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そんなこんなで。

亮、大輝、結、夏帆という面子での昼食会が実現される事となった。食堂は校舎から離れた場所にあり、かなりの面積を誇る。四人がいるのは、縦長のテーブルが並ぶスペースの一角だ。

「うん、こうなるのは分かってた。分かってたけど、やっぱいらっしゃるんですね……」

「自分の同席という条件で、どうにか三沢の了承にこぎつけたからな。注文を呑むしかなかったんだ」

亮の感情が、限りない絶望に支配されていく。対面に結が座っていることだけが、彼の唯一の救いである。

「黙ってりゃ美人なのになぁ」

大輝の呟きは、亮の気持ちを代弁するものでもあった。亮自身を除いた三人は、美男美女の集団といって差し支えない。そう思うと、幼馴染に対してふつふつと静かに殺意が沸き起こる。

「どうした、急に怖い顔して」

「いや、なんでもねえよ」

と、そこで夏帆の言葉が割り込んできた。

「早く食べたいんだけど?ご飯冷めちゃうじゃない」

「おっと、そうだったな。いただきます」

「「「いただきます」」」

大輝の号令にあわせて合掌し、各々は箸を動かし始める。亮と大輝の二人はラーメンとカツ丼、結と夏帆は同じ日替り定食を選び、男女のニーズの違いがよく表れていた。

学食は基本的に安く多くをモットーにしているので、女子生徒にとってはメニューの選択肢が限られてくるのだろう。

「夏帆ちゃん、わたしこれ全部食べきれるか不安かも」

「大丈夫。残しちゃったものは全部私が食べてあげるから」

結と夏帆のやりとりを眺めているだけでも、二人は気の置けない関係である事は予想がつく。亮は、疑問に思ったことをそのまま口に出してみることにした。

「二人は前からずっと同じ学校だったの?」

「いえ、高校入学以来の仲よ。私と結ちゃんは文化研究部で一緒なの」

「文研部ね…」

一年生の体験入部期間には多少興味を持っていた亮だが、部室の場所や活動内容がよく分からず探索を断念していた。

「何処でどんな活動してるの?」

「職員棟の三階に上がって一番手前の教室よ。活動内容は特に決まってなくて、私は短編小説、結ちゃんはイラストを描いたりしてるわ」

「部員は何人ぐらいいるの?」

「私達二人だけよ」

出会いの印象が最悪だっただけに、夏帆が普通に話せるやつだった事は亮にとって意外だった。それだけに、亮は文化研究部に対する好奇心が膨らみつつある。

「面白そうじゃんか、亮。そういう事なら、俺ら二人も入部してみたいな」

「勝手な事言うなよ!つかお前はクラスにいっつも帰ってるやつがいたんじゃないのかよ」

「別に毎日顔を出す必要もないし、新入部員はいつでも歓迎するわ」

「よし、決定な」

本当にいいのだろうかという疑念が払拭できなかったが、それも最後の後押しの前には意味をなさなかった。

「わたしも、仁科くんとライトノベルのお話、したいかな…」

恥じらう乙女の誘惑に、抗えるわけもなく。

「入ります!」

かくして、四人の新しい日常が始まった。


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