第16話 全て食材に
囚われになった科国の女司令。
しかし彼女は自らのオブリビオンを行使して
一息入れる余裕すらあるようだ。
魔国の精鋭部隊が出撃する数時間前の話。
科国の女司令は昏睡状態のまま魔国のとある都市の、
牢獄施設に入監された。目が覚めると変貌した状況に
混乱するも看守からの説明で全てを理解する。
「起きたか」
「ここは…」
「見ての通り牢屋だ。さて…説明しようか。
お前は今、身分としては人質といったところだ。
これから我々魔国政府は科国の領地を襲撃し、
都市を強奪する。お前はもしものための交換材料だ」
「私にそんな価値があるとでも?」
「ああ。お前は取り調べによって覚醒者であることは
我々魔国政府の間で確認済みだ。
当然取引上ではそれも材料にする。今はそういうことだ」
全ての話を聞いた後、看守が外に出る。
どうしたものかと部屋を歩いてみた。
まるで格安ホテルの一室、牢部屋は完全隔離された個室で、
ベットと内線電話のみ。あとはユニットバスとトイレで
特に生活に困ることはない。強いて言うなら
娯楽に関する物は全くといって良いほどない。
思わず「下積み時代を思い出すわね」と声が出る。
ベットに座ると暇だなと考えつつ、
脱出のタイミングを伺っていた。
彼女の悠久潜在能力は料利。
土の壁だろうと、鉄の格子だろうと美味しそうな料理へと
調理できてしまう。本人の腕前次第では、
例え割り引かれた食材でも高級レストランで出される食事並みの、
ディナーを提供できるというわけだ。
「但し栄養管理には気をつけないとねー。
ティッシュでスイーツを作った時なんか5キロ増えちゃったし」
手刀を包丁にすれば、適当に壁に開けて
壁からできたティラミスを頬張りながら
抜け出せる…が、それでも不利なことに変わりはない。
騒ぎ程度なら起こせても腹いせにしかならない。
「面会の時間があれば
誰かに電話を通せるかもね」
少しでも有利な状況に持っていくために、
今はこの状況を堪能することにした。
一方で科国は大パニックに陥っていた。
今起きてる優先して解決しなくてはならない事項が
増えてしまったためである。
(起動したケラウノスの経緯)と
(魔国の侵略行為に対する国民への対策勧告)。
科国政府は困難を極めていた。
「現に…我々は加害者である。
しかしハメられたうえで加害者なのだ。
あのような映像を出されては、もう我々の味方はいない。
どうしたものか…」
嘆く国防長官。
しかしそのそばで総理大臣は電話越しにこう言った。
「予定通りだ、あとは頼んだぞ。
しかし魔国の連中は目標のためなら景色も犠牲にするとはな」
総理がガラケーを閉じると不思議に思っていた長官が駆けつけた。
こんな時に何が予定通りなんだと。魔国というワードを話すなら
関連していることに違いはない。
「こちらの話だ。
君は今回の魔国の対応をどう思う」
「どうも何も!なぜ我々人類同士で傷つけ合わなくては
ならんのでしょうか!ヴェルサイス領の件だってそう!
元はといえば魔国の一方的な要求でしょうに!」
「君が怒るのも無理はないし、何よりこれからの結果で
君の怒りも治るだろう。だが…こちらも禁止カードを使うのはどうか、とね」
「…どんな手を使うかは分かりませんが、
報復ができるのなら、民の血が流れないのであれば、
私はもうそれで」
ポケットの中の名刺。
禁断の切り札を国が使う時が如何に残酷になれるのか。
誇り高き竜の眷属へ連絡を
取る時、脳裏に漂う厚い雲を拭えなかった。
意思を持った殺戮兵器の集団。
それがディアード達が所属する組織の本性だ。
「魔国貴族め…
自らの行いを悔いてもらうぞ」
慈悲をなくし決心を固めた総理が歩みを進める。
閲覧ありがとうございました
料利は元々(ミシュラ)という名前でした。
ちなみに土や鉄を美味しく仕立てられるのは覚醒者の領域になってからです。
次回もお楽しみに♪




