それはまるで乙女ゲーのように
「澪、ナニ考えてるノ?ボクと二人でいるのに」
少し声を低くして、私の目を真っ直ぐに見据えている。
それにとてつもない威圧感を感じて、思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
「なにも、考えて、ないよ」
詰まりながら反射で返答する。
ミロくんは首を振った。
「澪は、ウソつきだね」
私の後ろの壁に両手をついた。
いわゆる壁ドンの体勢になり、追い詰められた小動物のような気持ちになった。
なぜだか目尻に涙が浮かんでくる。
「ウソつくようなワルイコは、オシオキされちゃうヨ?」
そう言って、ゆっくりと顔が近づいてくる。
ピントが合わないくらい近い。
吐息が間近に………!?
いやいやいや!!!
「ウギャーーーーーー!!!ダメーーーーーーーーーー!!!!」
リアルの私の姿が現れたかのような低い絶叫が腹の底から出た。地震が起きそうなくらい。
渾身の力で突き飛ばしたミロくんは、3メートルくらいぶっ飛んで頭を打ち、気絶した。
我に返り、ミロくんが呼吸をしていることを確認し、安堵する。
あ、危ない…。
今の明らかにキスされるとこだった…よね?
ダメダメ、初めてのキッスは好きな人とって決めてるんだから!
それをあんな流れで…まだ告白もしてないうちに…!これだから異国の王子は!!
怒りやらパニックやら色んな感情が湧いてきて、そのままの勢いで屋上を後にした。
途中ちょうどチャイムが鳴り、小走りで教室へ向かった。




