ドルゲンの手はビリビリと痺れた。
ゴーレムの右拳は地面を破壊し、石や土が舞い上がり、砂煙が起こる。
「くっ……硬いな」
(でも、前みたいに斧が折れてねえ!)
だが銀の斧を持ってしても断ち切ることが出来ないゴーレムの体だ。このまま真正直に体を叩いても、銀の斧が砕ける可能性がある。
ドルゲンは敵の様子に気をつけながら考えた。
砂煙が徐々におさまる。ゴーレムの姿がはっきり見えてきた。
(一か八かだ……)
ゴーレムの目が妖しく紫色に光り、ゴーレムが右拳を大きく振り上げた。
ドルゲンは銀の斧を頭上で構え、ゴーレムの右拳が振り下ろされる位置に自分を置いた。
ドゴォォーン──
大きな鉄板がひしゃげるような音がした。
「ドルゲンくん!」
「ドルゲンさん!」
アーレスとリリカが声を上げた。
銀の斧に負荷がかかる。ドルゲンの筋肉がきしみ、彼の頭頂部に自分の掲げている銀の斧が押し戻され、近づいていく。
「ぐっくくっ……」
(ラドクリフよ。ひでえじゃねえか。せっかくまた会えたのによ)
ドルゲンが歯を食いしばる。地面にヒビが入り、それでも踏ん張ると地面に足がめり込んでいく。
(リリカに、お前と話をさせてやりてえんだよ! 先輩の言う事分かるよな!)
「だあぁぁぁ!!」
ドルゲンは無理矢理力を入れた。歯を食いしばりすぎて口の端から血が出る。それでも体を前に出す。
スルッとゴーレムの右拳がすり抜け、バランスを崩しよろけた。
前に進んだドルゲンの背中をゴーレムの拳がかする。
「ガハッ!」
かすった程度なのに、ドルゲンはダメージを負い、血を吐いた。
アーレスとリリカが、ドルゲンの名前を叫んだ。
なんとかゴーレムの懐に入ることが出来たドルゲン。彼は笑った。
「五年ぶりのリベンジ成功だ!」
ドルゲンは胸の魔石に、思い切り銀の斧を叩きつけた。
勢いのまま、ゴーレムは少し後ろに吹き飛ばされた。
しかし、すぐにニョキッと起き上がる。
「おいおい、効いてねえのか……勘弁しろよ……」
ドルゲンは小声で嘆いた。背中に受けたダメージもあって、彼は満身創痍だ。
「リリカさん、早くドルゲンくんに回復魔法を!」
アーレスが叫び、「はい!」とすぐにリリカがドルゲンのもとへと走った。
同時に、ゴーレムもドルゲンに向けて動き出した。
「間に合って!」
リリカのほうが少し速い。間に合う。
しかし、ドルゲンが叫んだ。
「来るな! 二人は逃げてくれ!」
アーレスも叫んだ。
「それではドルゲンくんが!」
(何をやっている……! 早く倒してしまえ!)
アーレスの言葉は胸の内と違う。彼はより哀しそうな顔を作った。
「ここにはまたパーティを揃えて、レベルを上げてから来れば良い!」
「ドルゲンさん! そんな事言わないで! これじゃ五年前と同じじゃない!」
リリカの目に映るドルゲンの背中に、あの時のラドクリフの背中が重なった。
「先生! リリカ! 世話になったな!」
ドルゲンは一歩も動かず、前を見ている。
ゴーレムが右拳を振り上げた。それは真っ直ぐに、ドルゲンの頭上に向けて振り下ろされる。
(ここまでか……)
ドルゲンがそう思った瞬間だった。
ゴーレムの動きが、途中でピタリと止まった。
パキパキッ──
魔石にヒビが入っていく。
「……!?」
三人はその様子を見守った。
「な……何が起きて……」
ドルゲンが呟いたかと思うと、ゴーレムの胸の魔石は四方八方に砕け散った。
ゴーレムが徐々に透明になり、消えた。
「た……助かった……」
ドルゲンが安堵の表情を浮かべ、その場にへたりこむように尻もちをついた。
「すぐに回復魔法をかけます!」
リリカがドルゲンに駆け寄った。
「頼む」
ドルゲンは、ヘロヘロの情けない声を出した。
「ラドクリフくんはどこへ行った!」
アーレスが首を振りながら、焦るように叫んだ。
通路の先、ラドクリフは居なかった。
第5話に続く




