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Magic & Cyberpunk -マジック&サイバーパンク-  作者: タナカ アオヒト
8.5章_ワン・マン・アーミー!

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SS14.01_異界化する街

もしも――。



もしも私が、天の衣をもっていたのなら。


黄金と星屑の光で織った、

青く薄墨の色をした、ほのかに暗い衣。


そんな、薄明かりの衣があったなら、

あなたの足元に広げるのに。


そっと、あなたに足元に、灯りを。


しかし、貧しい私には、夢しか無かったのです。

暗い夜。私は、夢を見るしかなかった。


だから、あなたの足下に、私の夢を。



――そっと踏んでほしい。



たったひとつだけ。

私の大切な夢だから‥‥。





アンドロイドの犯罪者に、銃口が突き付けられる。


巨悪サウザントに属する、チューズデイ。

彼は、詩を読んでいた。


荒れた教会で、詩を。


革手袋をした手で文字を支え、フェルトハットの奥に見える瞳で詩を読む。


銃口を向けられてやっと、詩集から目を離す。

眼前の、金髪碧眼の女性へ、顔を上げる。


人間の女性に、ひとつ聞いてみる。

先達の知見を。



「心を持つこと。

 それが、罪を生むとは思わんかね?」



チューズデイの問いに、女性は指先で答えた。


拳銃の引き金を引く。

青い魔法の矢が銃から放たれ、アンドロイドの眉間を撃ち抜いた。


長椅子の背もたれを破壊して、チューズデイが活動を停止する。


彼が倒れるのに遅れて、詩集が床に落ちる。

背表紙から落ちて、床を叩く音が、目を引くほどに自己主張した。


金髪の女性――、ハルは、落ちた本を拾う。

拳銃をしまい、装丁の埃を払う。


本の、栞がされているページを開いた。




Aedh Wishes for the Cloths of Heaven.


Had I the heavens’ embroidered cloths,

Enwrought with golden and silver light,

The blue and the dim and the dark cloths

Of night and light and the half light,

I would spread the cloths under your feet:

But I, being poor, have only my dreams;

I have spread my dreams under your feet;

Tread softly because you tread on my dreams.





チューズデイ、彼が読んでいたのは、イエーツの詩だった。

イエーツの「彼は天の衣を望む」という詩。


ハルの視界に、詩の訳文が表示される。


英文を読むのには苦労しないハルであっても、訳文の存在は有難い。

詩のような文学作品の文章は、読むのではなく、感じることが求められる。


感受性を発揮するのであれば、やはり日本語の方がやりやすい。

使えるのと、使いこなすのとでは話が違ってくる。



パタンと、空調子(からちょうし)な音が、背の高い天井に反響する。



この詩を、ハルは知っている。

彼女に縁があるというか、彼女のアバターに関係する詩。


ハルのアバターは、レトロゲームに登場するキャラクター、ノエル = ヴァレンタインをイメージして作られている。


この詩は、ノエルに関わる詩。




そっと踏んでほしい。

私の大切な夢だから。





ここのフレーズが、妙に頭に残る。


詩集をインベントリにしまう。

ブーツが床を鳴らしながら、外に向かっていく。


青い日差しが差す、屋外へと出た。


教会の周囲には、無数‥‥と呼ぶには少々多い、機械の残骸。


掃いて集めれば、スクラップヤードができるほどの残骸が、一面に広がっている。

全部、ハルがそうした。



セントラルでの冒険。

表舞台に姿を現したサウザントと一戦を交え、結果、セントラルには異界が広がった。


サウザントにより誘い出された赤龍は、夢戻りのエージェントに討たれた。

討たれた結果、白龍となって甦った。


白龍は、破壊の赤龍と異なり、創造の力を持っていた。


創造の力は、セントラル南西の海域に、森を創った。

海洋樹林は、地球の生物が生きていけぬ環境となった。


白龍のもたらした創造。

世界が塗り替えられる現象を、セントラルでは異界化と呼んでいる。


地球が、魔法界の(ことわり)、あるいはそれに準じる理に浸食される現象。

それが異界化。


異界化は、海洋樹林だけに留まらなかった。


龍の放った青いオルギンは、セントラル本土にも直撃した。

複数、少なくない量の青い星が降り注いだ。


ハルは現在、セントラル西部に降り注いだオルギンの調査をしている。


セントラル西部、都市部(センター)のほど近く、そこに創造の厄災が落ちた。


そこでは、魔力の結晶化が起こっていた。

教会を見上げれば、壁や屋根の至るところに、透き通った水晶が生えている。


ハルがスクラップに変えた機械たちにも、小さな結晶が生え始めている。


この場所では、生物・非生物を問わず、結晶に食われる。

放っておけば、この街は結晶によって死ぬ。


唯一、龍の力を持つ、夢戻りたちだけは、異界化の影響を受けない。

白龍のもたらす創造の厄災を、身体に取り込んだ龍の力で相殺しているのだ。


結晶化の影響を受けた人々は、病院に運ばれて隔離されている。


科学者のソフィアが言うには、結晶化の進行を遅らせることは可能らしい。

しかし、異界化の根源を叩かぬ限り、治癒は難しいという。



ハルは、進行する異界化を食い止めるために、この地へ赴いた。



オペレーターが言うには、異界化には「落とし子」が付き物らしい。

異界化の核となる、有り体に言えばボスのような存在だ。


その落とし子を倒せば、異界化は収束に向かう‥‥らしい。



とは言え、落とし子の捜索は難航中。

異界では、計器での測定が満足にできない。


辺り一帯に特殊な魔力が充満していて、落とし子の反応を隠している。


挙句の果てには、サウザントまでちょっかいを掛けてきた。

死んでも死なない機械兵をけしかけて、調査の邪魔をしてくる始末。


猫の手も借りたいほど、CCCはてんてこ舞いである。



胸いっぱいに息を吸い込んで、吐き出す。

調査を再開しようと歩き出して、止まる。


‥‥ブーツの靴底。

僅かに感じる。


地面が、揺れている。


揺れが、大きくなる。

背を向けた教会が、大きな音を立てる。


建物の土台から、建物の中心に向かって、教会が崩れ去った。


破片から身を守るように、銃剣を召喚し地面に突き刺す。

粉塵が目に入らぬよう、顔を腕で覆う。


粉塵が落ち着き、視界が開けてくる。


青い日差しが、教会の土地から高くそびえた、巨大な水晶を照らす。


見上げる水晶は、太陽の光を反射して眩しい。

粉塵がまだ少し舞っているというのに、目がくらむ。


透き通った水晶から、のっぺりと影が伸び、ハルを薄暗がりで包む。


水晶の傍から、地面が薄く凍っていく。

地面が水晶の柱に覆われて、街が侵蝕されていく。


広がる氷から逃げるように、ハルは後ろに下がる。

水晶を見上げ、地面を観察し、視線を上下に振りながら。


‥‥‥‥。

氷が、ハルに襲い掛かった。


水晶の侵蝕が加速する。

意思を持つかのように、ハルに向かって伸び始める。


靴で踏める程度だった水晶の侵蝕。

それは瞬く間に、ハルを易々貫けるほどの高さまで伸び、迫り来る。


水晶の巨岩に背を向ける。

背を向けて、走り出す。


彼女の後を、細く鋭い水晶が追う。


巨岩は、太陽を吸っている。

太陽の力を体に集め、より眩く輝く。


そして、体に集めた太陽を結晶化し――、撃ちだす。


巨岩から、結晶の閃光が放たれた。

小指ほどの細さまで収縮させた太陽光から、結晶が生える。


光が、ハルに向かって伸びていく。


光速を躱すなど、人間には不可能。

しかし、攻撃の直前に発生した、魔力の起こりによって、かろうじて直撃だけは免れる。


太陽光が、ハルの左腕に当たった。


ハルの二の腕から、結晶が生える。

体内から、皮膚を裂くように。


伸びた結晶が、頬を貫く。

胸を貫通し、肺に穴を開ける。


足が止まり、足元から針の(むしろ)にされる。


地面を凍てつかせる水晶に追いつかれて、足元から何本も身体を串刺しにされた。



「こん‥‥の――!!」



現実世界ならば、確実に死んでいるであろう重症。

電脳の身体は、問題なく動く。


右手で水晶の槍を破壊する。


巨岩から放たれる太陽光を、テレポートで回避。

二の腕から生えた結晶を、引き抜いて取り除く。


両手の人差し指と中指を立てて、両手を合わせる。


ウェポンシフト。

妖精、ジャックオーランタンを召喚。



『ハッピーハロウィン!

 それと――、あけおめ~~~☆』



ジャックオーランタンを蹴り飛ばす。

大きさ30cmくらいの妖精が、空に向かって飛んで行く。



『ことよろ~~~☆』



ハルは地面を蹴る。

カボチャを追いかけるように、跳躍。


足元で水晶のつららが生えて、それを太陽光の水晶が破壊する。


インベントリから、スマートデバイスを取り出す。

側面のボタンを押す。



『センチュリオン、オーバードライブ。』



ハルはカボチャの頭を踏んづける。

踏んづけて、さらに跳躍。



カボチャは、太陽光の餌食となる。



『うっひょ~、キラキラ~~☆ 目立ってるぅ~↑↑』



水晶でカチコチにされても、気にしていない様子のジャックオーランタン。


空には、魔法陣が描かれている。

黒い稲妻が走り、魔法陣に開いた穴から、咆哮と黒雲が落ちる。



「来なさい、グレイドラグーン!」



三悪魔CE、グレイドラグーンがフォール。


ハルの呼びかけに応え、厄災の幼体が吠える。

そして、ハルの呼びかけを無視し、彼女に背を向ける。


グレイドラグーンは、闘争の権化。

パイロットの言うことなど、聞きやしない。


‥‥しかし、ハルはそれも織り込み済み。


空中ジャンプをひとつして、そこからスキルを発動。

ホルスターに触れ、双銃を引き抜き ≪リボルビングスピン≫ 。


地面へ頭を向け、回転しながらのフルオート射撃。


回転と射撃の力で、身体が上に上昇する。


≪リボルビングスピン≫ を、疑似的な空中ジャンプとして利用。

頭を地面に向けたまま、マジックワイヤーを射出。


ワイヤーの先が、グレイドラグーンの尻尾に刺さる。


地上から跳んで、空中ジャンプ。

ジャックオーランタンを踏み台に、ジャンプ&空中ジャンプ。


そこからさらに、 ≪リボルビングスピン≫ で高度を確保。

そこからのマジックワイヤー。


これにより、命令を無視するグレイドラグーンを捕まえる。

フォール後、地上に足を付けずに敵の方へ向かってしまう戦闘狂の、尻尾を掴む。


まったく、手の掛かるCEである。

だが、そこが面白く、可愛くもある。


‥‥ダメ男に引っかかってしまいそうな性格の、ハルである。


そして、ダメ男とは、いっつも予想の下を行く。


グレイドラグーンが、尻尾を動かす。

翼を広げて、巨岩に向かいながら、大きく、尻尾を、後ろに。


邪魔な、口うるさいパイロットを、捨てようとしている。



「――!? ちょっと――!」



グレイドラグーンが太陽光を躱し――、尻尾を大きく、前に振った。

尻尾にワイヤーで掴まっているハルも、尻尾と一緒に前へ行く。


前へ行って、ワイヤーが切れる。


ベクトル反転。

ワイヤーの巻き取る力が、吹っ飛ぶ力に変換されてしまう。


機械の目が、この上ないくらいニヤついている。

表情の変化こそないが、雰囲気で分かる。


邪魔くさい、口うるさい姉みたいなパイロットを排除できて、ご満悦のようだ。



「いぃ――!?」



ハルは、生身で経験したことのある、最高速度の記録を更新。

自分の身体が、自分の声を追い抜くという奇妙な経験をしながら、巨岩に激突した。


スキル発動 ≪ブレイズキック≫ 。

苦し紛れに発動させたスキルで、巨岩に向けて着地。


身体が、骨が、衝撃で振動する。


足の爪先から、頭のてっぺんまで。

ピアノの一番高い音と、一番低い音を混ぜたような不協和音が、骨と内臓を突き抜ける。



「くぅ~~――‥‥!」



両腕をギュッとすくめて、未体験の衝撃を噛みしめる。


まるで、女の子みたいなポーズをして、女の子みたいな声を出して。

甘くも美味しくもない、ただただ辛い(つらい)衝撃を噛みしめる。


グレイドラグーンは、自分のパイロットことなど露ほども気にせず、太陽光を固めた結晶をバリバリと食べている。


食欲旺盛な竜機を狙い、太陽光が放たれる。


食事の邪魔をされ、堪忍袋の緒が切れて、食事を中断。


両翼で、太陽光を受け止める。

‥‥翼は、鏡面のように輝く水晶で覆われている。


三悪魔の持つ不協和の力、ゼナス。

グレイドラグーンの持つ力は、捕食。


この生きているCEは、捕食によりエネルギーを取り込むことで、その力を我が物として扱える。


グレイドラグーンは、捕食した水晶の力により、太陽光を反射したのだ。


反射させた光は、そっくりそのまま、巨岩の方へ。


巨岩の――、女の子している、ハルの方へ。


テレポートで太陽光を避ける。

避けて、巨岩から足を離す。


反射された太陽光が作った、水晶の橋の上に着地。

この橋は、グレイドラグーンの方へと繋がっている。


AGを1本消費。

アサルトダッシュ。


水晶の上を、闘志で整地しながら猛進。

道に伸びた棘を、突進で砕きながら、ハルはグレイドラグーンの元へ。


速度の乗ったまま、跳躍。

スキル ≪ブレイザー≫ 。


拳に炎を纏い、拳骨を振り下ろす。


拳骨は竜機の脳天をカチ割る。

頭のてっぺんから、足の爪先まで、衝撃が流れる。


教育的指導。

グレイドラグーンを叩き落とす。


水晶の橋に着地。

パルクールスキルのウォールランで、橋の裏に回り込む。


回り込み、頭を地上へ向けて、燃える足で踏み切り、急降下。


ハルに対し殺気を向けるグレイドラグーンに、おしおきキックが炸裂する。


グレイドラグーンは高度を落とし、ハルは反動で宙を舞う。

2人のあいだを、太陽光が通り過ぎていく。


‥‥‥‥。

本来ならば、パイロットとCEが力を合わせ、2対1となるはずの盤面。


しかし、悪魔の幼体に、そんな道理など通用しない。


1対1対1。

それが、いまの状況。


ハルは、太陽光が架けた橋に着地。

自分とドラグーンを狙っていた光の橋に足をつける。


再びAGを消費して、アサルトダッシュ。



もう、あのボケナスには頼らん!

呼び出しておいてあれだが、頼らん!


巨岩だろうが何だろうが、生身で破壊してやる!!



巨岩に、やつあたり。

燃える鉄拳をお見舞い。


その下では、ドラグーンが水晶に覆われた拳を、巨岩に打ち付けている。


ドラグーンが、巨岩に爪を立てる。

岩の表面を削りながら、ハルの向けて加速。


ハルは、両手を組む。

ウェポンシフト、双銃剣を召喚。


刃渡り3メートルの、対CE試作型兵器で、グレイドラグーンを黙らせようとする。


ドラグーンは、爪を岩に深く食い込ませ、腕を振るう。

巨岩がめくれ、岩の塊がハルに向かって飛来する。


視界が、岩で覆われる。

敵を見失う。


ドラグーンは加速する。

自分が放った岩に追いつき、岩を巨岩に向けて叩きつける。


岩で視界を奪い、視界を奪った岩で、ハルをペシャンコにする攻撃。

生意気なCEとのケンカは、命がけ。


ハルは、岩をテレポートで避けていた。

グレイドラグーンの、下を取るように。


魔力の流れを読まれ、移動地点に尻尾が振るわれている。


ブレイブゲージを消費。

ブレイブアーマーを発動。


勇気が、身体に不退転の力を与える。


矛先のように砥がれている尻尾を、身体と体力で受け、その場に踏みとどまる。


‥‥ハルの反撃。

時間差で、ドラグーンの頭を銃剣が殴りつける。


ハルは、テレポートの前に、スキルを発動していた。


銃剣版 ≪飛燕衝≫ 。

二振りの銃剣を、大上段に振り下ろす攻撃。


テレポートにより、制御可能範囲から離れてしまう前に入力されていた命令。

銃剣がそれを履行、ハルに気を取られたグレイドラグーンを殴りつけた。


銃剣は、重力に従って、ハルの元へ。

ブレイブアーマーの不退転の力で、尻尾を掴んでいるハルの元へ。


スキル発動 ≪銃剣のブレイザー≫ 。


二振りの切っ先が、巨岩に突き刺さる。

岩の表面をカチ割り、炎が噴き上がる。


炎が岩を穿ち、噴き上がった炎がグレイドラグーンを炙る。


ドラグーンの出力が落ちる。

体が重力で落下するも、それを不退転のハルが尻尾を掴んでいることで、落ちることを許さない。


さっきの攻撃を、もう一度。


スキル ≪銃剣のブレイザー≫ 。

巨岩とドラグーンに、同時攻撃。


巨岩にヒビが入る。

岩の足元から、先端にかけて、全体に。


表面が眩く輝く。

太陽光を全体に薄く放射。


体に張り付いて好き勝手している、ハルとドラグーンを振り払う。


パイロットとCE、仲良く光の風で吹き飛ばされる。


1人と1機を、地面に広がるつららがお出迎え。

ハルは主力火器の、二点バースト式ショットガンで、つららを割る。


ドラグーンに関しては、そもそもつららが鋼の体を通らない。


巨岩は、なおも輝く。


光を増す。

辺りが、白と黒の世界になっていく。


光と影、それ以外の光が認識できぬほどに、明るくなる。


光が、ハルの体力を奪う。

ポーションを飲みながら、光の当たらぬ、影に隠れる。


地面に寝ている、グレイドラグーンの後ろ。

光が収まるのを待つ。



‥‥‥‥。

‥‥。



そうやっていると、ハルの隠れた影が、小さくなっていく。


光が差す強さ、角度は変わらぬのに。

影は、どんどん小さくなっていく。


小さくなっているのだ。

グレイドラグーンの体が。



「うそ!? どうなって――!?」



いっそう眩く、巨岩が輝いた。


視界は、ついに真っ白に。

目を閉じていても、真っ白だ。


だから、足元に出現した魔法陣にも気付けない。

足元の、強制転移の魔法陣に、気付けない。



‥‥‥‥。

光が、嘘のように静まり返る。


そこに、ハルの姿は無かった。

グレイドラグーンの姿も、無かった。





薄暗いトンネルの中を落ちていく。

強制転移によって、別の場所へと移動させられる。


長く短いトンネルを、抜けたその先は――。



「ちょっと! あたし以外を使うなんて!

 どういう要件よ!」


「うっさいなぁ!?

 オレの勝手だろ、そんなの!」


「いいから! それを置きなさい!

 よこしなさ、いぃ!」


「いぃ!? い・や・だ!」



長いトンネルを抜けた先は、空の上だった。



「‥‥‥‥うべっ!?!?」



床に、腹から着地する。


セーフハウス「ブルーホエール」。

空飛ぶ船は、セツナのセーフハウス。


ハルが顔を上げると、そこには兄と――。

兄に組み付く、金髪碧眼の見知らぬ女性の姿があった。



期間限定イベント「ワン・マン・アーミー」、開始。

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