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第8話 ドワーフと鍛治

本編です。

 パチンッ、パンッ、パンッ、パチッ、パチッ、パチンッ



 正面、上、下、右、左、正面



 ーーまるで長年同じ動作をし続けたかのような流れるような動きで手が触れ合っていく。



 ドンッッ



 そんな何かがぶつかるような音がした…

 そして熱く抱き合う男が二人。



 ーーまるでその間には魂さえを超えた何かが存在しているような…そんな雰囲気さえ感じとれた。





 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~





『じゃあみんナ、がんばってネー』

 ぱんぷきんぼーやが言い終わると同時に視界が閃光に包まれていった。




 俺は気づくと室内に立っていた。

 ゆっくりと周りを見渡してみ…



 ッッ、



 俺はこの時にはもうすでにデスゲームがどうとか、ここはどこなのか?とか、そんな事を考える余裕さえなかった。

 ただ俺は自分の視界に映るものに感動し歓喜していた。

 そう、そこあったものは…



 男の(ロマン)そのものだったのだ。





「おいてめぇ、ここでなにしてやがるっ‼」



 俺を平常心にもどしたのはそんな怒鳴り声だった。

 俺は声のした方へ恐る恐る振り返る。

 そこにいたのは身長が130センチほどで肩幅が広くがっしりとした身体、そしてもじゃもじゃのヒゲと髪の毛…

 俺の知っている言葉の中から一言で表現すると、そこに立っていたのはドワーフだった。

 男はイライラしたような口調で怒鳴った。



「おいてめぇ、ここでなにしてやがるって聞いてんだよっ‼」

「す、すいません。僕は今、気がついたらここにいて…」

 俺は男の態度に押されて少しきよどってしまっていた。

「ワシは何でてめぇがここにいて、何をしてやがったのかを聞いてんだっ‼」

「ここに飾ってある武器や防具に見とれてしまっていて…」



 俺は素直に答えたがやはり少し尻すぼみな声になってしまった。



「ふんっ、こんなガラクタ(・・・・)共をだとっ?いいからさっさと出て行きやがれ」



 イラッ



「おい親父…てめぇは今、何て言いやがった?ガラクタだと?」

「あぁっ?、ワシがワシの作ったガラクタに何て言おうがかってだろうがっ‼」



 これがいけなかった…俺は久々に本気で激怒した。

 俺は男に近づき胸ぐらを掴み上げて言った。



「ちょっと表に出ろやぁっ‼」






 ーー俺は今地面に倒れこんでいた。

 結果?言うまでもない、俺の惨敗だ。



 素手と素手での殴り合い、ボコボコにされた…



「けっ、口ほどにもねえ。もともと種族が違うんだよ。武器も使わずにドワーフであるワシに勝てるわけがねぇだろうが」



 俺は震える膝を押さえつけて、むにやり立ち上がる。



「ちょっとまてよクソジジイッ…俺はまだ終わってないぞ…ガラクタだと?てめぇは何もわかっちゃいない…。あれは…あいつらは、男の(ロマン)だっ‼」



 そう叫び俺は男に向かって走り出した。



 ドスッッ



 二つの拳が交差した。…







 カンッ、カン、カン、カンッ、ジュワァァアア…



 カンッ、カン、カン、カン、カン、カツンッッ



 俺はそんなうるさいようでどこか心地よい音で目を覚ました。

 額の上にはタオルが乗せてあり、綺麗に布団が掛けられていた。



「うっっ」



 体中が痛い。

 俺は重い体を起こし、音がする方へ向かった。



 カン、カン、カン、カン、カンッッ



 そこには広い工房があり、昨日の男が真剣な瞳をして、一心に(ハンマー)を振り下ろしている。

 俺はその光景に心を奪われていた。



 カン、カン、カン、カン、ガキィィンッ



 ーーそんな音と共に叩いていた素材が砕けちった。



「くそっ、まだワシにわ……くそぉ…」



 俺は何も言えずに黙り込んでいた…



「…起きたかボウズ、礼はいらんからさっさと出て行きやがれ」

「…あの、何を打っていたんですか?」

「ふんっ、てめぇみたいなボウズに教えた所でどうなるってんだ」



 俺は無言で腰にさしてある刀を抜いた。



 フゥンッッ



 ーー静かに空気を裂く音が響いた。



 キンッ



 俺は刀を鞘にしまい言った。



「俺は貴方の鍛治姿をもっと見たい…貴方が何を打っていたのかを知りたい」



 俺は男を見つめ続けた。



「けっ、鼻垂れボウズが何言ってやがんだ」



 男はこちらを一瞥することもなくそういった。



「…俺は貴方の武器や防具を気に入った。あれは男の(ロマン)そのものだ。俺は貴方の力になりたい」



 これは俺の素直な気持ちだった。

 槌を振るっている時の男の目は、本気の目をしていた。



「バカいえ、てめぇみてえなボウズにな「日本刀」…」



 俺は男の声を遮りそういった。



「俺は貴方と日本刀が打ちたい」





 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~





 ーー俺がフォル(ジイ)の所で暮らし始めてからもう二週間がたっていた。



「おいボウズ」

「あいよっ」



 俺はこうしてずっとフォル爺の手伝いをしている。



 カンッ、カンッ、カンッ、カンッ、カンッ…



 ジュワァァアア……



 ゴクリッ



 喉のなる音が聞こえる…

 フォル爺はしばらく出来上がった物を眺めたのち、それを台座の上に置き立ち上がってこちらをむいた。

 その額には汗が浮かび上がり、顔は微笑を浮かべていた。

 俺はフォル爺に駆け寄り



 パチンッ、パンッ、パンッ、パチッ、パチッ、パチンッ



 正面、上、下、右、左、正面



 俺たちは寸分たがわぬ動きでハイタッチをしていった。

 そして抱き合って一言…



「「ありがとう」」



 確かにそこには二人の男がいた。

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