【18-5】決着、そして鎮魂
公爵の強制命令が、アーサーの抵抗をねじ伏せる。 彼の意志とは裏腹に、体内の魔石が暴走を始める。
「ウガァァァァ!」
アーサーは苦悶の叫びを上げながら、大剣を上段に構えた。その刀身に、禍々しい紫色の魔力が収束していく。 周囲の空間が歪むほどのエネルギー。それは、自身の命ごと、この地下室全てを消し飛ばさんとする、自爆特攻の一撃だった。
護は、その姿を見て、戦斧『岩砕き』を握り直した。 怒りはない。あるのは、ただ深い悲しみと、覚悟だけ。 もう、助けることはできない。ならば、せめて。
「アーサー……。アンタ、本当は苦しいんだろ?」
護は腰を落とし、全身の筋肉を極限まで収縮させる。 あるのは、鍛え抜かれた肉体が生み出す、純粋な物理エネルギーのみ。
「……これで、終わらせてやる。アンタの魂、俺が受け止めてやる!」
「オオオオオオッ!!」
アーサーが放つ、全てを破壊する渾身の一撃。 紫色の閃光が迫る。
護は、一歩も退かずに正面から踏み込んだ。
「《漢の一撃・磐座クラッシュ》ッ!!」
全力の戦斧が、アーサーの大剣ごと、その胴体を薙ぎ払った。
二つの力が激突し、閃光が地下室を白く染め上げた。 衝撃波が吹き荒れ、メルとカゲロウは吹き飛ばされないように床に伏せる。
ズドオォォォォォォォォン……!
やがて、土煙が晴れた時。 そこに立っていたのは、護ただ一人だった。 彼の足元の石畳は粉々に砕け、戦斧の刃はボロボロに欠けている。肩で息をし、全身から汗と熱気が立ち上っていた。
その前方。 アーサーの大剣は砕け散り、彼の鎧もまた、粉々になっていた。 彼は、床に大の字に倒れていた。 動力源である魔石が破壊されたことで、その体からはプシュ、プシュと蒸気のようなものが漏れ出している。 鎧の隙間からは光の粒子が溢れ、その肉体が徐々に崩壊を始めていることが見て取れた。だが、まだそこには確かに「彼」がいた。
護が、静かに歩み寄る。 兜が割れ、露わになったアーサーの顔。その瞳には、もう狂気の色はなかった。 そこにあったのは、長い悪夢から覚めたような、虚ろだが穏やかな光だった。
「……」
彼は震える唇を動かし、音にならない声で何かを呟こうとするが、声は出ない。ただ、天井を見つめ、涙を一筋流した。
護は、そんな彼を見下ろし、短く息を吐いた。
「……あばよ、英雄。あとは、任せな」
戦いは終わった。 しかし、まだ全てが終わったわけではない。 護はゆっくりと顔を上げ、部屋の奥で腰を抜かしている元凶――フェルディナント公爵を、静かな怒りを湛えた瞳で睨みつけた。
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