36/38
覚悟
「「ありがとうございました」」
最後の一冊が唯の手によって男子生徒に手渡され、二人は並んでその背中を見送った。
「やった!全冊配布終了!」
亮が無邪気によろこぶ隣で、唯も浮き足立った様子でうんうんと頷いている。
「帰ってきたら夏帆ちゃんと平野くんにも教えてあげなきゃね」
「うん、絶対二人も驚くはずだよ」
時計をみると、交代までにはまだ三十分程時間がある。
「ちょっと、暇になっちゃったね」
文化祭が終わりに近付くにつれて人数も少なくなっていき、恐らく今のが最後の来客。斜陽が柔らかに照らす教室には、二人を邪魔するものはない。
(いくなら今ーーしかないのか)
誰かが教室に這入ってくるのではないか、上手く口が回らないのではないか。そんな事が気になってしょうがない。
もしこれがアニメやギャルゲーの世界だったら、きっと問題なく二人は結ばれることだろう。
だが、亮は今取り返しの効かない分岐点に立っているのだ。当然、失敗する可能性も必ずついてまわる。
ぬるま湯の関係を抜け出す勇気を、いつかは決めなければならないーーそうだ。
自分が動かなければ、誰も自分の為に動いてくれたりはしないのだ。
「黒田さんーー」
そして。
「僕は君のことがすきだ」




