異世界の神様
「え…どなたですか…?てか、ここ私の家…えっ、不法侵入者?子供の??」
その少年は宙に浮きながら
「僕は、この世界とは別の世界、レヴァの神。そのゲームは僕が作ったんだよ!一番コインを持っている人間を次の神様にしようと思ってね」
ちょっと意味が分からない…。
あまねは通報するべきか悩んだが、この子は宙に浮いている。
しかもこの人間離れした美貌…。
どうしよう…。私、疲れてはいたけど、ここまでとは…。
ついに妄想激しい人間になってしまったのだろうか…。病院行くなら眼科かな?それとも脳外科?精神科??
仕事、休みとれるかな…。
………まぁ、いっか。
あまねはいったん考える事を放棄した。
「よく分かりませんが、とりあえずこちらのソファにおかけください」
「…君、落ち着いてるね」
「いえ。落ち着いているわけではありませんが、慌てても仕方ないので…。もう、不法侵入された後ですし…」
「………まぁ、良いや。さっきも言ったけど、僕が作ったゲームで楽しんでくれてたようでありがとう。結構頑張って作ったんだよ」
作り物のような美貌が照れて赤くなり、下を向いた。
…可愛いけど、ありきたりなゲームだよね。
自称神は急に顔を上へ向け、心持ち声を大きくし、
「でね!今、一番コインを持っている君に次のレヴァの神になって欲しいんだ。」と言い出した。
あまねは深々と頭を下げ、「すみません。他をあたってください」とはっきり断る。
「いやいやいや、何で!?神になれるんだよ!?」
「そう言われましても…。あなたが本当に異世界の神であることも、私が神になれるかも、全てが信じられませんので。私、保険貧乏人と言われるくらい保険に力を入れる人間なのです。安心・安全・保証第一なのです」
その顔と、宙に浮いていた姿がなければ不法侵入者一択だしね…。
「いや、意味分かんなんだけど!神になってレヴァで楽しく暮らそうよ!!」
「信じられる要素が一つもありませんので」
「…どうしたら信じてくれるの?できれば君に来て欲しいのに………。」
先程まで楽しそうに笑っていたのに、今にも泣きだしそうな顔をしてそのような事を言うので、罪悪感が半端ない。
「えーっと。…では、話だけでもお聞かせください。それから考えます」
自称神は気を取り直したようで
「そうだね!じゃあ、まずは自己紹介から!僕はレヴァという世界の神で、名前はクライドだよ。
性別は内緒で、年齢は秘密~」
と、さっきの泣きそうな顔が噓のように陽気だ。演技だったのかな…。
「木村あまねと申します。年齢は35歳です」
「うんうん、あまねちゃんだね! それでね、レヴァはこの世界でいう中世ヨーロッパのような世界なんだけど、文明自体はここよりだいぶ遅れてるかな。その代わり、魔法もダンジョンもあってとっても楽しい世界なんだよ。獣人だって、エルフだっているし」
「そうですか。危なさそうなので、やはりお断りさせていただきますね」
「えぇ…。そんな反応になるんだ…。でも危なくないよ!君は神になるんだから、たくさんスキルを得られるよ」
そこで、クライドは思い出したかのように「あっ!スキルブックを使ってくれたら信じてもらえるかも…。」と言いながら、どこからか分厚い古めかしい本を取り出した。
あまねにその本を差し出すと「これはスキルブックといって、あまねちゃんがこれから得ることができるスキルと、得るために必要なコイン数が載ってるよ」と言って手渡した。
あまねはその本を受け取りパラパラとめくり、すぐに閉じて「読めません」と本を返そうとした。
本に書かれていたのは、あまねが見たことのない文字だった。
クライドは本を受け取ることなく、手を本の上に翳すと本が一瞬光り、次に見たときには日本語で書かれており、読めるようになっていた。
「これなら読めるよね?」
…すごい、本当に神様かも。
本の表紙には大仰な文字で『スキルブック』と書かれており、中を除くと、火魔法初級や氷魔法初級、結界魔法等様々な種類のスキルに関する情報が記載されていた。
「試しに、スキルを交換してみようよ。火魔法は危ないから…」
クライドは、本を指し示しながら「この水魔法初級を交換してみよ?」と言う。
そこには、
『水魔法初級 100,000コイン』と書かれていた。
「交換とは?私、コインなんて持っていませんが…」
「持ってるでしょ。僕が作ったゲーム、あのコインだよ」
「あっ…」
あまねは開きっぱなしになっていたゲームを確認する。そこには85,394,478コインと表示されていた。
「あまねちゃん、いっぱい遊んでくれたよね。あまねちゃんの次の子との差がだいたい30,000,000コインぐらいだよ。だから、できれば君にレヴァの神になって欲しいんだ。いっぱいスキルを持ってた方が良いからね」
「心の中で『水魔法初級獲得』って念じたら交換できるよ」
あまねは心の中で『水魔法初級獲得』と念じてみた。すると、頭の中で「チャリン」とお金がぶつかったような音がした。
「できた?水魔法の初級は攻撃とまではいかないけど、生活するには困らないだけの量の水を作り出したり、操作できるよ。やってみれば、できそうな事が感覚で大体わかるから。」
確かにできる気がする。
そう思ってみたら、いてもたってもいられず目の前にテニスボールぐらいの大きさの水球が出るか試してみた。
すると、そこにふわふわ浮かぶ想像した通りの水球…。
本当だった…。
神様だ……。




