第20話 一休みしましょうか。
ちょっと遅くなりました。
そんなわけで、とんでもないお宝を見つけてしまった私達。
そこで私は一つ、フェルルに提案することにしました。
「ねぇフェルル」
「なーに師匠？」
「少しだけ、ここで遊んで行かない？」
「えっ！？」
私は靴と、靴下を放り投げ、湖の中に入った。
浅いところはかなり浅く、足首ぐらいしかない。水の中も冷たくて気持ちいいし、何より砂地がしっかりしていて、グニュグニュすると砂が指の間に入って来て、気持ちよかった。これぞ、天然のマッサージ。
「うわぁ、冷たい。やっぱりこうでないとね」
「師匠、楽しそうだね」
「ほらほら、フェルルも！」
「えっ！？」
私はフェルルに水をかけた。
するとフェルルの身体はびしょ濡れになって、着ているワイシャツが透けていた。水色のブラが薄く見え、柔らかなブランドヘアーに水滴が付く。
「もうやったな！」
「うわぁ！」
それに対して怒るでもなく、フェルルも子供みたいにはしゃいだ。
キラッキラの満面の笑みを私に見せ、装備を一通り外してから、水の中に入った。
「お返し！」
「キャァっ！」
私はフェルルに水をかけられた。
新しく買った冒険者の服とローブが水に濡れる。尻餅をつきそうになったけど、何とか堪えて、水の中に踏ん張った。
「私もびしょ濡れ」
「だからお返しだよ。そもそも最初にやったのは、師匠なんだからさ！」
「むーん」
フェルルの顔は、自業自得とでも言いたげだった。
まあ元はと言えばそうなんだけど、すっかり昨日までの不満そうな態度も表情もさっきまでとは比べ物にならないほどに、明るくなっていた。楽しそうでいい。ただそれだけ。
「それにしても、この湖って、魚とかいないのか？」
「うーん、どうかな？よいしょ！」
フェルルは水の中に顔をつけてみた。
それから、パッと顔を上げると私に教えてくれた。
「私達の周りにはいないみたいだけど、奥の方には結構いたよ」
「そうなんだ」
「うん。かなり大きかった」
フェルルは目がいい。そうでないと、騎士なんてやってられなかった。
そうでないにしろ、水の中でも目がいいなんてフェルルは流石だね。
「うーん、でも、私達がこの森に入ってからしばらく経つけど、全然白百合は見ないよね」
「そうなんだよねー。もしかして、ラディアの奴、嘘ついてるのかな？」
「それはないでしょ。でも、管轄外のはずなのに、よくこの森に白百合があるって、知ってたよね？」
「それもそうだよねー」
よくよく考えてみれば、結構矛盾が生じる。
それでもこの森の中に、白百合があるんだったらそれを見つけるのが仕事なので探すしかない。でも今の間は、もうしばらくこの湖で身体を休めることにするのでした。
「はぁー」
「なんだろ」
「「暇だよねー」」
休んでいた私とフェルルは、おんなじことを考えていたみたいでした。
