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「アルジェント様、昨日の手紙は何ですか」
「え? 何? リモーネ、怒ってるのか?」
昼休みに中庭のベンチへやってきた私は、まずアルジェント様に質問する。
怒ってるわけではないが、何だこりゃって気にはなるわ。
「私に男性を紹介するつもりって書いてありましたけど……」
「ああ、そうだが?」
「そんな、罪滅ぼしみたいなことしなくていいんですよ? 私たちは婚約者って言っても仮だったんですから。アルジェント様はメーラさんのことだけ考えていればいいんです」
私が言うと、アルジェント様は静かに首を振った。
「リモーネ。確かに私たちは正式な婚約者ではなかった。それでも、仮ということで君の大切な時間を奪ったことは事実だ。私に縛られていたせいで、君は恋をすることもできなかっただろう?」
「それは――」
そうかもしれないが、そんなのはお互いさまだ。アルジェント様だって私に縛られていたんだから。納得いかない私に、アルジェント様が微笑みかけた。
「リモーネ。私にとって君は大切な家族なんだ。絶対に不幸になってほしくない。だから、私は君の幸せを見届けるまではメーラ嬢に思いは告げないよ」
「――は?」
「婚約解消を言い出した私が、君より先に幸せになるなんておこがましい。君が愛する人を見つけて幸せになるまで、私はこの想いを捨てる」
「はああああ!?」
ちょちょちょっ! 何? 何言ってるの! アルジェント様! おかしいよ? 思考回路がおかしいよ!?
私の幸せを考えてくれるのは嬉しいけど、その自己犠牲は何なの? ってゆーか、アルジェント様は王族だから、十八歳までには正式な婚約者を決めないといけないはずですけど!あと二年しかないんですけど!
「……アルジェント様。私こそ、あなたに幸せになってほしいんですよ。アルジェント様はあと二年で正式な婚約者を迎える必要があるでしょう? 私になどかまけてないで、早いとこメーラさんにアプローチしてくださいよ!」
「君の幸せを見届けてからでないと安心できない」
「私はあとからのんびり、好きな人見つけますから!」
「そんなことを言って、もし君がろくでもない男と結婚することになって不幸な道に進んでしまったら、私は自分を許すことができない。自分が結婚していればよかったと生涯後悔することになる」
「え、ええ~……」
恋じゃないとはいえ、私に対して割と深い愛情を持ってくださってたんですね……。
でも、重い! 重いですよ、アルジェント様! 重度のシスコンみたいですよ!
あわあわする私をよそに、アルジェント様がサンドイッチの詰まったバスケットを開ける。
「はい、リモーネ。君は卵のサンドイッチが好きだろう?白身魚のフライもあるよ」
「……いただきます」
「レモンジュースも冷えてるからね」
「……美味しいです」
……もしかして私、姉じゃなくて溺愛される妹枠だったのかも。
どっちにしろ、シスコンって女性からしたら不良債権じゃない? メーラさんとアルジェント様、うまくくっつけられるのかしら。
ひとまず放課後、オルカとランチアに相談しようと決めた私は、サンドイッチとレモンジュースを堪能することにした。……現実逃避ではない。




