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過労死して高校時代に戻った私、『人生計画』を破り捨てた  作者: 朧月 華


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第23話 光を紡ぐ者たち

六ヶ月の期限が三ヶ月に迫った頃、神崎のプログラムは静かな革命を起こしていた。個別化認識システム「エモ・パレット」は、子どもたち一人ひとりの感情表現を色と形のパターンとして学習し、独自の「感情パレット」を作り出せるようになっていた。


「見てください」特別支援学級の担任教師が目を潤ませながらタブレットを示す。「この子が、初めて『楽しい』という感情を認識されました」


画面には、自閉症スペクトラムの少年が描いた抽象画が表示されている。これまで無表情だった彼の感情の動きが、色の変化として可視化されていた。


森川のカメラがその瞬間を捉える。少年の目に、かすかな光が宿る瞬間を。


「これが…私たちが追い求めてきたものだ」藤原の声が震える。


しかし、成功の陰に新たな問題が潜んでいた。プログラムの複雑化に伴い、必要な計算資源が膨大になっていたのだ。


「サーバーコストが想定の三倍だ」神崎の表情は険しい。「このままでは持続不可能だ」


その夜、アレックスからの厳しいメールが届く。


「コスト削減の目処が立たない場合、プロジェクト終了もやむなし」


五人は美術室に集まり、夜明けまで議論を続けた。しかし、解決策は見つからない。


「諦めるしかないのか」赤城が初めて弱音を吐いた。


その時、夏希のスマートフォンに通知が光った。小林美桜からのメッセージだった。


「みんな、見て!SNSで私たちのプロジェクトが話題になってる!」


#感情を色で見る魔法

#エモパレット


ハッシュタグとともに、施設の子どもたちが描いたカラフルな絵が拡散されていた。彼らの感情の軌跡が、美しいアートとして多くの人の心を動かし始めていた。


「まさか…」森川が息を呑む。


さらに驚いたことに、クラウドファンディングのページまで立ち上がっていた。目標金額はあっという間に達成され、寄付は続々と集まっている。


「これなら…」神崎の指がキーボードの上で止まる。「新しいサーバーを導入できる」


しかし、彼の表情は依然として曇っていた。


「どうした?」藤原が心配そうに尋ねる。


「技術的な問題だ」神崎はモニターを指さす。「個別化された感情データを、どう保護するか。プライバシーの問題が…」


その問題は深刻だった。子どもたちの最も繊細な感情データが、外部に漏れる危険性がある。


「待って」赤城が突然立ち上がる。「俺、いい考えがあるかもしれない」


彼はカウンセリング実習で学んだことを思い出していた。


「データを分散させればいいんだ。一箇所に集めず、それぞれの端末で処理する」


神崎の目が輝いた。


「…分散処理か。可能だ。だが、技術的に難しい」


「やってみよう」藤原が微笑む。「私たちならできる」


次の二ヶ月間、五人はそれぞれの能力を最大限に発揮した。神崎は分散処理システムの開発に没頭し、藤原は倫理的な枠組みを設計し、森川は感情の可視化方法をさらに洗練させ、赤城はユーザーインターフェースを改善した。


夏希は、すべてをつなぐ役目として、それぞれの進捗を調整し、時には衝突する意見の仲立ちをした。


期限切れの前日、ついに新型システム「エモ・パレットNEXT」が完成した。


「テストしよう」神崎の声には疲労と達成感がにじんでいた。


最初のテストユーザーは、あの無表情だった少年だ。彼がタブレットに触れると、画面が優しい光に包まれた。


「…きれい」


少年が発したその一言に、教室中が静寂に包まれた。


担任教師の頬を涙が伝う。


「この子が…自発的に言葉を…」


プログラムは少年の感情の動きを、美しい光の芸術へと変換していた。彼の内面世界が、初めて外に向かって表現されていた。


アレックスとの最終報告会で、神崎は新しいシステムを披露した。


「コストは従来の三分の一。セキュリティは飛躍的に向上。そして何より」神崎の声に熱がこもる。「私たちの目指すものを実現できた」


アレックスはしばらく沈黙した後、ゆっくりと立ち上がった。


「契約更新だ。それだけではない」彼の口元がほころぶ。「追加投資をしよう。この技術は、予想以上に可能性を秘めている」


その夜、五人は久しぶりに屋上に集まった。街の灯りが遠くに輝く中、それぞれが感慨にふけっていた。


「あの日」藤原が静かに言う。「美術室で出会った時は、ここまで来るとは思わなかった」


「俺はな」赤城が笑う。「最初はみんなのこと、変わり者だと思ってたぜ」


森川がカメラを掲げ、月明かりの中に立つ四人の姿を収める。


「これからも、ずっとこのままでいたい」


神崎がそっとうなずく。


「ああ。だが、私たちの旅はまだ終わらない」


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