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「……ってことがあったんだけど……」

「…………」

「…………」


放課後になるやいなや魔法陣研究部へ直行した私は、オルカとランチアに昼休みの出来事を語った。二人は無言で考え込んでいる。


「……思ったよりいい男じゃねぇか、第二王子」

腕組みしていたオルカがそう言うと、ランチアも頷いた。

「私も見直したわ! リモーネのこと、すっごく大事にしてるのね!」


明るく話す二人だが、本題を忘れてやしませんかね?


「私は逆に困ってるんだけど! 新しい婚約者作れって言われても、すぐにできるもんじゃないでしょ!?」


ぺしぺし机を叩きながら力説する私に、ランチアが微笑みかけた。


「別に、すぐじゃなくていいじゃない。ゆっくり探しなよ」

「だって、それじゃあいつまでたってもアルジェント様とメーラさんがくっつかないじゃない! メーラさんを他の人に取られちゃう!」

「そうなったら、別にお前が第二王子とそのまま結婚すればいいんじゃないか?」

「そんな! 私はアルジェント様に幸せになってもらいたいのに!」

「第二王子はお前と結婚しても幸せになれそうだけどな。そもそも、それだけお前を溺愛しておいてメーラ嬢と上手くいくとは思えねぇけど」

「うっ……!」


痛いところを突かれた! 私もそこが気になっていたのだ。

アルジェント様が今のままメーラさんにアプローチしたら、“恋人がいるのに幼馴染を優先するクズ”みたいになってしまいそうで怖い。アルジェント様が私のせいで捨てられちゃう!


私がう~う~考え込んでいると、ランチアがぽんと手を叩いた。


「ねぇ! いいこと思いついた! オルカがリモーネの婚約者になればいいんじゃない?」

「「はぁぁぁ!?」」


あ、私とオルカの声がハモった。


「おいおいおい。俺は貴族と結婚なんて嫌だぜ! 社交だのマナーだの、堅苦しいのはごめんだ!」

「そんな一瞬でフラれると傷つくんですけど」


別にさぁ、オルカに恋なんてしてないからいいけどさぁ! さすがに秒でフラれるとへこむんですけど。

私がジロリと睨むと、オルカが慌てて弁明した。


「ち、ちがっ! 俺はリモーネが嫌なわけじゃなくて、貴族になるのが嫌なだけでっ……」


青い顔で大混乱しているオルカ。あまりのうろたえっぷりに私は思わず噴き出した。


「ふふっ。分かってるって。オルカは礼儀作法とか大嫌いだもんね。生涯を魔法陣研究に捧げたいんでしょ?」

「……別に、貴族が嫌いなわけじゃないからな? 俺は窮屈なのが苦手なんだ。貴族になったら、やれ社交だのダンスだの、やらなきゃならねーことが増えるんだろ? そんな暇があるなら魔法陣を研究してたいんだよ、俺は」

「あら、オルカ。情報がちょっと古いわね。今どきの貴族はもうパーティなんてそんなにしないわよ。ねぇリモーネ」


オルカが熱く語るのを聞いていたランチアが、口をはさむ。

確かに、オルカの貴族に対するイメージはちょっと古い。


「そうね、今はパーティというか、いろんな分野の研究会とか討論会って感じかなぁ。食事はあるけど、ダンスを踊ることってもう廃れてきたのよね」

「そうなのか!? 貴族って言ったら、こう煌びやかなダンスホールで酒を飲んだりダンスしたり……!」

「ん~~おばあ様の頃はそんな感じだったらしいけど、今はどっちかというと熱いディスカッションをする場みたいな?」

「リモーネも私も、ダンスなんてゆっくりのワルツしか踊れないもんね~。そもそもダンスする機会なんてほとんど無いし。マナーなんかもだいぶ簡略化されてるし」

「イメージが崩れた……!」


なんかオルカが頭を抱えてる。平民が貴族社会の現在なんて知るはずもないから、割とオルカみたいに古い時代のイメージを持ってる人って今も多いんだよね。

今は魔物の被害が多すぎて、そんなのんきに連日パーティとか開いてる場合じゃないし。ダンスができるより、領地経営スキルの高い人の方がよっぽどモテる時代だ。


昔は侯爵令嬢と言えば、子爵や男爵の令嬢なんかとは付き合わなかったらしいけど、私は普通にみんなで放課後スイーツ食べ歩きとかしてるし。平民の子も一緒に。

おばあ様に言ったら、時代についていけないってため息ついてたけど。


「そんなわけだから、貴族になってもそれほど窮屈じゃないわよ? どう、オルカ。リモーネと婚約してみない?」

「……どうしても他に候補が現れなかったら、考えてもいい」


オルカが散々悩みながら答えた。

って、なんでそんな上から目線なのよ! 私、身分も才能もあって割と優良物件のはずなんですけど!

告白してもないのにフラれた気分だ。こんなんで私、ちゃんと新しい婚約者見つけられるのかしら?



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