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第九話:未来と過去の境界線

 美秀の全身が、微細な光の粒に包まれた。

 クロノスが目を細める。


「……やっと、その力を目覚めさせたか」


 美秀の意識の奥で、記憶が呼び起こされる。

 かつての研究室。

 ガラス越しに見つめるエヴァルスの冷たい視線。

 ゴールドメイデンと呼ばれ、何度も実験を繰り返された日々。

 そして、クロノスの存在。


「……そうだったんだ。

私とクロノスは……対の存在……」


美秀の能力「未来の確定」。

クロノスの能力「過去の支配」。


(私の能力は、クロノスの能力と対になっている……?

私はクロノスを止める為の存在......?)


 いや、違う。

 それは勝手に他人が決めた運命でしかない。

 彼女は、自分の意志でこの場に立っている。

 美秀は静かに息を整えた。


「……私は、自分の意志で戦う!」


 クロノスが静かに手を上げる。


「私の力には及ばない!」


 そして、戦いが始まった。

 美秀の手の中に、黄金の銃が現れる。

 眩い光を放ちながら、その銃は確かに因果そのものを宿していた。

 クロノスが目を細める。


「……ゴールドメイデン」


 美秀は静かに銃口を向けた。


「これは、私の意思。

撃つと決めた未来を、絶対に変えさせない」


 クロノスが手をかざす。


「無駄だ」


 引き金が引かれる。

 黄金の弾丸が、光の軌跡を描いてクロノスへ向かう。


「時間はすべて、私が支配する」


 クロノスが静かに宣言する。

 時間が反転する。

 弾丸が撃ち出される前へと遡る。


「まだよ」


 黄金の弾丸は、時間の逆流の中でも消えない。


「この弾は、必ずあんたに届く未来に固定した!」


 クロノスの目に、初めて焦りが走る。


「……ならば、すべての始まりまで戻す!」


 クロノスの声がわずかに震えた。

 時間の層が何重にも積み重なり、世界の景色がモザイクのように崩れ落ちる。

 それでも、黄金の弾丸は、時間の流れに抗うように真っ直ぐ飛び続ける。


「馬鹿な……」


 クロノスは手を振るい、時間の層を幾重にも重ねる。


「諦めない!」


 美秀は静かに呟く。


「その弾丸の未来はもう決まっているの」


 弾丸の軌跡が、世界に刻まれる。

 巻き戻しによる時間の層を貫きながら、弾丸はクロノスへと収束していく。

 しかし、クロノスも限界を超えて時間を巻き戻し続ける。

 時間の渦と、因果の矢が正面からぶつかり合う。

 世界が軋み、光と闇が拮抗する。

 そして......すべての動きが止まった。

 黄金の弾丸は、クロノスの目前で静止し。

 時間は、これ以上巻き戻らない。

 時間は、それ以上進まない。


「……決まらない、のか」


 美秀は、息を震わせながら銃を下ろした。

 クロノスも手を下ろす。


「お互いの能力が相殺されたのか」


 結果は、どこにも存在しない。

 撃った弾丸も、撃たれる未来も、

 すべてがなかったことになったのではない。

 起こり得た未来も、過去も、全てその場に封じ込められた。

 世界から音が消えた。

 光も影も凍り付く。

 動いているのは、ただ二人の視線だけだった。


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