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親友
「全く、中尾先生を説得するの大変だったんだぞ?怒りを収めるのに三十分ぐらいずっと八つ当たり聞かされたんだからな」
「すみません……」
職員室の渡辺のデスクの前に立ち、亮は頭を垂れていた。余りに沈痛な彼の面持ちをみて、渡辺は困ったように眉尻を下げる。
「まぁ、本は無事に返して貰えたんだ。これからはこんな事にならないように気をつけなさい」
「はい」
渡辺に一礼して、亮はこの場を去った。
「大輝、俺もう学校行きたくない」
『どんだけ飛躍したらそうなるんだよ⁉︎』
家に帰った亮は、部屋の電気も付けず受話器に向かって泣き言を連ねていた。
「クラスで先生に見せしめにされるわ、黒田さんに顔見るなり逃げられるわ、俺もう生きるのが辛い」
『頼むからマジで死ぬなよ。お前ならやりかねんから怖い』
「……ぐすっ」
「マジで泣いてんのかよ…まぁ、何があったのか聞かせろよ」
神が見放しても、親友にだけは恵まれていたようだった。




