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初めて彼と廊下ですれ違った時、太陽のような人だと思った。

オレンジの髪と青い瞳を纏った整った顔立ちは、真夏の果実と海を想像させる。思わず恍惚とした瞳で見入っていると、隣の友人が私の脇の辺りをつついてきた。

「ちょっとローラ、見てたわよ。今あの男の子のことかっこいいと思ったでしょ」

「ちょっとリンネ、大きな声で言わないでよ。恥ずかしいじゃない」

「ふ〜ん、かっこいいと思ったことは認めるんだ。まあ確かにイケメンだったけど、制服はハイビスカス寮のだったよね。隣にあんな男の子いたんだ」

私の腕を組みながら、リンネは振り返って遠ざかっていくその背中を見つめていた。

私たちの通う聖フェスト学園はプリマヴェーラ寮、ハイビスカス寮、ハロウィン寮、クリスマス寮の四つに別れていて、さらに前二つがウェスト棟、後ろ二つがイースト棟に区分されている。私や友人のリンネが所属するプリマヴェーラ寮はウェスト棟でハイビスカス寮と隣接しているが、それぞれの寮で制服が異なっているので廊下ですれ違った時にどの寮に属しているかが一目瞭然なのだ。

「まさか、リンネもあの男の子のこと・・・」

「あはは、ないない。惚れっぽいローラと一緒にしてもらったら困るわよ」

彼女のこの物言いには少しムッとなってしまったが、そんな会話をしていると反対側に歩いていったはずの彼がこちらに戻ってきた。

そして、キョロキョロと周辺を見渡しながら私たちに話し掛けてくる。

「ちょっとごめん。胸ポケットに入れてあったペンを落としちゃたみたいなんだけど、この辺に落ちてない?フレームが綺麗な青色で俺のお気に入りなんだ」

「そうなんだ、それは大変だね。私も探すの手伝うよ」

私は彼の外見に惹かれたことも忘れ、彼と一緒になって廊下にペンが落ちていないか探し始める。私にもお気に入りのペンがあってそれを失くしたらきっとショックだろうし、何より困っている人は放っておけない。

リンネも何も言わずに探すのを手伝ってくれて三人でしはらく廊下をうろちょろとしていたが、やがて私が階段の隙間に落ちているそれを発見した。

「あった。もしかして、これ?」

拾ったペンを掲げながら彼にそう訊いてみると、パッとその表情を明るくさせていた。

「そうそう、それだよ!本当に助かった、拾ってくれてありがとう」

「どういたしまして。見つかってよかったよ」

私が微笑みながらそう言うと、彼が嬉しそうにこちらの手を握ってブンブンと振ってくるから私はまたドギマギとしてしまった。

「プリマヴェーラ寮の子だよな?今度拾ってくれたお礼したいからさ、よかったら部屋と名前教えてよ。あ、俺の名前はリトって言うんだ」

「わ、私はローラです。プリマヴェーラ寮の三〇五号室で、そこのリンネちゃんとルームシェアしてます」

私が落ち着かない様子で受け答えをしている間も、リトと名乗った彼は笑顔を絶やさずにまたブンブンと手を振ってくる。

「ローラちゃんね!また近々そっちの寮にお邪魔させてもらうからよろしく、それじゃあ俺は次の授業があるからまたな」

そうやって彼は急に手を振りほどいたかと思うと、最後まで笑顔を振りまいて足速に去って行く。

まるで嵐のような人。彼に握りしめられた手を胸の前に持っていき、私は胸の高鳴りを抑えることができなかった。

そんな私の肩を、リンネが後ろからぽんと叩いてくる。

「惚れっぽいのはいいことだけど、妄想膨らませるのも大概にしときなよ〜。変に期待しても怪我しちゃうだけかもしれないからさ」

「わ、分かってるよ」

赤らめた頬を膨れさせる私だったが、この時の想像以上に私と彼の仲は発展していくことになるのだった。


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