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おとぎ裁判  作者: 神楽澤小虎
13/32

【第1審】~12~


「…なんか臭うな。」


アケチのつぶやきに、明らかにオオカミはうろたえた表情を見せた。


「ええ~臭くないですよ? イケメンの匂い~。肺が幸せ♪」

「メロディ、そうじゃねぇ! 嘘とか疑惑とかっていう意味のに・お・う!」

「ちゃんと洗濯してるんですけどねぇ。」

ジュードが法衣をクンクンする。

「だからそっちじゃねぇ!」

「洗濯ジャブジャブ~♪グッドジョブぅ~♪ なんちゃってキャハ♪」


メロデイはジュードの手を取ってくるくる回っている。

この状況でこの緊張感の無さはある意味すごい。

こいつらを理解することは俺には一生できなさそうだと悟る。

いつも能天気なロブでさえ、落ち込んで訳の分からないことをぶつぶつ

つぶやいているというのに。


「せんたくジャブ…いやジョブ…」


ふいにロブが息を吹き返したように目を輝かせる。

「そうだ!赤ずきんには選択肢があったはずだ!

 自分の身を売る以外の選択肢が!

 だいたい少女にそんな仕事をさせるのはリスクが高すぎる!

 母親はそれ以外の仕事も考えたはずだ!

 掃除、皿洗い、物売り…」

ドローも椅子から勢いよく立ち上がった。


「おう!そうだな!似顔絵、ポエマー、インチキ占いやお祓い、

 幸運グッズなんてのもあるぞ!

 こんだけ可愛きゃ稼げたはずだ。

 どうだ赤ずきん!また嘘の証言をしてみんなの同情を買おうとしてるんだろう!

 もうその手には乗らないぞ!」

ロブにのっかるおっさんに、紅蓮(ぐれん)がピシリと言い放つ。


「ふん、何よ選択肢って。そんなものでどれだけ稼げるっていうの?

 まったく、男っていうのはどんな時でも少女には

 清く正しく美しくあって欲しいものなのね。

 いい?世の中の男たち、この際だからはっきり言います!

 幼い少女が売れるものなんて限られてるわよ。みずみずしい体か、

 マッチ売りの少女のように“ヤバいマッチ”を売って…」


パンパンと手を叩く音が大きく響いた。

俺は隣に立つジュードから尋常ならざる気配を感じる。


「紅蓮さん、そこまでです!“あの方”をそんなに気安く語ってはいけません。

 あなたほどの方が…… ご存知のはずだ。」


ピリリとした空気に緊張感が走る。

ジュード、こいつの本当の姿は…。


「あら…ごめんそばせ。」


紅蓮はそう一言残すなり消えた。ガクンと身体の力が抜ける。


「ブルー!」

ロブが駆け寄ると、ほどなくしてブルーが目を開けた。

瞳の色も明け方の空のごとく透き通った美しい青に戻っている。


「あれ…僕…もしかして…またなの?」


三角の耳がハの字に垂れ、

明らかに落ち込んでる様子のブルーに、ロブはやさしくメガネを差し出した。


どういうわけだか、紅蓮のときはメガネが無くても見えるらしい。

メガネを着けたということは、間違いなく今ここにいるのはブルーなのだ。


ジュードの表情が、いつもの執事モードの温和なものになる。

「さぁ、皆さん。一旦、休憩にいたしましょう。メロディ!」

「はぁ~い♪ あちらのお部屋に紅茶と焼きたてのスコーンをご用意しております♪」

「ブレイクタイム!こういうときはブレイクタイム!はははははは!」

「おっさん!お前はブレイクしたまま戻ってくるな!」


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