かっこいい先輩
そこは暗くて、窮屈で、温かくて、柔らかい空間だった。
いくらふたりが小柄でも一人用の掛け布団は狭すぎて、中に入った途端に僕はノノに密着することになった。目の前にある硬くて丸いものはノノの膝だろう。どうやら両足抱え込んで体育座りをしていたらしい。
「せっ、せんぱい!? な、なんで入ってきちゃうの!?」
「なんでって……そもそもここは僕のベッドだし……僕の布団だし……」
「今はノノのなの! えっちなせんぱいは入ってこないで!」
ノノの両手がグイグイと僕の顔と胸を押してくる。足蹴にされないほどには、まだ好感度が残っているようだ。
僕はノノの手首をしっかりと掴んで、無理やり左右に広げた。ピッタリと閉じた足にも強引に体を滑り込ませて、ノノとの距離を詰める。
そういえば、以前にノノに同じように足の間に潜り込まれたことがあったっけ。
「せ、せんぱいっ……近いよ……」
近づくほどにノノの抵抗は弱くなっていて、今ではほとんど無抵抗に近い。
暗がりのせいでよくわからないけれど、呼吸の当たる感じから目と鼻の先にノノの顔があるのだろう。
僕は一呼吸……やっぱりもう一呼吸だけ置いたあと、目の前にあるはずのノノの体を抱き寄せた。
脇の下から背中へと両手を回して、強く、深く、ノノを抱きしめた。
「っ……せんぱい……苦しいよ……」
言葉は嫌がっていても、声は嫌がっていなかった。僕の背中を引っかくように突き立てられたノノの指は、僕を拒絶してはいなかった。
「僕は、誰かに言い寄られても強く抵抗できないかもしれない。されるがままで、誘惑にも勝てないかもしれない。でも、ノノ君だけだから……僕が好きなのはノノ君だけ……だから、これもノノ君にしかしない……。されることはあっても、するのはノノ君だけ……それだけは、こんな僕でも自信を持てるよ」
「せんぱい…………ノノは、せんぱいが誰かにされるのも嫌なんだけど?」
顔を見なくても、ノノが唇を尖らせているのがわかった。いつものように、愛らしくていじらしい拗ねた顔をしているのだろう。
「それなら、ノノ君が僕を守って? いつでも僕の傍で……僕はノノ君の物なんだって、その……わからせてよ……」
「……ぷふっ。せんぱい、そこはかわいくなっちゃうの……? でも……カッコいいね……♡」
僕を抱くノノの力が強くなって、負けないように僕も力を込める。強く、強く、胸をくっつけ合って……ぎゅぅっと、融け合えるように。
僕の鼓動にノノの鼓動が重なって、心音が互いの体に響きあって、体温を高め合って、もう我慢ができなくなって――
「せんぱい? 呼吸がはぁはぁしてるよ? どうかした――わぁっ!?」
体重をゆっくりと乗せて、のしかかるようにノノを押し倒した。
「せんぱい……?」
「ノノ君、言ってたよね……? 今度は逃げちゃだめだって……僕、逃げないから……この前の続き、するからね?」
「えっ!? だっ、ダメだよ! せんぱい、えっちなことする気でしょ!? ノノわかるんだからっ……ノノたちまだ子供なんだからっ……それに、シュシュちゃんだって居るのにっ……!」
「布団で隠れてるからわかんないよ……それに、万が一バレちゃっても……いいでしょ? 僕とノノ君のこと、見せつけてあげれば……」
「せんぱい、落ち着いて! どうしたの? 今日はいつもより……その……なんで、こんなにカッコよくなっちゃってるの……?」
「だってっ……だってっ……ずっと、焦らされてたからっ……! ノノ君が来る前から……ノノ君が来てからも……いくら僕だってっ、もう我慢できないよっ……! それに……ノノ君だって、本気で嫌がれてないよ?」
暗闇の中、手探りでノノの両頬を探し出す。柔らかくて、ぷにぷにの膨らみを両手で挟み込んで、僕の正面にノノの顔を据える。
少しだけ慣れてきた僕の目には、とろとろになったノノの顔が映っていた。
「ノノ君、いつも言ってるよね。僕たちは子供だから、えっちなことはダメだって……一言も、嫌だとは言ったことなかったよね……そういうことだよね?」
「っ……で、でもっ、だって……だって、本当にダメなんだもん! 子供なのにっ……しちゃいけないのにっ……一回したら、きっとがまんできなくなっちゃうもん!」
「じゃあ、なっちゃおう……。僕といっしょに、悪い子になっちゃおうよ……ね? 僕もノノ君の為に、頑張ってカッコつけるからさ……嫌なら、嫌って言って?」
「っ……っ……~~っ。……だっ、だめっ……」
「うん……わかった……」
吐息と吐息がぶつかりあって、ふわっと布団の中で拡散する。
鼻先がちょこんとぶつかって、挨拶を交わすようにすりすりと擦り合わせて――
「んっ……――」
――互いの柔らかい場所を触れ合わせて、抱き合うよりも強く押し付け合った。




