+1 おかしいのは誰ですか?
子供たち「2人の出会いっていつだったの?」
風「確か、凛音姉が編入試験の面接を受けに来た時、だったよね?」
凛音「うん。!」
子供たち「最初の印象はどんなだったの?」
凛音「不思議な子だなぁ、と。」
子供たち「今と大して変わんないね。」
凛音「そうだね。今もよくわかんない。」
風「こんな雰囲気で話を進めて大丈夫なの?」
子供たち「私達は、聞いてるだけだし。」
凛音「私も、基本的にそういった方向なので。」
風「、、、、、、、、、」
子供たち「第1話始まるよー。」
凛音「始まりますっ。。」
三月上旬、編入試験を実施しているため、休校状態となっている
僕達の母校、葵葉高校の理学棟、校舎内は、閑散と静寂に包まれていた。
用事を済ませ、一階の廊下を歩いて出口へと向かう道中、
向こう側から、受験生と思しき少女が、校舎案内の地図を片手に、
視線をあちこちにやりつつ、不安げに歩いてきていた。
子供たち(凛音ちゃん、迷子になってたんだね!)
凛音(。。。。。)
風「ここは、入ってきちゃだめだよ。」
凛音「!! 、?。」
凛音姉は、びくっ、と驚きの反応を示して、こちらに視線を合わせ
僕の姿を捉えると、目をパチクリとさせ、状況を把握しかねている様子だった。
風「集合場所は?。」
凛音「、、、、あっ、 、第1 、会議室、、ですっ。。」
おどおどとした様子で答え、なぜか僕が彼女を問い詰めているような形になっていた。
子供たち(風って、普段、顔が無表情だから、初対面だと、怖いんだよね。)
凛音(うんうん。)
風「案内するから、ついてきて、」
凛音「 はぃっ。 」
僕はすぐさま、歩き出し、後ろから彼女が、ついてきているのを
足音で確認しつつ、会議室へと向かっていった。
何も問題は起こらず、僕達は、すんなりと目的地へとたどり着いた。
子供たち(問題なのは、凛音ちゃんの方だったというわけか、。)
凛音(1人でもちゃんと 、行けた 、、 はず。)
風「それじゃ、。」
凛音「あっ、、……………」
後ろから、呼び止める声が聞こえたけれど、、
責任は既に果たしたと言えるので、、、
僕は、足早にその場から立ち去った。
子供たち(親切なのか、不親切なのかが、よくわかんないなぁ。)
凛音(風ちゃんは、人当たりが、あまりよくないから。)
理学棟の鍵を返しに、職員室によると、
僕の担任である鈴先生に呼び止められた。
無視して、そのまま帰ろうとすると、
クッションを投げつけてきたので、
僕は、反射的にキャッチした。
風「何か言いたいことがあるなら、ものじゃなく、直接口で言ってよ。」
子供たち(私なら、この時点で跳び蹴りだね。!)
凛音(裸足で?)
子供たち(うん!)
凛音(それなら、大丈夫、。)
僕に対し諦めたような視線を向ける鈴先生にクッションを返すと、
僕は、立ったまま鈴先生の話を聞いた。
鈴先生「識穂『しほ』は大丈夫かな?」
識穂 『しほ』は、鈴先生の姪で、
一見すると、無愛想だけれども、気心がしれてくると、年相応の無邪気な
表情が、際立つようになり、何度か遊ぶうちに、僕にもよくなついてくれる
ようになった。
子供たち(この子って当時、何歳なの?)
凛音(8歳かな。。)
子供たち(天才少女現る、だね)
風「心配して、結果が変わるわけでもないし、気長に待とうよ。」
鈴先生「識穂 に止められたけど、やっぱり、
監視カメラを面接する部屋につけとくべきだったかなぁ。」
この人が、教師で大丈夫なのだろか?。
鈴先生「仕方ない。風、着ぐるみ着とけば、大丈夫だと思うから、
適当なのを着て、面接の様子、私の代わりに見てきて。」
風「それなら、監視カメラの方が、まだいけるんじゃないの?」
鈴先生「それじゃ、理事長に聞いてみる?」
風「えっ、本気なの?。」
鈴先生「もちろんよ。」
そう言うとすぐに、鈴先生は、電話を手に取った。
鈴先生「もしもし、あっ、理事長、?あのね、面接の時に、風を 着ぐるみ で置いといたら、
、、、、、、 んっ? 、、、、、、
、、 、、
わかった、じゃーねー。」
風「何て?」
鈴先生「用意しとくから、今すぐ来てだってさ。」
入学して一年になるけど、何なんだろうなぁ、この学校。。
別にこのまま無視してもいいのだけれど、そうなると、
おそらく、理事長本人が、着ぐるみを着て、面接を
実施するだろう。
それは、、、、さすがに、アウトだな。、。
どちらにしても、ふざけてるとしか思えないが、、。
まぁ、識穂のことが気になるのは、僕も同じなので、
できるだけ邪魔にならないよう、鈴先生の分まで、見守ることにしよう。
思考が定まると、僕はすぐさま、職員室を後にし、
着ぐるみのもとへと向かうのだった。
凛音(第1話、おしまいです。)
子供たち「せっかくだから、風の面接の話も聞かせて。」
凛音「それ、私も、聞きたい。」
風「別にいいけど、面白いかはわかんないよ。」
子供たち「早く、早く。」
凛音(おまけ①)
飛び級の特別枠として、書類審査を通過した僕は、
一月下旬、面接を受けるため、葵葉高校を訪れた。
待合室で待っていると、名前を呼ばれ、面接する部屋の扉の前に立ち、
気持ちを落ち着けるため、一息、深呼吸。
風「失礼しま、、、。」
扉を開けると、机、椅子といった、本来あるべきものがなく、
中央に、蓋が開けられた棺があるのみだった。
理事長は、その中で、目を瞑り、物音ひとつ立てずに、
仰向きの体勢で静止していた。
胸の上にそっと置かれた手には、筒状に丸められた紙が、
そっと握られていた。
どうすべきか、戸惑った僕は、とりあえず、部屋一面を見回してみた。
すると、天井、僕のちょうど頭上に
文字が書かれたプレートが取り付けられていた。
『寝ているので起こさないでください!
合格通知書はご自由にお取り下さい』
子供たち(手に握られているのが、合格通知というわけだね。)
凛音(つまり、試験内容は、どのようして起こさずに取るか。)
僕は、棺のそばによると、開いていた蓋を閉め、カチリ、と
音がするのを確認した。
子供たち(??諦めたのかな??)
凛音(どうなんだろ?)
そして、そのまま、扉を開けて出て行こうとすると、
棺が、独りでに、開け放たれた。
理事長「お前は、鬼畜か!!」
子供たち(ナイス、ツッコミ)
凛音(この人、どっちかというと、ふざける方なんだけどね。)
予想通り、蓋は中からも開くようになっていたようだ。
風「あぁ、おはよ。」
理事長「……………うん、おはよ。、、、、」
理事長は棺から出てくると、握っていた紙を開いて僕に見せた。
すると、それはまさしく、僕の合格通知書そのものだった。
理事長「わざわざ、簡単なのにしてあげたのに、。」
理事長は、むすっ、と拗ねた表情をして不満そうに呟いた。
子供たち(風とは知り合いだったんだね)
凛音(理事長が、ここへの入学を風に勧めたみたい。)
この人、一体何歳なんだろう?
見た目からだと、高校生にしか見えないんだけれど。
風「僕は、パネルの説明に従っただけだよ。」
理事長「私を起こすんじゃなくて、私が怒って
起きてくるように仕向けるとか、
そんなの卑怯!」
風「僕、不合格?」
理事長は、無言で、手に持った合格通知書を丸め、
僕の方に、雑に投げつけてきた。
そっぽを向いたままの理事長に礼をして、
その場を立ち去ろうとすると
理事長「とりあえず、入学おめでと」
僕は、表情を悟られぬよう、繕いつつ、
部屋を後にした。
凛音(おまけ①終)
子供たち「、、、、。何だったんだろう?」
凛音「一番おかしいのは、風ちゃんだったということでしょ?」
風「どんなまとめ方だよ。」
凛音「それでは、また、2話でお会いしましょう。」
子供たち「バイバーイ」