やっぱりかわいいせんぱいも
「随分と長いことお楽しみでしたね……♡ おふたりとも随分と汗もかいたようで……私はお暇していたほうが良かったのでしょうか?」
ノノといっしょに掛け布団から出た途端に、シュシュから声をかけられた。そのニヤニヤとした笑みから、大体のことは把握されてしまっているのだろう。
僕が羞恥心を感じている一方で、ノノはどことなく誇らしげだった。
「ふっふっふ……シュシュちゃん、見ててね? せんぱい♡ さっきのもう一回、やって♡」
「えっ!? いや、今……? シュシュ君が見てるのに……?」
「むぅっ、せんぱいが言ったんだよ? 見せつけたらいいって」
あれは言葉の綾であり、実際にはシュシュには見られていないからこその強気だったのだけれども、ノノに言っても納得はしてくれそうになかった。
仕方ないので、僕は恥ずかしさを押し殺しながらノノの唇に軽くキスをした。
さっきはあんなにも深くノノを感じられたのに、人に見られているだけでこんなにも集中できないとは。しかしそれでもキスはキスであり、ノノも満足してくれているようだった。
「むふーん……シュシュちゃん、見た?」
「はい、しかと」
「シュシュちゃんも同じことを言ってみて?」
「それでは……ほむら先輩、私にもキスをいただけませんか?」
「いや……しないけど……」
ノノは僕の左腕にしがみつくと、ビシッとシュシュに人差し指を向けて言い放った。
「せんぱいは、ノノの! シュシュちゃんにはあげません!!」
「くすっ……そのようですね」
このやり取りに意味があったのかは、僕には知る由もない。ただノノの表情は晴れやかで、もうシュシュへの嫉妬も僕への怒りも感じられなかった。
シュシュにも悔しがるような様子はなく、僕への執着も感じられず、ただノノを微笑ましく見つめている……いやちょっと待って。あのシュシュの表情には覚えがある……あれは、何か禄でもないことを……――
「ところでノノさん……先ほどお約束した件についてですが、いつになさいますか?」
「やくそく? えっと……あっ、写真のこと?」
「そんなことは今となってはどうでも良いではありませんか。それよりも……ノノさんはこれに興味があるのではありませんか?」
シュシュは左手で自らのシャツをめくりあげると、右手の指先で下腹部を撫でた。中指と薬指を立ててぐるぐると円を描くように、ぐいぐいと押し込むように。
僕がされている時はそうは感じなかったけれども……外から見てみると手付きが卑猥なように思えた。
「私はノノさんにこれを伝授すると確かに言いましたから……♡ ノノさんも、ほむら先輩にこれをやって差し上げたくはないですか? ノノさんがお望みなら、今此処で手ほどきをして差し上げますよ? もちろん、ほむら先輩にはノノさんの練習台になっていただくことにはなりますが……♡」
「の、ノノ君? ノノ君にとっての僕は、カッコいいんだよね? あれは、カッコいい僕には必要ないよね……?」
「…………せんぱい♡」
みなまで言わずとも、わかってしまった。その声だけで、仕草だけで、微笑みだけで、僕は逃げられないということを悟ってしまった。
だって、本当は……もう、心が疼いてしまって仕方ないから……。
「ノノ、あれ出来るようになりたいなぁ……♡ シュシュちゃんみたいに、指先をちょびっと動かすだけでせんぱいがかわいくなっちゃうやつ……♡ ねえ、せんぱいはどう? ノノができるようになったらうれしい? ノノにやってもらいたい? せんぱいの正直な気持ち、ノノに教えて?」
「いやっ、でもっ……ほら、試験勉強しないとだしっ……っ」
「せんぱい、お顔がかわいくなってきちゃってるよ? ほら、もっとがんばって♡ ノノだけのカッコいいお顔を見せて? ノノだけの特別なカッコいいせんぱいだもん……そのお顔がかわいくなっちゃう瞬間も、ノノだけのものだもんね♡」
僕がノノの隣でずっとカッコいいままで居られるのは、少なくとも今は無理ようで……。
カッコいい僕についてはもう少しだけ……ほんのちょっぴりだけ未来の僕に期待したいと思う。




