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メーラさんと仲良くなった私は、ランチアを紹介することにした。お菓子好きのメーラさんにもランチアのお菓子を食べて欲しくなったのだ。放課後、部活の前に中庭のガセポで三人でお茶を囲む。
「すっっっごく美味しいです! こ、このシュークリーム、美味し過ぎます!!」
メーラさんが瞳をキラキラさせてランチアのシュークリームを絶賛する。
そうでしょそうでしょ、すごいでしょ! 私の親友は!
なんて、自分の手柄でも無いのに嬉しくてニマニマしちゃう。
「えへへ。そう言ってもらえると嬉しいな。今回は特に自信作なの。カスタードクリームに、ちょっといい卵とミルクを使ってるのよ」
「そうなんですね! ああ……! 美味し過ぎて手が止まらない~」
キャッキャしている美少女たちが可愛すぎる。ここ、天国かな?
私が緩み切った顔をしていると、背後から野太い声がかけられた。
「し! 失礼! あの……そのシュークリームはどちらの店のものか教えてもらえないだろうか……!」
振り返ると、そこには大きな熊……ではなく、辺境伯令息のオルソ・マローネ様が立っていた。オルソ様を見て、メーラさんが笑顔で挨拶をする。
「あらオルソ様、ごきげんよう! このシュークリームは、こちらのランチア様のお手製なんですよ。今まで食べたシュークリームの中でもダントツの美味しさです!」
「そ、そんなに褒められた物ではありませんが……もしよろしければ、オルソ様も召し上がりますか?」
メーラさんにベタ褒めされたランチアが、照れながらオルソ様にもシュークリームを勧める。オルソ様はその誘いにパッと瞳を輝かせ、ありがとうと席に着いた。
シュークリームをしげしげと眺めた後、パクっと一口。
カッとオルソ様の目が見開かれる。無言でしっかりと咀嚼をすると、わなわなと震え始めた。
え、大丈夫、この人。
私たちが心配し始めると、オルソ様はぐりっと勢いよくランチアの方を向いた。
ヒッとランチアが悲鳴を飲み込む。
ちょっと! 私のランチアに危害を加えるなら容赦しないわよ!
私がオルソ様に攻撃魔法を叩きこもうとする前に――オルソ様が席を立ち、ランチアの前に跪いた。
……ん?
「ランチア嬢……俺と、結婚してくれ……!!」
「「ええええぇぇぇぇっっ!?」」
あまりの展開に私とランチアが絶叫している横で、メーラさんだけはなぜかニコニコ微笑んでいる。
「良かったですねぇ、オルソ様。理想の女性と出会えて」
「え? ど、どういうことっ? オルソ様って、メーラさんのことがお好きだったんじゃ……!」
私が混乱していると、メーラさんがキョトンと首を傾げた。
「え? 私とオルソ様は、ただのスイーツ仲間ですよ。以前私が差し上げたマドレーヌに心を奪われたそうで、購入したお店を教えて欲しいと熱心に頼まれたことはありますけど」
なんと! オルソ様の心を奪ったのは、メーラさんではなくマドレーヌ!
……私の勘違いだったのか~。
「オルソ様、お菓子作りの上手な奥さんが欲しいってずっと言ってらしたんですよ。私は食べるのは好きですけど、作るのはあんまり好きじゃないんです」
「そ、そうだったの……」
いや、謎が解けたのはいいんだけど、ランチアが固まってしまっている。
ど、どうすればいいの、これ……。




