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Magic & Cyberpunk -マジック&サイバーパンク-  作者: タナカ アオヒト
8章_堕落の弾丸

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8.??_月の神殿

悪魔が地球に目覚め、その後――。

常夜の都、女神の神殿。



「レイ、お姉ちゃんは怒っています。

 もう、ぷんぷんです。」



魔法の世界、フロド大陸には、こんな伝承がある。


いわく、この世の贅と享楽がすべて集まる、夢の都があると。

月が見下ろす夜の都、女神が創った都があると。


常夜の都は、月の女神の膝元。

女神の神殿は、月の女神の居城。


神殿というよりは、城。

城というよりは、要塞や砦。


レイは、セツナが悪魔に目覚めたあと、長女のアリアンから呼び出しを受けていた。


悪魔が目覚めてから、一夜明けて――。

レイは、女神の神殿の中心に位置する、中央神殿へ呼び出された。


ここは、月の女神が集う、姉妹の共有スペース。

中央を囲むように、神殿には7つの塔が建っている。


塔の中心に建っている中央神殿には、様々な用途の部屋が用意されている。


人間に天啓を授けるための、天啓の間。

人々の願いに耳を傾けるための、成就の間。

人々の祈りを受け取るための、祈祷の間。


中央神殿、あるいは中央砦とも呼ばれる場所は、七曜の女神が集う場所。

それだけでなく、女神が女神としての役割を果たす場所でもある。


さて、アリアンとレイ、2人が現在いる場所は、中央神殿にある銀冠の間。

そこは、銀月の女神を長とした玉座。


中央神殿の最も高い場所にある玉座は、四方に星空が広がっている。


足元には、星の雫で満たされた泉が広がっている。

天井を支えるための柱には、霊銀(ミスリル)鉱の巨岩が使用されている。


柱は、いずれも天井に届いてはいない。

が、しかし、天井は崩れることなく、柱に支えられている。


泉が満ち、巨岩が並び、夜空が広がる玉座。

それが、銀冠の間。


星屑を集めて高くした玉座の最奥から、アリアンはレイを叱っている。

触れても濡れない泉に、レイは正座をさせられている。


その様子を、他の姉妹が見守っている。


次女、灼銀のディーナ。

四女、樫の木のウィドル。


五女、満月のフィナン。

六女、輝けるシュミーシカ。


いずれも、自身を祀るための巨岩柱の前で、ことの顛末を見守っている。



この場に居ない七曜は、2人。


三女、暗い月のリリウム。

七女、陽月のグラニー。


グラニーは、魔法界での役目があるため、欠席。

リリウムは、そんな彼女の労いと、お喋りの相手をするために、欠席。


‥‥新月と暗い月が一緒にいたら、ノータイムで殺し合いが始まる。

そのため、リリウムはアレコレ言い訳をして、ここに来ていない。


いても、話しが拗れるだけだ。


この場にいるのは、五曜六柱の女神。

五曜の女神からの視線に晒されているレイは、いつもに増して小さく見える。


女神を束ねるアリアンは、星屑の上で仁王立ち。

頬っぺたを膨らませて、精一杯怒っているアピールをしている。



「神とは、気まぐれな存在です。

 

 気まぐれに与え、気まぐれに奪う。

 それが、私たちの在り方です。


 ですから、レイが()()()() (地球人のこと)らと接触することを、否定はしません。


 神の試練を与えたいのならば、それも良いでしょう。


 しかし――、度が過ぎれば、私たちも看過できません。

 あの機械の竜は、やり過ぎです。


 いまの望月(もちづき)の大地(※)――。

 それと銀月の大地に無い物を使うのは、さすがのお姉ちゃんも許せません。」


※望月:ぼうげつとも読む。



アリアンの言葉を、レイは黙って聞いている。

彼女が言っていることは、女神のあいだでは、暗黙の了解。


その了解を破ったのはレイであり、弁明の余地も無い。


ただただ、目覚めた悪魔が愛しくて。

彼の力を試したくなった。


試したくなったから、この世界には存在しないCEを創造した。

何度目かの地球で生まれた兵器を創造し、戦わせたのだ。



新月も、銀月の前では形無し。

人間の前ではあれだけ偉そうなレイも、アリアンの言葉を小さくなって聞いている。



星屑の上で、仁王立ちしているアリアンは、腕組みを解く。

玉座を左右に歩きながら、説教を続ける。



「まったく‥‥、気を付けてくださいね!

 可愛い可愛い妹にお説教しないといけない、お姉ちゃんの気持ちにもなってください。」


「‥‥ごめんなさい。アリアン姉さん。」


「分かれば良いのです。」



レイは素直に謝り、アリアンは謝罪を受け入れる。


新月の試練で被害を被った(こうむった)のは人間なのだが‥‥、レイが人間に頭を下げることは決してない。


人の母であるアリアンが彼女を許した。

ゆえに、レイの罪は許される。



――人間が、神を裁く法を持ち得るのだろうか?

仮に持ち得たとして、人間が神を裁くことができるであろうか?



出来ぬであろう。

だから、新月は銀月によって裁かれる。


謝罪を受け入れ、許したアリアン。

彼女は、玉座から姿を消す。


レイの目の前に現れる。



「さて――。では、レイに罰を与えます。」



罪を許しはしたが、償いをさせないとは言っていない。


罪には罰。

罰は、人間と神を縛る法となる。



そして、法とは対等な関係でこそ、成立する。



銀月のアリアンが、新月のレイに罰を与える、

罰を、下す。



「新月のレイ。あなたを、半月(はんつき)の禁固に処します。」


「‥‥銀月の命じるままに。」



アリアンが膝を付く。

レイの肩に、手を置く。


成り行きを見守っていた灼銀が動く。

明るい茶髪を持つ女性が、隣の柱の前に立つ、樫の木目配せをする。


灼銀のディーナのアイコンタクトに、右目を髪の毛で隠した黒髪の女性が反応する。

樫の木のウィドルが、両手で杖を握る。


満月のフィナンは、2人の行動が理解できず、キョロキョロしている。


フィナンの隣に立つ、輝けるシュミーシカは、片手を額に当てて首を横に振る。

青く輝く銀髪が、左右に揺れる。



そんな妹の様子に、アリアンは気付かない。

‥‥もう、彼女の脳内では、口にするのも憚られる(はばかられる)欲望と妄想が暴走している。



「レイを禁固する場所。

 それは‥‥。」


「‥‥‥‥それは?」


「銀月の塔でーす! ひゃっほぉぉぉぉぉい!!

 罰として、半月のあいだ、お姉ちゃんと片時も肌身離れず一緒で――――。」



――炎の拳骨が、銀月の後頭部を殴りつけた。



「ぶしゅぅぅぅぅぅ!?!?!?」



足元の泉に、アリアンの頭が、首まで埋まる。

銀月に代わり、灼銀と樫の木が、罰を執行する。



「ウィドル!」

「は、はい! ディー姉さん。」



ウィドルが杖を掲げる。

虚空から銀色の鎖が現れて、罪人を縛り付ける。


レイは抵抗することも無く、四方から伸びる鎖に拘束された。


彼女の背後から、申し訳なさそうなウィドルの声が聞こえる。



「ご、ごめんね。レイちゃん。」



新月の姉に向け、魔法を発動させる。

鎖で縛られたレイは、立方体の結界に閉じ込められた。


月の檻と呼ばれる、魔力と神の権能を制限する結界。


銀月の大地では、魔力を封じる完全な術は確立されていない。

大規模で繊細な術式により、魔力の使用を一定数制限できこそするが、強者への効果は薄い。


しかし、人間の限界は、女神に適応されない。

魔法の扱いに長けたウィドルの結界は、例え姉妹であっても、簡単には破れない。


アリアンが、泉から頭を引っこ抜く。



「あぁーーー!?!?!?」



結界に閉じ込められたレイを見て、悲鳴を上げる。

結界の傍に寄り、頬を檻につける。



「そんな! そんな!

 ダメです! 半月もレイに会えないなんて! 酷過ぎます!!」



結界の中で、大人しくしているレイ。

結界を叩き、びえびえ喚くアリアン。


往生際の悪い姉に、もう1発くれてやろうかと考えるディーナ。

‥‥視界の奥で、シュミーシカが首を振って静止させる。


やっと事態を理解したフィナンが、アリアンを結界から引き剥がす。



「ほら、アリアン姉ちゃん。離れて。」



姉妹屈指の武闘派である満月が、銀月を羽交い絞めにして、結界の安定を確保する。



「レイ! レイィィィィィィ!!」



まるで、今生の別れのよう。

両手を、縋るように前に出す。


ウィドルは、混沌とした状況に右往左往しながら――、レイを地下深くへと送った。


結界に閉じ込め、月の光が届かぬ、神殿の底へ。

新月を半月のあいだ、封印したのだ。



全部が終わり、ディーネは溜め息。

フィナンが、羽交い絞めにしていたアリアンを解放する。


この場では末妹であるシュミーシカは、姉たちの元へと歩く。



「アリアン姉さん、あまり妹を困らせないの。

 ウィドル姉さんの顔が、罪悪感で捻じ曲がってるから。」


「ぴぃ!!」



肩をビックリさせるウィドル。

彼女こそが、レイに罰を執行した張本人なのだ。


仲の良い姉妹。

一番しんどいのは、仲の良い姉妹を、自分の手で封印してしまったウィドルなのだ。


アリアンの肩から力が抜ける。

腕が垂れて、頭が冷える。



「そうでした‥‥。すいませんウィドル。

 それとディーナも。

 2人とも、ありがとうございます。」



ウィドルは、アリアンの謝罪と感謝に、両手をあわあわさせている。



「い、いえ全然。

 これくらい、大したこと無いよ。

 それに‥‥、アリアン姉さんが()()()()()()、いつもの事だから。」


「うぅ、私は妹に恵まれた果報者です。

 ‥‥ん? ‥‥あれ? あれあれ?」



姉妹の中では、最も大人しい性格のウィドル。

大人しく、地味な服装と性格の下に、鋭いナイフを隠し持っている。


ディーナたちは、ウィドルがアリアンをばっさり切り捨てた発言に対し、必死に笑いをこらえている。


誰も、アリアンと顔を合わせようとしない。



「ちょっと!? ディーナ!?

 フィナン!? ミーシャ (シュミーシカの愛称)!?」



アリアンは、ディーナとフィナンの顔を下から覗きこもうと、ウロチョロする。


ついに、フィナンが笑いを堪えれなくなり、吹き出した。

大声で笑いながら、アリアンの背中をバンバンと叩いている。



「ごふっ――!? 強ッ!?」



‥‥‥‥。

‥‥。



月の女神は、七曜の女神。


七曜八柱。

それが、いまの月の女神。


姉妹仲は良好。

‥‥暗い月と、新月を除く。


女神は気まぐれに与え、気まぐれに奪っていく。


時に、人々に天啓を与え。

時に、人々の生活に紛れ。


女神は夜空にあり、またすぐ近くにある。


これは、悠久を生きる女神たちの一幕。

永きを生きる女神たちの、たったひと時の出来事。


神話にも語られず、伝承にも残らない。

現代を生きる女神の日常。

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