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過労死して高校時代に戻った私、『人生計画』を破り捨てた  作者: 朧月 華


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第27話 それぞれの道で、同じ空の下で

早春の風が新緑の香りを運ぶ頃、五人はそれぞれ新たな局面を迎えていた。藤原は大学の研究室で発達心理学の研究を深め、森川は写真家として初の個展を準備し、赤城はスクールカウンセラーとして働き始め、神崎はオープンソースプロジェクトのリーダーとして世界中の開発者と協力している。


夏希は文学部で心理学と美術を学びながら、彼らをつなぐ役目を続けていた。スケッチブックには、離れていても確かに続く絆の記録が刻まれている。


「おい、見たか?」赤城がビデオ通話で叫ぶ。「森川の個展、新聞で紹介されたぞ!」


画面には、森川の写真展の評判を伝える記事が映し出される。そこには、感情認識技術とアートの融合を評価する批評家の言葉が並んでいた。


「まだまだだ」森川の控えめな返事に、藤原が笑う。


「相変わらずだな。でも、本当におめでとう」


神崎の画面では、彼が主導するオンラインカンファレンスの準備が進んでいた。


「来週のカンファレンスには、50カ国以上の開発者が参加する」神崎の声には、かつてない熱意が込められている。「私たちの技術が、こんなに遠くまで届くなんて」


しかし、順調に見える日々にも、小さなほころびはあった。新しい教育ベンチャー「エデュテック」が、彼らのオープンソース技術を利用して急成長しているというニュースが流れた。


「あの企業、私たちの技術を商業的に利用している」藤原が懸念を表明する。「倫理委員会での審査は通っているのか?」


神崎がデータを確認する。


「技術的には合法だ。だが…」


その時、夏希のスマートフォンに一本のメールが届いた。エデュテック社のCEO、早瀬という人物からの面会希望だった。


「会ってみよう」夏希が提案する。「直接話せば、わかることがある」


早瀬は30代半ばの鋭い眼光の男性で、言葉の端々に野心がにじんでいた。


「私たちは、あなた方の技術をさらに発展させ、教育の民主化を目指しています」


しかし、彼の提示するビジネスモデルには問題があった。有料サービスの範囲が広すぎるのだ。


「これは、私たちが目指してきたものとは違う」藤原が静かに、しかし強く反論する。「技術は、すべての子どもたちに開かれているべきだ」


早瀬の笑顔が少しこわばる。


「現実的なビジネスを考えなければ、持続可能なサービスは提供できません」


その夜、五人はオンラインで緊急会議を開いた。


「私たちの理念を、どう守っていくか」神崎の問題提起に、一時沈黙が流れる。


「そうだな…」赤城が深く考え込む。「俺たち、ずっと『すべてを無料で』ってやってきたけど、それで本当に持続できるのか?」


森川が一枚の写真を共有する。アフリカの小さな村で、彼らの技術を使って学ぶ子どもたちの笑顔だ。


「この子たちに、有料サービスは払えない」


藤原が心理学のデータを示す。


「研究によれば、教育格差是正には、無料の質の高い教育リソースが不可欠だ」


しかし現実は厳しかった。サーバー代や開発費は膨らみ続け、寄付だけでは賄いきれない。


「わかった」神崎が新しい提案をする。「ティア制の導入だ。基本的な機能は無料のまま、高度な機能を有料化する」


夏希が具体案を描き始める。


「経済的に恵まれない地域には、奨学金制度を設けるのはどう?」


彼女のスケッチブックに、新たなビジネスモデルの構想が広がっていく。


翌週、彼らは早瀬との第二回会談に臨んだ。


「私たちはこう提案します」藤原が新たな計画書を提示する。「基本機能の無料提供を継続し、企業向けの高度なカスタマイズサービスで収益を上げる。そして、その利益の一部を教育格差是正に充てる」


早瀬はしばらく書類を見つめ、やがて深くうなずいた。


「これなら…協力できるかもしれない」


その決断は、新たな連携を生んだ。エデュテック社のリソースを借りて、より多くの地域に技術が届けられるようになった。


月日は流れ、それぞれの道を歩む五人は、時折集まっては同じ空を見上げる。


「なあ」ある夕暮れ、赤城が呟く。「俺たち、ちゃんと正しいことしてるのかな?」


藤原が優しく笑った。


「完璧な答えなどない。でも、間違いなく前に進んでいる」


森川のカメラが、夕焼けに染まる街を捉える。


「この景色を、いつまでも守りたい」


神崎のスマートフォンには、新たな協業の依頼が届いていた。発展途上国での教育プロジェクトだ。


「次は、どこへ行く?」夏希が聞く。


「どこだっていい」神崎の目が夕日を受けて輝く。「お前たちとなら」

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