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Magic & Cyberpunk -マジック&サイバーパンク-  作者: タナカ アオヒト
8.5章_ワン・マン・アーミー!

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SS14.03_黒き使者

悪魔の銃、ライザ。

セツナの愛銃は、異界化がもたらす怪異により、人間の姿となった。


銃の性能と、使い手の能力。

それらが、彼女の姿と能力を構成している。



優れた武器は使い手を選び、優れた戦士は武器を選ぶ。



ライザとセツナは、互いを認め合う者同士。


‥‥そして、似た者同士。

人と人が似るように、武器と人も似ていく。


知らず知らず。





「「‥‥‥‥。」」



やいのやいのと、取っ組み合いのケンカをしていた2人が、大人しくなる。


セーフハウスに客人。

2人来た。


1人は、セツナの妹のハル。

そして、もう1人は――。



「いたたた――――、た?」



床にうつ伏せに倒れているハルが、周囲を見渡す。

セツナとライザに、気が付いた。


目を大きく開き、息を、言葉を、詰まらせる。



「に、兄さんが‥‥。」



セツナは危機感を覚え、ライザを引き剥がそうとする。

膝立ちで腰に組み付いている彼女の頭を、右手で押しのける。


引き剥がせない。

‥‥その装備を外そうだなんて、とんでもない。


言葉に詰まったハルは、セツナを指差した。

喉に詰まった言葉が、驚愕によって押し出される。



「――兄さんが、知らない女を家に連れ込んでるぅぅ!!」


「やめなさいって!?」



ライザは、にんまりと悪い顔。

セツナに縋り、ハルの前で、すんすんと泣きまねをする。



「あのね。あたし、この人に捨てられたの‥‥。」


「よしなさいって!?」


「痴情のもつれだ~!!」


「別の男 (男装の麗人)の、相手をさせられたこともあるの‥‥。」


「待ちなさいって!?」


「インモラルな関係だ~!!」


「だぁーー!! どうなってんだ!? 今回の仕事はッ!!」



絶叫し、頭を抱えるセツナであった。

その様子を、ハルの上に座る少年が、冷ややかな目で見ている。


ライザは、冗談の応酬に満足して、セツナから離れる。

離れて、立ち上がる。



(背、たっか‥‥!)



立ち上がったライザに、ハルは無言で驚く。

彼女の身長は、セツナと同じくらいある。


兄の身長が、180cmと少しだったので、彼女もそれと同じくらい。


180cmは確実にある。

ハイヒールを履いたら、セツナよりも背が高くなるくらいには、背が高い。


長身の女ガンマンが、ブーツをソールを鳴らしながら、ハルの傍へ。

おもむろに、ホルスターから銃を引き抜く。


銃口を向ける。

ハルの上に座る、冷めた表情の少年へ。



「おい、クソガキ。

 いつまで、そこに座っているつもりだ?」


((こわ‥‥。))



リボルバーの持つ凶暴性が、ライザを急変させる。


銃を向けた相手と、銃を握る者。

その両者に、良くない結末をもたらす。


デビルサモナー、デビルライザーガンと呼ばれる――。

彼女の、悪魔の側面。


銃を突き付けられた少年は、まるで動じない。


黄色い、爬虫類のような瞳孔を持つ瞳が、ライザを一瞥。

それから、自分が座っている、金髪のクッションを一瞥。



「ん? ああ、すまん。

 あまりにも固いから、()()()思っておったぞ。」


「あぁん?」



怖い人が、1人から2人に増えた。

怒気の混じった、ハルの声。


セツナが、後ろからライザの両肩を掴む。

ハルと少年から、距離を取らせる。


ハルが勢いよく立ち上がる。

じゃじゃ馬が嘶いく(いななく)

背中の少年を振るい落とす。


銃剣を1本召喚。

大上段に、振り下ろす。


銃剣が少年を襲う。

‥‥飛行船の、天井を切り裂いて。



「ほわぁぁぁ~!?!?」



ムンクの叫びみたいな声を上げたのは、セツナ。


少年は、銃剣を右手で軽々受け止めている。

彼の足元の床が、ひび割れる。


銃剣を押し付けたまま、ハルは銃剣の腹を、手の甲で叩く。

硬質で重厚な音が船内に反響し、青い天井から空へ抜けていく。



「次、同じことを言ったら――。

 次はこの2倍、強くやる。」



銃剣の腹を叩いた手の甲を見せながら、指を2本立てる。


銃剣が消える。

斬りかかられた少年は、まるで脅しを怖がっていない。



「ふん。眷属が我に意見をしようなど、大きく出たもの――。」



――銃声。


2回の銃声。

4つ、床に穴が開いた。


カウボーイハットの奥から、殺気だった青い瞳が少年を威圧している。


少年は、蛇に睨まれた蛙みたいに、動かなくなる。


ライザは、リボルバーのリロード。

シリンダーを横に出し、イジェクトロッドを押す。


パラパラと‥‥。

静まり返った船内に、無機質な硝煙が零れて転がる。



「――どうした? 続きを言ってみろ。」



少年に対し、当たりの強いライザ。


続きを言ったら、多分、今度は床では済まない。


顔か? 腹か?

この女は、間違いなくやる。


少年は、顔を忙しく左右に振る。



「ふ、ふん。我は寛容だからな。

 眷属の言葉にも、耳を傾けてやろう。」



色白の少年は、精一杯、虚勢を張るのであった。


リロードを終えたライザは、リボルバーをホルスターにしまう。

セツナは、床に両手をつき、orz(こう)なっていた。



天井に空いた、青い穴。

床を抉った、黒い弾痕。


それと、割れた窓。



彼の空飛ぶ秘密基地は、メチャクチャである。


例え壊れても、クレジットを払えば、即刻修理ができる。


しかし、それでも精神衛生上よろしくない。

それが、愛着というものである。


セツナが顔を上げる。



「――ていうか、誰? この少年?」



床に手と膝をついたまま、ハルに聞く。

彼の疑問には、少年が答える。



「――フッ。よくぞ問うた人間。

 名乗ってやろう、我が真名(まな)を。」



大仰な身振り手振りに、大層な口上。

3人は、黙って聞いている。



「我の名は、漆黒のイーヴィル!

 この世、全ての悪にして、絶対の闇!」


「「「‥‥‥‥。」」」



†漆黒のイーヴィル†

全ての悪オール・オブ・ダークネス

絶対の闇シャドウ・モア・シャドウ


‥‥‥‥。






†漆黒のイーヴィル†






「と、いうわけで――。

 この子、私のCE、グレイドラグーン。」



ハルが、少年の紹介を手短にする。

漆黒のイーヴィルこと、グレイドラグーンは、決めポーズをしたまま固まっている。



「よろしく、グレイくん。」



セツナの挨拶に、グレイは不満げだ。



「‥‥おい人間、聞いていただろう?

 我の名は、†漆黒のイーヴィル†。

 グレイドラグーンという名は、仮初の名に過ぎぬ。」


「じゃあ、†漆黒のイーヴィル†。

 お言葉ですが、真名はみだりに名乗らぬ方がよろしいかと。」


「‥‥え? そうなの?」


「うん。そうなの。

 自分の力を封印するために、真名を縛っているとかの設定があれば、なお良し。」


「えぇ! なにそれ! カッコイイ!!」



意外と素直な、人型グレイドラグーン。

そして、人の影響を受けやすい、グレイドラグーン。


自己紹介、テイク2。



「――ククク。我の名は、グレイドラグーン。

 物質界(アモルファス)では、そう名乗っている。


 だが、我に仇名すというのなら、我の真の名(イデア)を――。

 黒よりも深き、終わりの闇を知ることになるだろう!」


「おお~~。」



パチパチパチと、拍手をするセツナ。


ハルは、少し困った顔。

ライザは呆れて、顔を横に振っている。



人型グレイドラグーン。

その身に厄災と(カルマ)を宿す少年。


背丈は、中学生くらいの高さ。

まだ成長期がきていない、同年代の平均からすると小柄な部類。


女性が羨むほどに艶やかな黒髪に、縦に長い瞳孔を持つ黄色い瞳。

女性の嫉妬を買いそうな、白くきめ細やかな肌。


剣のイラストがプリントされた黒いTシャツに、黒いジーンズ。


手の爪は黒く、腰にはベルトと一緒にシルバーアクセサリーを巻いている。

シルバーはベルトのように、ぐるりと腰を一周し、彼の背後で尻尾のように垂れている。



‥‥なぜか、ライザからの当たりが強い。

姉に勝てる弟など、いないのだ。



セツナとライザ。

ハルとグレイ。


これで、今回の役者は揃った。


一行はテーブルを囲み、座る。

グレイがセツナの横に座ろうとして、ライザが威嚇した。


4人掛けのソファに、セツナとライザが座る。


テーブルを挟んで向かい側。

同じソファを、模様替え機能で設置。

そこに、ハルとグレイが座った。



ライザ、セツナ。

ハル、グレイ。



このような席割り。

クソガキのグレイが、さっそくハルに迷惑を掛け始める。



「おい眷属、喉が渇いた。ジュースを所望する。」

「はぁ?」



眉間にシワを寄せるハル。


セツナはインベントリから、2リットル入りのコーラを取り出す。

コップも取り出して、コーラを注ぎ、渡す。



「はいどうぞ、グレイ。」


「ありがとうございます! セツナさん!

 ――眷属、お前にはもったいない兄だな。」


「こいつ‥‥!」



手慣れているセツナと、眷属呼びにご立腹のハル。

セツナには、さん付けなのに、この差は一体何なのか?


右手がホルスターに伸びようとしているライザにも、セツナはコーラを渡す。



「グレイ。あんまり、ハルを困らせるんじゃない。」



ハルと自分の分も用意しながら、セツナはグレイを嗜める。

ハルの前に、コーラが置かれる。



「あんまり困らせると、怖いからね。」


「‥‥‥‥は?」



ハルは眉間のシワが濃くなる。

セツナは身を乗り出し、みんなに聞こえる声で、ひそひそ話。



「ああ見えてね、うちの妹、リンゴを素手で握りつぶすからね?」


「ぶぅ!?」



突然の暴露に、吹き出してしまうハル。

若気の至りを、容赦なく白日の下に晒される。



「しかも、右だけじゃなくて、左でもいける。」


「ちょっと――!」



リンゴを素手で潰すのに必要な握力は、だいたい80kg。

ちなみに、()()()()の平均握力が、45kgである。


()()()()の、約2倍の握力を持つストロングガール。

それがハル。


純粋な握力なら、現実世界のセツナを上回る。


グレイが、ハルの横から拳一個分だけ離れた。

ライザも、正面に座るハルから離れるように、ソファへ腰深く座り直す。


彼らにも、現実世界の一般常識がインプットされているようだ。


ストロングな一面を暴露されたハルは、弁明をする。

自分の、繊細な乙女心を守ろうとする。



「ちが――! あれは違うじゃん!

 お酒の場で、酔った勢いだったじゃん!」


「あの日本酒、美味しかったよね。

 ()()()()に並々注いで飲んでたもんね。」


「「えぇ‥‥。」」



墓穴だった。

思いっきり、自分で墓穴を掘った。



「ちがう、()()()

 ねえ、お願い! 話を聞いて!」



‥‥‥‥。

時は年末、セツナとハルが、セツナのマンションで宅飲みをしていたところまで遡る。


美味しいお酒を飲んでテンションの上がったハル。

「今ならいけそうな気がする」と、冷蔵庫からリンゴを取り出す。



――そして、彼女は弾けた。

――リンゴも、弾けた。



念のため、ハルの名誉のために補足をしておく。


彼女が握りつぶしたリンゴの品種は、王林(おうりん)

青い果皮を持つ、果肉の柔らかい品種だった。


これが、蜜リンゴとして知られるサンフジのような固い品種であれば、結果は違った。

‥‥かも知れない。


まあ、王林だろうがサンフジだろうが、ジョナゴールドだろうが――。

一般男性には、とても握りつぶせない。


その事実は変わらない。


セツナは、コップに入ったコーラを飲み干す。

甘いパチパチシュワシュワが、口の中に広がる



「よし! 親睦も深まったし、行こうか!」


「「ええ。(はい!)」」


「あれ? 待って? 私、からかわれただけなんだけど!?」



セツナが飛行船の出入り口を開く。

目の前に青空が広がり、常春の風が手招きをする。


飛行船の彼方(かなた)下、結晶に覆われた街が広がっている。



「あのデカい結晶を壊せば、全部解決するでしょ?」


「――ククク。我の真の姿を取り戻すとしよう。」


「あたしは、まだこのままでも良いけど?」


「‥‥あの? みんな? 聞いてる?」



4人は、大空へ飛び立つ。

空を下り、結晶の街へ。


青いオルギンがもたらした、異界へと赴く。


空を切り、風を切り、地上が近づく。

うっすら遠目に、巨岩が見えてくる。


あれを破壊すれば、全部、元通り。


異界化は止まり、結晶化の病を患う人々も元通り。


そのために、人の姿を得た武器たちと協力し、任務に当たる。

今回の仕事は、つまりそういうことだ。


地上が迫り、巨岩に近づき、セツナとハルは――。






壁に激突した。


結晶の街を覆うように、ドーム状の結界が張られている。

2人は、それに激突した。



「‥‥あっれぇ~?」


「‥‥何なの~、もぉ!?」



グレイは、内なる漆黒の囁きに従い、激突を回避。

背中から黒い竜の翼を広げ、空を飛ぶ。


ライザは、グレイの足に縄を投げた。

投げ縄が足首を掴み、グレイにぶら下がる。



「く‥‥!? おい、我に掴まるな!

 重いぞ、この巨大女!」


「あぁ!? なんだと、このクソガキ‥‥!」



「牛女!」

「チビ!」


「猛牛!」

「もやし!」



結界に激突した衝撃で、身体の芯から震わせるセツナとハル。

口喧嘩をする、ライザとグレイ。



「あのぅ~、お二人さん。

 良ければ、助けてくれない?

 オレたちのこと。」



ぼそり呟いて、セツナとハルの姿は消えた。

遅れて、ライザとグレイの姿も消える。


4人は、街の入り口にテレポートさせられた。


ショートカット厳禁!


まるで足並み揃わない、4人のチーム。

デコボコカルテットの冒険が、いま始まる!

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