宣伝
「これで今日やることはお終い。後は座して待つのみよ」
教室の片側の壁面には模造紙が貼られ、机と椅子を運び出してできた広々とした空間に亮達は集まっている。
「当日はこのシフトに従って動いて頂戴。時間に問題がある人はいる?」
「大丈夫だよ」
亮の台詞に合わせて、他の二人も首を横に振る。
「まぁそんなにお客さんが来ることもないだろうし、誰も来てない時は自由にしててもいいわよ」
マイナーな文化部の展示など概してそんなものだろうし、ある程度自己満足な部分もあるのだろう。
だが、あれだけ頑張ったのだから、人に評価してもらいたいという気持ちもある。
明日の成功を祈って、文化祭初日は幕を閉じた。
「やっぱ厳しいなぁ」
「そんな大々的に宣伝もしてないし、仕方ないのかもなぁ」
予想していた通り、午前中は客足がほとんど集まらなかった。
机の上に積まれた部誌の高さも変わらずだ。
「どうにかできないものか…」
顎に手を当て、亮は思案を巡らせる。そこで、いいアイデアが降ってきた。
「大輝」
「どうした」
「口で言うだけでいいから、色んな所で宣伝してきてもらえねぇか?確か次はお笑いのステージに出るんだろ」
「えー」
「お前の求心力があれば絶対お客さん来るんだって!俺達の作品を色んな人に見てもらいたいんだよ、この通りだ!」
亮が顔の前で手を合わせると、大輝は不承不承といった態で頷いた。




