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アンデッド・スター  作者: 詣り猫


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4/10

第4話『再会』

【登場人物】


アーレス 魔法使い 

ドルゲン 戦士 銀の斧で戦う

リリカ 僧侶 光の浄化魔法を扱う

ラドクリフ 元剣士?

⚔️ 


 アーレスがアンデッドらの足下に炎魔法を放つ。


「う……があぁぁぁ……!!」


 顔を押さえて悶え、やがて魔石の欠片に戻った。


 ドルゲンが銀の斧をアンデッドの横っ腹に当てると、「ぐぁ!」と叫び、上半身がちぎれ壁にぶち当たった。下半身はその場で倒れ、上半身と下半身が同時に魔石の欠片に戻った。


「魔石のアンデッドなら、私たちでも倒せますね」


 アーレスは魔法を放ちながら、確信を持って笑みを浮かべた。


「はい。攻撃が効いてますよ!」


 ドルゲンが銀の斧を振り回しながらアーレスに返事をする。


「油断はせずに、どんどん攻めていきましょう!」


 アーレスが指揮を取る。


「はい!」


 返事をしたのはドルゲンだけ。ドルゲンが気になり、リリカを見た。彼女は反射的に魔石のアンデッドに光魔法を放っているが、心ここにあらず。


 ドルゲンはそれを見て、歯を食いしばった。


(こんな、残酷なことねえよ……)


「リリカ、集中しろ!」


「えっ?」


「戦いはこれからだ!」


「は……はい!」


 リリカも表情を戦闘モードに切り変える。


(リリカには酷だが、今はやるしかねえんだ!)


⚔️


 カラン──

 最後の個体が魔石に戻り、音を立てて地面に転がった。


 道は開け、通路の先にはラドクリフが棒立ちしている。


「さあ、ここからが本番ですよ。ここを乗り越えて聖女の幸玉《こうぎょく》に意地でも辿り着くのです」


(あの男を始末しないと……!!)


 アーレスの目の端が吊り上がった。それは冷たく触れると切れそうな目だ。


 そっとアーレスが魔法の杖を構え、杖の先に大きな氷の塊を作った。


「ラドクリフ……。お前とはやりたくねえが……!」


 ドルゲンも銀の斧を構える。


 ラドクリフがゆっくり、三人の方に歩み始めた。


「……めて……」


 リリカは僧侶の杖の先に宿る光を消した。


「……やめて! ラドクリフ!!」


 ラドクリフの歩みがピタリと止まった。彼はリリカを真っ直ぐ見つめる。


「うぅ……あぁ……」


 彼は頭を抱えた。


「ぐあぁぁおぉぉ〜……!!」


 ラドクリフは低い声で唸った。それは哀しい響き。ドルゲンとリリカには泣いているようにも聴こえた。


(何をするつもりだ……)


 アーレスだけがラドクリフを警戒した。


 ラドクリフの唸り声に呼応するかのように、魔石の欠片が浮遊し飛行。一箇所に集まった。そしてそれらが結合して、手のひら大の大きさの魔石へと変化した。


「どういうことです……魔石に意思でもあるというのですか?」


 アーレスが静かに驚いた。


 魔石はラドクリフの前まで来ると、紫色の強い光を放射線状に放つ。


 アーレスたち三人は、目を瞑った。


「「「ま……眩しい!」」」


 三人は自分の腕で光を防ぎながら、声を合わせてそう言った。


「グォォーーン!!」


 何者かが機械的な声で叫んだ。


 次に三人が目を開けたとき、そこに居たのは魔石のゴーレムだった。


 ゴーレムの胸には魔石が光る。


 ドルゲンは、片方の口角を上げて笑った。


「よお、五年ぶりだな。会いたかったぜ」


 鋼鉄で出来たゴーレムの屈強な体は、通路を丸々塞いでいる。


「何と。これではラドクリフさんのところまで行けませんね……」


 アーレスは困り顔を浮かべた。


「それにこのゴーレムは私の魔法を反射する」


 アーレスは、魔法の杖の先で煌めく氷の塊を消した。


「先生、大丈夫です。こいつは俺がやります」


 ドルゲンはそう言ってのけた。


「頼みます」


 アーレスはひとことお願いした。


⚔️


 ドルゲンがゴーレムに向かって駆けた。


 リリカが「ラドクリフ、止めて!」と叫ぶも、奥からは何の反応も無い。


 ドルゲンはゴーレムの大ぶりの右拳を躱し、その右腕に銀の斧を打ち込む。


 キーーンという金属音が鳴り響いた。ドルゲンの手はビリビリと痺れた。


 ゴーレムの右拳は地面を破壊し、石や土が舞い上がり、砂煙が起こる。


「くっ……硬いな」


(でも、前みたいに斧が折れてねえ!)


 だが銀の斧を持ってしても断ち切ることが出来ないゴーレムの体だ。このまま真正直に体を叩いても、銀の斧が砕ける可能性がある。


 ドルゲンは敵の様子に気をつけながら考えた。


 砂煙が徐々におさまる。ゴーレムの姿がはっきり見えてきた。


(一か八かだ……)


 ゴーレムの目が妖しく紫色に光り、ゴーレムが右拳を大きく振り上げた。


 ドルゲンは銀の斧を頭上で構え、ゴーレムの右拳が振り下ろされる位置に自分を置いた。


 ドゴォォーン──


 大きな鉄板がひしゃげるような音がした。


「ドルゲンくん!」

「ドルゲンさん!」


 アーレスとリリカが声を上げた。


 銀の斧に負荷がかかる。ドルゲンの筋肉がきしみ、彼の頭頂部に自分の掲げている銀の斧が押し戻され、近づいていく。


「ぐっくくっ……」


(ラドクリフよ。ひでえじゃねえか。せっかくまた会えたのによ)


 ドルゲンが歯を食いしばる。地面にヒビが入り、それでも踏ん張ると地面に足がめり込んでいく。


(リリカに、お前と話をさせてやりてえんだよ! 先輩の言う事分かるよな!)


「だあぁぁぁ!!」


 ドルゲンは無理矢理力を入れた。歯を食いしばりすぎて口の端から血が出る。それでも体を前に出す。


 スルッとゴーレムの右拳がすり抜け、バランスを崩しよろけた。


 前に進んだドルゲンの背中をゴーレムの拳がかする。


「ガハッ!」


 かすった程度なのに、ドルゲンはダメージを負い、血を吐いた。


 アーレスとリリカが、ドルゲンの名前を叫んだ。


 なんとかゴーレムの懐に入ることが出来たドルゲン。彼は笑った。


「五年ぶりのリベンジ成功だ!」


 ドルゲンは胸の魔石に、思い切り銀の斧を叩きつけた。


 勢いのまま、ゴーレムは少し後ろに吹き飛ばされた。


 しかし、すぐにニョキッと起き上がる。


「おいおい、効いてねえのか……勘弁しろよ……」


 ドルゲンは小声で嘆いた。背中に受けたダメージもあって、彼は満身創痍だ。


「リリカさん、早くドルゲンくんに回復魔法を!」


 アーレスが叫び、「はい!」とすぐにリリカがドルゲンのもとへと走った。


 同時に、ゴーレムもドルゲンに向けて動き出した。


「間に合って!」


 リリカのほうが少し速い。間に合う。


 しかし、ドルゲンが叫んだ。


「来るな! 二人は逃げてくれ!」


 アーレスも叫んだ。


「それではドルゲンくんが!」


(何をやっている……! 早く倒してしまえ!)


 アーレスの言葉は胸の内と違う。彼はより哀しそうな顔を作った。


「ここにはまたパーティを揃えて、レベルを上げてから来れば良い!」


「ドルゲンさん! そんな事言わないで! これじゃ五年前と同じじゃない!」


 リリカの目に映るドルゲンの背中に、あの時のラドクリフの背中が重なった。


「先生! リリカ! 世話になったな!」


 ドルゲンは一歩も動かず、前を見ている。


 ゴーレムが右拳を振り上げた。それは真っ直ぐに、ドルゲンの頭上に向けて振り下ろされる。


(ここまでか……)


 ドルゲンがそう思った瞬間だった。


 ゴーレムの動きが、途中でピタリと止まった。


 パキパキッ──


 魔石にヒビが入っていく。


「……!?」


 三人はその様子を見守った。


「な……何が起きて……」


 ドルゲンが呟いたかと思うと、ゴーレムの胸の魔石は四方八方に砕け散った。


 ゴーレムが徐々に透明になり、消えた。


「た……助かった……」


 ドルゲンが安堵の表情を浮かべ、その場にへたりこむように尻もちをついた。


「すぐに回復魔法をかけます!」


 リリカがドルゲンに駆け寄った。


「頼む」


 ドルゲンは、ヘロヘロの情けない声を出した。


「ラドクリフくんはどこへ行った!」


 アーレスが首を振りながら、焦るように叫んだ。


 通路の先、ラドクリフは居なかった。




第5話に続く

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