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アルジェント様が挙動不審だ。

ランチを別にとることにしたとはいえ、ケンカをしたわけではないので、普通におはようございますと朝の挨拶をしたんだけど。


「リィっ! モーネっ! おおお、おは、おは、ようっ!」


……なぜか小刻みに震えながら、カタコトで挨拶された。顔が赤いから熱でもあるんだろうか。よく見たら汗もかいている。


「……具合でも悪いんですか? 保健室行きます?」

「いやぁっ!? だいじょ、大丈夫だっ! ははは、ははははは……」


そのままリコルドの方へ逃げて行った。……なんだあれ。

リコルドを見れば、すっと右斜め下に視線を逸らされた。

あれは子供の頃から、私に何か隠し事がある時の彼のしぐさだ。


ふ~ん。へ~え。いいですよ~だ。私だけ仲間外れにするつもりなら、こっちだって気にしてあげないもんね!

まあ正直、今は自分の気持ちを安定させるのにいっぱいいっぱいだから、二人が放っておいてくれるならありがたい。私は気持ちを切り替えて一時間目の魔法理論の教科書を準備した。


そして、昼休み。

私は昼食の入ったバスケットを片手に、同じクラスの女子グループの元へ向かった。


「こんにちは。今日は私もご一緒させてもらっていいかな?」


なるべく愛想よくお願いすると、まあリモーネ様! ご一緒できて嬉しいです! と皆さん笑顔で迎えてくれた。そしてその中にはメーラさんもいる。

ちゃんと私、仕事してますよ。メーラさんと仲良くなって、男性の好みを聞いちゃうもんね。

そう意気込んでいたが、女子の一人に直球を投げ込まれた。


「いつもはアルジェント様と昼食をご一緒されているのに、今日はいいんですか?」


ゴフっとオレンジジュースを噴き出しそうになる。危なかった……!

え、なぜ皆さん、そんな心配そうな顔をされてるの?


「もしかして、仲違いなさったのですか?」

「私たちでお力になれるなら、何でもご相談ください!」

「必要ならもっと人手を集めますわ!」


なんか女の子たちに応援されてる!? 何で!?


「あ、あの、皆さん。どうしてそんなに私とアルジェント様のことを……?」


私が質問すると、女子たちの瞳がキラリと光った。


「お二人は、私たちの憧れなんです!」

「いつも仲が良くて、穏やかで、学園内のベストカップルですわ!」

「いずれお二人のような恋愛をしてみたいんですの!」


うわぁ……。こんな頬を上気させたお嬢さんたちに、ただいま婚約解消まっしぐらですなんて言えないよ……。

だけど、私はピンチをチャンスに変える女!


「……皆さんには、意中の殿方がいるのかな?」


私が話を振ると、ほとんどの女子は予想通りの答えをくれた。アルジェント様は素敵だけど、私がいるから観賞用だとか、公爵家のルーポ様に遊ばれてみたいとか、結婚するなら堅実なオルソ様がいいとか。あ、割とリコルドも人気だったよ、一応。


ところが、肝心のメーラさんはこの話題にはニコニコしているだけ。私はあなたの意中の人物が知りたいのにーっ!


「メーラさん……は、お好きな方はいないの?」


直球で聞いてみても、


「私はまだ恋愛をする気はないんです。今は魔法のレパートリーを増やすのが楽しいので!」


まぶしい笑顔で返されてしまった。可愛い!

……これって、今アプローチしてる方たち、全滅じゃない?


結局、この日はこれ以上の収穫は無かった。アルジェント様と仲違いをしているのではと不安にさせてしまった女子たちには、進級したばかりなのでクラスに馴染むために、しばらく昼食を別でとることにしたと嘘をついた。

これでしばらく昼休みにはメーラさんと一緒にいることができる。

仲良くなって、アルジェント様を売り込むぞ~!




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