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Magic & Cyberpunk -マジック&サイバーパンク-  作者: タナカ アオヒト
0章_終わった世界

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0.1_チュートリアル_A

2XXX年、人類は飛躍的な技術進歩の中にあった。


新エネルギー「ネクスト」。


理論上無限の保有量を持つエネルギーにより、過去には机上の空論であった技術が、次々と実現していった。

とくに、情報科学の分野はネクストの恩恵が著しく、加速度的に研究と開発が進められた。


完全な人工知能。

かつて、アラン・チューリングが提起したように、人間のように思考し、人間のように意思決定をするAI。


意識の電脳化。

コンピューターが人間から学びを得るようにに、人間もコンピューターから学びを得た。

そして、人間の意識を、0と1の電気信号で表記できるに至った。


完全な人工知能と、意識の電脳化。

これらは本来ならば、実現にも運用にも膨大なエネルギーが必要になる。


それを一足飛びに解決したのが、「ネクスト」である。

VRゲームはまさに、その技術の結晶なのだ。



「セツナさん、ターゲットは屋上に逃げました。追ってください。」


――オペレーターから通信が入る。


空まで伸びる摩天楼が並ぶ街、センター。

科学と魔法によって発展した、セントラルの一大都市。


その治安を守る、エージェント。


セツナ、そう呼ばれた人物(プレイヤー)は、オペレーターの指示に、目的地に向かうことで答える。


オペレーターの指示と同時に、視界にナビゲート用の動線が表示された。

現在、エージェントのセツナがいる場所は、センターが誇る摩天楼の一角。


地上3,000メートルを超える、超大型・超高度ビルの最上階。


そこには、この摩天楼の主がつい先ほどまでいた。

セツナは、足元に転がっている黒服を着たボディガードや、護衛用ロボットなどを踏まないように、視界に移るナビゲートに従う。


なぜ、黒服やロボットが床に転がっているのか?


その原因はセツナにある。

彼はエージェントで、その役割は、この街の治安を維持すること。


そして、そのために摩天楼の主に用がある。

彼には、違法兵器を裏に流していた嫌疑が掛かっている。


限りなく真っ黒に近い、黒い嫌疑だ。


なので、治安維持のための協力を求めるべくビルに乗り込んだら、ボディガードとロボットに阻まれた。

そのため、やむを得ず交戦し現在に至る。


‥‥やむを得ずなどと、体裁上はそう言っているが、彼もその上司も、事を穏便に済ませるつもりはなく――。


クソ野郎を相手に、アポイントを取るのも、玄関から入って出向くのも面倒だったので、強襲ポッドを使い、最上階の窓からお邪魔させてもらった。


搭乗者を目的地までロケットブースターで迅速かつ安全に運ぶ、強襲ポッド。

ポッドはキャッチコピー通り、搭乗者に傷ひとつ負わせず、ビルに大穴をぶち空けて目的地に到着した。


ビルの最上階は、社長室。


悪趣味な成り金の部屋を飾りつける調度品が、割れて壊れて、ボディガードたちと一緒に転がっている。

外は曇天だと言うのに、室内は金色がチカチカとして、目が疲れる。


そんな部屋を前に進みながら、手に持ったリボルバーを操作。

リロードをするために、リボルバーに収められているシリンダーを横に取り出す。


シリンダーを取り出し、イジェクトロッドを操作して、シリンダー内の薬莢を除去。

新しい弾を6発、装填する。


何千と繰り返した動作は、視線を銃に落とすことなく、手の感覚だけで操作を終える。


手の感覚だけでリボルバーを操って、手の感覚だけでタクティカルベルトからラピッドローダー(※)を取り出して、装填。


携帯性に優れた装填ツール。スピードローダーの1種。


通常のスピードローダーは円形をしており、携行時に嵩張る(かさばる)デメリットがある。

しかし、ラピットローダーは真っ直ぐな形をしており、使用時に円形に変形できるため、携行性に優れる。


ここは戦地。

愛銃と熱い視線を交わして、2人だけの世界に浸る訳にはいかない。


目は、索敵と警戒に使う。


セツナはナビゲートに従い、部屋の奥、赤土色の壁の前に着いた。

調度品の金色ピカピカを目立たせるための、渋い赤色をした壁。


贅の限りを尽くした、ピカピカの社長机と社長椅子の、奥にある壁。

ナビゲーションはここを指し、オペレーターはここに来るように指示を出していた。


「ホログラムです、解除します。」


オペレーターがそう告げると、赤土色の壁だった場所に、今度は黒い扉が現れる。

この黒い扉は、非常時の脱出口であるようだ。


横開きの扉を、手動で開ける。


本来は自動での開閉も可能だろうが、オペレーターがハッキングで干渉した影響で、手動で開ける必要があった。


扉は頑丈で、なおかつ重い。


社長室が鉄火場になるような人物の部屋である。

そのエスケープルートだから、扉も大層なほど丈夫で、重い。


用心深くあり、小心でもある。


指先を通じて、扉の硬質な重量が伝わってくる。

銃は右手に持ったまま、左手に力を込め、腰を落とし、扉を開く。


扉と格闘すること数秒、人ひとりがギリギリ通れるくらいの隙間が確保できる。


そのまま、扉に入ろうと――。

そうしたところで、違和感。


セツナの耳が、背後から物音を感じ取る。

服が擦れるような、ガサガサとした音が聞こえる。


咄嗟に横方向へと飛び、身を倒す。

身を倒すと同時に発砲音。扉に弾痕と火花が散る。


セツナは、倒れる際に身体を捻り、床に倒れながら後方へと身体の向きを変える。

身体が宙に浮いている間に索敵、敵の位置を把握。


社長机の挟んで10メートルほど先、拳銃を構えた黒服が立っていた。


床に伏せ、社長机から頭だけ出して応戦するも、射撃は外れる。

敵の銃口がこちらを向いたので、頭を引っ込めて隠れる。


セツナの身体と頭が社長机の裏に隠れ、互いの射線が切れる。


銃声は止み、緊張の静けさが、銃口に燻る硝煙に乗って充満する。


セツナは片耳を床に、反対の耳は上に。

射線も視線も切れた黒服が、歩いて移動しているような気配は無い。


セツナが伏せた近くには、座り心地が良さそうな椅子が、彼を見下ろしていた。


「‥‥‥‥。」


数秒にも満たない沈黙。

黒服は机に銃の照準を合わせたまま立っている。


黒服は反撃こそしたものの、無防備な状態。

彼を守る遮蔽物は何もない。


タイミングを見て、どこか遮蔽物に隠れたい。

そう考えて、セツナの出方を窺っていた瞬間――。


机の後ろにあった椅子が、物凄い勢いで横に滑った。


突然の物音と、椅子が横に滑るという予想外の出来事。

そして、銃撃戦のストレスがもたらす過度な緊張によって、反射的に視線と銃口が、誰も座っていない椅子へと向いてしまう。


黒服の意識が、椅子に釘付けになった一瞬、椅子とは反対の方向から、セツナの身体が遮蔽物から飛び出す。


椅子を蹴り飛ばした反動を使って、椅子とは反対側に床を滑るように移動。

このまま遮蔽物を飛び出して、射撃体勢。


事前に、敵の位置は脳内で補完している。

自分の飛び出す位置と、敵がいるであろう位置から逆算して、敵を視覚で捉える前に狙いを定めておいた。


敵の位置を目視で確認。

彼奴は、まだ視線が椅子に向かっている。


照準を微修正。


銃を構えて、敵に向けて右手の親指を指すように照準。

インスティンクト射撃(本能射撃)という、銃のサイトを覗きこまずに射撃する技法を使う。


先手の利、コンマ数秒の有利を最大限に活かし、仕留める。


黒服の顔が、こちらを向くと同時に発砲。

リボルバーのハンマーが落ちて、銀色の銃口から、 ”金色の弾丸” が放たれる。


それを、もう1発。

トリガーを引いたまま、シングルアクションリボルバーのハンマーを左手で叩いて起こす。


すると、リボルバーはハンマーが起きると同時に、2発目を吐き出す。

ファニングショット。カウボーイの早撃ち。


リボルバーから、雷のような発砲音が響いた。


雷の音が部屋中に乱反射して駆け巡り、強襲ポッドが割った窓から空へと抜け出して、部屋は静かになった。


セツナは、リボルバーのハンマーを起こしながら、自身も立ち上がる。

銃を構えてクリアリング。


机の向こうには、屋外を臨めるガラス張りの壁があって、そこから曇天の雲が社長室を覗き込んでいる。


――他の敵が動く気配、無し。


セツナは黒い扉を、もう少しだけ開いて、扉に背を向けたままそこを通って、社長室を後にした。



扉の向こうは、階段になっていた。


社長室の、趣味のよろしくない、いかにも成り金な調度品が並んでいた様子とは打って変わって、鉄骨と鉄板にサビ止めの塗料で塗っただけの、無機質な階段。


コンコンコンと、小気味よい音を立てて階段を上り切り、屋外へと通じる扉を蹴破って、ターゲットの前に登場する。


重い曇天の下、ポツリと人が立っていた。


あれが今回のターゲット。

彼を()()するのが、今回のミッション。


ターゲットは、空から逃げるつもりだったのだろうが、迎えの便はまだ到着していないらしい。

‥‥まあ、どれだけ待っても、来やしないのだが。


セツナが左手を前に出す。


すると、左手にホログラムが現れ、彼の属する組織のシンボルが浮かび上がる。

レトロな時代の、警察手帳に習ったやり方だ。


「CCC(中央法治機構)だ。

 ウールー=バスタード、貴方には違法魔導兵器の流通に加担した容疑が掛けられている。

 大人しくして貰いましょうか?」


CCC、セントラルを守る、治安維持組織の名。

そこに属するエージェントとして、プレイヤーはこの世界を体験する。


「うるさい! 中央の犬が、オレに口を聞くな!」


ターゲットとなっているのは、いかにも性根が悪そうな、中年太りの男だった。

運動不足が祟っているのか、額に汗を流しながら、肩を上下させている。


「‥‥‥‥。」


中年太りの男、その息を切らした遠吠えを、セツナは無言で聞いている。

無言で右手で愛銃のハンマーを起こし、引き金を引いた。


「ひぃぃ――!?」


男の腹を目掛けた銃弾は、怯える男の前で弾かれた。

対弾バリアが張られているようである。


銃から弾かれた弾丸は実弾だが、これなら安心だ。


‥‥どの道、セントラル人は腹に1発もらったくらいでは死にはしない。

身体中から脂汗が滲むくらい痛いだけだ。


それもこれも、地球に持ち込まれた、魔力と魔法の成せる所業。


「もう一度言うよ? 大人しくして貰おうか。」


セツナは眉ひとつ動かさず、ターゲットに投降を促す。

無言で発砲するという、公安の身分とは思えぬ凶行に、罪悪感を微塵も覚えていない。


銃が脅しとして機能するのは、セントラルでも共通。

先ほどの発砲は脅しであるし、脅しではない。


傍から見れば、どちらが危険人物なのか分かったものではない。


しかし、この街では、これくらいは挨拶みたいなものだ。


現に、こうしている間にも、地上のどこかから銃声や爆発音が響いて、地上3,000メートルあまりの屋上に、その騒乱が届いている。


摩天楼の混乱に乗じて、暴徒どもが暴れているのだ。


「クソッ! オレをコケにしたこと、後悔させてやるッ!!」


突如、屋上の床が光を発する。

セツナは、男に銃口を向けたまま、光を左手で遮蔽し、視界を確保。


地上3000メートル。

低い雲よりも背の高いビルにあって、光は乱反射して目の機能を奪って邪魔をする。


視界不良となった屋上には、男の高笑いが響いている。


光の中心から、幾何学模様の、魔法陣のような模様が広がる。

そして、魔法陣の中から巨大な物体が現れ、男はその物体に取り込まれていった。


「ハハハハハ、見ろ。これがオレの切り札、魔導ゴーレムだ!」


魔導ゴーレムは人型で、高さが3メートルほど。

眼前のそれは、「甲冑型」というタイプで、甲冑のように身に纏って使用するゴーレムだ。


人体感覚の延長でゴーレムを操作できるため、魔法の扱いに不慣れで、戦闘経験に乏しい者であっても扱いが容易なタイプである。

扱いが容易すぎて、簡単に犯罪に転用できてしまうため、この街の法では保有に規制がなされている。


科学の粋であるロボットとは異なる、岩のような表皮。

ロボットにありがちな配線なども見られず、頭部分のモノアイだけが、曇天の下に不気味な光を灯し、忌々しいエージェントを睥睨(へいげい)している。


セツナの耳元に、オペレーターの声が通信で届く。


「魔導ゴーレム。やはり、魔導兵器の取引がこの都市で――。」


この世界では、魔導兵器の所持には規制が掛けられている。

しかし、最近は規制と規格を破った魔導兵器の流通が増えてきており、法破りの触手は、このセントラル随所に及んでいる。


その調査として、エージェントでありプレイヤーである、セツナが送り込まれたのだ。


魔導ゴーレムがセツナに接近し、腕を振り下ろす。


「死ねい!」


大振りな一撃を、セツナは余裕を持って躱す。

期待せずに銃弾を撃ち込んでみるも、案の定、効果は無かった。


ゴーレムと向き合う。

中に乗っている男の、ニヤニヤした表情が、モノアイから伝わってくるようだ。


そこに、再び通信。


「セツナさん、直ちに魔導ゴーレムの無力化、及びターゲットの捕縛をお願いします。」

「了解!」


オペレーターに応答し、セツナは銃を腰のホルスターに戻す。

空いた右手で、ゴーレムの目を指差した。


「もう一度言う、三度目だ。大人しく投降しろ。」

「抜かせぇい!!」


ゴーレムが、巨体を活かし、腕を横薙ぎに払う。


セツナはその場から跳躍。

クルリと後方宙返りをしてから、元居た場所に着地する。


「‥‥大人しくしてくれていた方が、優等生ぶれて、嬉しかったのに。」


ゴーレムの拳が襲い掛かる。

バックステップで、リーチのギリギリで捌く。


「でも、抵抗してくれるのは――。」


ゴーレムの目が赤く輝く。


「――もっと嬉しい。」


ゴーレムの瞳から熱線。

足元を抉るように熱線を放ち、屋上の床を浅く溶解させる。


熱線の攻撃は空を切きった。

そこに、セツナの姿は無い。


まるで、そこに最初から居なかったかのように。

まるでそこから、瞬間移動したかのように。


テレポート。

セツナはゴーレムの懐、ゴーレムの目の前に現れる。


「――っ!? 小癪な!」


ゴーレムの目が光り、熱線攻撃のタメ動作に入る。


セツナはその場から動かずに、両手を組み合せる。

右手を下に、左手を上に。


右手を地に、左手を天にして、構える。

両手の間に力が流れ、やがて力が炎の形を取る。


「ファイヤーボール。」


セツナが唱え、両手をゴーレムの目に向けて突き出すと、彼の手元から火球が放たれる。

火球はゴーレムの目に命中し、熱線のエネルギーと混ざり爆発を起こす。


爆発で、その巨体は後方へとたたらを踏んだ。


セツナが追撃のために踏み込む。

足を踏みしめると、足を炎が包み、物理法則を無視した推進力を発生させる。


推進力が乗った跳躍。

宙を滑るように、重力など無いかのように、直線的な軌跡で突っ込んでいく。


「――ブレイズキック。」


炎を纏ったキックが、ゴーレムの胸に刺さる。

ゴーレムは態勢を崩し、倒れた。


セツナは、ゆっくりと地面に着地。

着地した後、右手に魔法陣が構築される。


魔法陣は、指先から肘にかけて彼の腕を包んで進み、その中から、金属質なガントレットが姿を現した。


――魔導拳士。

魔導ガントレットを駆使し、魔法と体術を組み合わせて戦う戦士。


それが、セツナの「クラス」であり、ファイティングスタイル。


彼は、余裕綽々といった様子で、ゴーレムが立ち上がるのを待っている。


言って聞かないなら、実力行使。

指や首の関節を鳴らして、捕縛を命じられたはずのターゲットに、暴力で対応する。


「忠告が聞けないなら仕方がない。作戦変更。――投降しても無駄だ、抵抗しろ。」

「セツナさん!?」


通信越しに、オペレーターのツッコミが入る。

捕縛、あくまでも命令は捕縛なのである。


余裕そうなセツナを見て、ターゲットの男は、たいそう不満げだ。


「クソ! ――クソッ! クソッ!! どいつもこいつも、オレを下に見やがってぇ。」


ターゲットの男は、憤死しそうな勢いで声を荒げる。

ゴーレムの足や拳を地面に叩きつけ、あたり散らす。


子どもが駄々をこねるような動きをするゴーレム。

だが、見上げるほどの、石の体躯でのそれは、もはや致死の攻撃と化している。


セツナに向かって、不規則な動きで、地上に拳と足の大岩が降り注いでくる。


幸い、ゴーレムの動きは目で追える範囲。

目で追えて、身体が対応できる範囲。


ゴーレムの可愛げの無い駄々っ子に、カウンターを入れる。

足に炎を纏わせて、ゴーレムの無造作に振り下ろされた拳骨に、キックでカウンター。


ゴーレムを操り、気が大きくなっている。

セツナのカウンターに冷静になるどころか、ますます攻撃的になり、ゴーレムは足を上げて踏み潰そうと――。


飛燕衝(ひえんしょう)。」


バカ正直に大きく上げた足の裏に、右手から魔力の衝撃波を放って、カウンター。


バランスを崩して後ろに倒れるゴーレムに、火球を撃ち込んで追撃。

火球は、倒れていく脚に直撃。


転倒したゴーレムに追い打ち。

跳躍し、石の顔面に目掛けて、炎の踵落とし。


踵落としを食らったゴーレムが反撃に移る。


さすがに、これ以上の追撃には黙っていない。

モノアイが赤く光り、熱線がセツナに放たれた。


熱線はテレポートで躱されて、重い灰色が満ちる空へ消えていった。


セツナは瞬間移動で、ゴーレムから距離を置いた場所に現れる。

視線の向こうでは、のっそりとゴーレムが立ち上がっている。


立ち上がり、のっそりとセツナに向けて歩き出す。

セツナも、ゴーレムに合わせて歩き出す。


歩きながら、左手をタクティカルベルトのポーチに。

銃のホルスターや弾薬ポーチ、その他の小物を留めているタクティカルベルト。


そこに取り付けてあるポーチから、魔導ガントレットの拡張デバイスを取り出す。


取り出したデバイスは、「コアレンズ」と呼ばれる、薄く丸いデバイス。

ガントレットの甲の部分が開き、そこにコアレンズを挿入する。


それと同時、両者は足を強く蹴り、走り出した。


セツナとゴーレム、両者はタイミングを同じく走り出し、彼我の距離は一気に縮まっていく。

駆けて、近づき――、体格で勝るゴーレムが先に間合いとなった。


渾身の、大振りのテレフォンパンチが放たれる。

質量と速度の乗った一撃は、ノーガードで受ければ、ただでは済まない。


セツナは避けようとはしない。

巨漢の大振りを、真っ向から受けて立つつもりだ。


迫りくるゴーレムの拳を、正面に捉え、自身の右拳を叩き込んだ。


曇天の下に、稲妻が走り、轟雷が轟く。

強烈な打撃と打撃がぶつかり、閃光のエフェクトが散る。


拳どうしの接触、一瞬の硬直が発生。

拳が痺れる。


硬直と痺れが解けて、――先に動き始めたのはゴーレムだった。

ゴーレムの拳が弾かれ、無防備な態勢を晒してしまう。


隙を逃さず、セツナが畳みかける。

左腕から、魔力で出来た鎖をゴーレムの胸に撃ちこみ、鎖を左手で引っ張る。


魔力の無い世界ならば、うんとも寸とも動かない岩の巨体が、セツナに向けて倒れてくる。


視界を覆うほどの巨体と重量。

それが倒れてきても、怯まない。


「ストライクコア――。」


ガントレットで覆われた拳に、力を込める。


コアレンズは、魔法が持つポテンシャルを引き出すデバイス。

コアレンズは、魔法と掛け合わせて使用し、性能を変化させる。


中でも、ストライクコアはコアレンズの基本形であり、魔法の威力を強化する。


――ストライクコア × 飛燕衝 = ‥‥‥‥。






「ライジング――、インパクトッ!」


倒れ来るゴーレムの胴体に、全霊のアッパーが叩き込まれる。

セツナの拳は、圧倒的な質量の前にしても砕けず、ゴーレムの巨体を捉え、抉る。


岩石のような体が軋みを上げ、胴体を捉える小さな拳を中心、ヒビや亀裂が広がる。


「――吹き飛べッ!!」


ついに、セツナの一撃はゴーレムの巨体を持ち上げた。

アッパーの勢いで宙を飛び、ゴーレムを大きく吹っ飛ばした。


セツナが静かに着地し、ゴーレムの体が大音声を上げて屋上に叩きつけられ、爆発した。


魔導ゴーレムとの戦い、セツナの勝利である。

このくらいは、造作もない。

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