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内面

文研部顧問など以前に、亮は渡辺が教員であるという事自体が初耳だ。戸惑いながらも恐る恐る渡辺の手をとると、力強い握手が返ってきた。

「よ、よろしくお願いします」

「誰君だったかな?」

「仁科亮です。もう一人の方は、今日は来てませんけど」

本当に初対面なのだから、名前と顔が一致しないのは仕方ない。軽く一礼しつつ、亮は渡辺に自らの名を告げた。

「先生は、今日はどういう御用事なんですか?」

どうやら待ちきれなくなったようで、夏帆がここで話に加わってきた。

「実は僕もここに買い物に来たんだよ」

「ガサ入れの間違いじゃぁでっ⁉︎」

「先生になんてこと言うの‼︎」

後ろから夏帆に頭を思い切り叩かれた。思わず口走ってしまった亮だが、直ぐに自分の失態に顔を青ざめさせる。対して、渡辺の方はさして気に留めた様子でもなかった。

「おいおい、酷い言い草だなぁ。人を見かけだけで判断してはいかんよ」

「す、すみませんでした!」

「現に僕は、こう見えてもサブカルチャーに関してそれなりに詳しいよ。文研部の顧問も、志願してやらせてもらったぐらいだからね」

アニメグッズを買い漁るイケメン、ならまだしも、オタ文化に造詣が深い中年教員など今まで見たこともない。

「まぁそういう訳だから、困った事があればいつでも相談してくれ。僕は今からDVDの初回特装版を予約しに行くとするよ」

渋い重低音でそう言い残すと、渡辺は店の人混みの中に紛れていった。

「怖かった〜!顧問ってあんな先生だったのか」

「強面だけど、渡辺先生はすごく優しいんだよ?」

結によるフォローが入れられるが、亮はそれがにわかには信じられなかった。


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