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竜の国 ~オスキュリートの血~  作者: 夢野 幸
第一章 出会い
4/39

1-3

 水の集落。この国で水を守りし、水を扱う竜人の集落。それは海辺に住居を置く者たち。海と共に生きている彼らは、もし海が汚れたとしても、それを取り払う力を持っている。


「いつもありがとうね、ユー」

 配達を終え、集落を出ようとすると、わずかに腰の曲がった女性から声をかけられた。

「あ、エーウさん」

 集落の長、ラマーの奥さんだった。彼女は優しく微笑み、ユーの手に、そしてバッグの中に何かを入れる。それは桃だった。

「これ、お裾分け」

「ありがとうございます」

 ユーは微笑み、渡された分もバッグにしまうと、そのまま飛んだ。


 最後に来たのは、雷の集落。遥か山の頂にすむ、その身に雷を宿す者たち。その力は強く巨大で、大地が焦がれるほどの威力を持つ。

 

 そこでもユーは、配達する先々で声をかけられていた。その度に微笑みながら頭を下げている彼に、ヴェントは頭の後ろで手を組むと近寄る。

「知り合いが多いんだね」

「……知り合いが多い、と言うよりも、配達しているうちに覚えたってところかな。というか、風の集落できみを見かけたことがないことに、ボクは驚いてるんだけど」

「ボクは大体、朝から夜まで集落の外にいるから」

「ふぅん……。それで、どこまでついて来るの?」

 気づけば、ユーのバッグの中身は桃二つだけになっていた。ヴェントはそれを見てふと微笑み、頬を指の腹でかく。

「うーん、どうしよう……。ユーはもう帰るの? どこに?」

「……リ・セントーレ」

 リ・セントーレ。この国の中心部にある、いわゆる首都だった。それぞれの集落の人々が自由に出入りをし、また、最も発展している都市。

「へぇ! リ・セントーレの人だったんだ」

 どこか、目がキラリと光ったヴェントに、ユーはため息をつくと帰路に着こうとした。その場を去ろうとしたユーの後について、ヴェントは翼を広げる。

「ボク、まだリ・セントーレには行ったことないんだ! 着いて行ってもいいかな?」

「……お好きにどうぞ」

 ユーは、どこか冷めた口調で言った。それでもヴェントはユーの隣に並び、チラともこっちを見ないユーへ視線を向ける。

「ユーの手袋、珍しい柄だね。両手に眼がついてる」

 飛びながらそれをよく見ようと、彼に手を伸ばした。直後に手の甲が熱くなったのを感じ、ヴェントは首をかしげる。彼を見てみると目を丸くし、申し訳なさそうに目尻を下げていた。

「あ……その、ごめん……」

 どうやら今、手を叩かれたらしい。ユーはヴェントの手を持つと優しく息を吹きかけ、そっと摩った。ヴェントはそんな彼の頭をガシガシと撫でまわし、歯を見せて笑う。

「大丈夫だよ。ボクの方こそごめんね、気に障ること言っちゃったかな」

 ヴェントの言葉に、ユーはわずかに視線をそらすと、何も言わずに首を振り、再び飛び始めた。ヴェントはそれを見てヒョイと肩をすくめ、今度は大人しくユーの後をついて飛ぶ。

 二人はそのまま会話もなく、リ・セントーレへ向かったのだった。

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