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ぶっきらぼうに、ミールは言った。ジューメは傷口に包帯代わりのマントをきつく巻きつけながら、苦笑する。
「腕白坊主の世話を、昔はしていたってことか?」
「……ま、否定はしないな」
右足に包帯を巻かれながら、どこか苦々しい表情を浮かべるミールに、ジューメは微かに吹き出した。そんな彼に眉を寄せながらも、ミールは炎にあたっている二人に視線を送る。
「なぁ、大天使コンダムは、一体何を考えている。……オレはお前たちから依頼を受けた時、オスキュリートは絶対悪だと聞いた」
「……あの人にとってはある種、そうかもしれない。……・オレも、オスキュリートの男は……嫌いだ。だが」
伏せた目はどこか、悲しそうで、ジューメは彼が口を開くのを大人しく待った。その間、骨折に響かないよう気をつけながらも、二の腕にも包帯を巻いていく。
「あの子に、罪はないんだよな……。……オレにも、コンダム様の考えが時々、判らなくなる。お前に対する依頼もそうだ」
「……オレに? ……それは、オレを直接指名したということか」
「そうだ。集落を出た、尾と角を持つ炎の竜人ジューメ=エンファー。……お前に、オスキュリートの始末を依頼しろと。他の奴ではダメだと、な」
「……意味が解らねぇ。なんでお前のところの親玉は、オレのことを知って……?」
静かに首を振るミールに、ジューメはそれ以上問いただすことが出来なかった。治療を終えると、項垂れるようにうつむいている彼を、ジッと見つめる。
「……それに。オレがお前たちを……連れて行かないのも。訳がある」
「あ?」
「言っておく。もし、あの人と戦うことになれば……あぁ、あの人はオスキュリートを心の底から嫌っているから、恐らくそうなるだろうな。
お前たち、死ぬぞ」
低く、真剣な声音に、ジューメは表情を引き締めた。彼の顔は青ざめ、握った拳は震えている。
「……あの人の強さは、光の竜人の中でも異常だ。幼いころから剣術に興味を持っていた、戦うことに興味を持っていた。だから……守られる側であるはずなのに、兵に交じって戦い方を学んでいた。訓練を始めて数年後には、オレ達が束になっても、勝てないほどになった。挙句……ある出来事を境に、その力は跳ね上がった」
「ジューメー、ミールさんー! お肉焼けたみたいだよー!」
「魚も焼けたよー、あ、そっちに持って行こうか?」
重い話を打ち砕くほどにあどけない、二人の声が響いてきた。それにジューメとミールは振り返る。
「……死ぬかよ」
「……?」
「お前、あれ、ぶっ壊したいの?」
上半身は裸のまま、焼けている肉と魚を頭の上で振っている二人に、ジューメは目を細めた。その二人の笑顔に、ミールもまた、首を振る。
「な。オレは、あれを守る。大天使の元に行って野郎の考えてること全部吐かせて、無事に帰って来るんだよ。オレ達は。……おいお前ら! そろそろ服も乾いてるだろ、さっさと着ろ!」
立ち上がったジューメは問答無用でミールに肩を貸し、目を丸くする彼を立たせると、服を着ながらキラキラと笑い、話をしている二人の元へ歩くのだった
食事を終え、武器の手入れをしてしまうと、ジューメは空で遊び始めている二人へ目を向けた。傍にはミールも同じように、どこか寂しげに子供たちを見つめている。
「……ウィユが、何をしたって言うんだ」
「あの子が、じゃない。……オスキュリートと言う、存在が、だ」
「だから、意味がわかんねぇって。じゃあオスキュリートが何をしたって」
「………」
だんまりを決め込んだか、ミールはそれ以上口を開かず、頬杖をついて目を閉じてしまった。それにジューメはため息をつき、口に手を当てると空に顔を向ける。
「おい! そろそろ戻って来い、さっさと寝ろ!」
声がそろった返事が届き、ヴェントとユーは地面に降りてきた。ジューメが乾かしてくれた毛布に二人で潜り込み、ピョコンとジューメを見上げる。
「ジューメは寝ないの?」
「仮眠は取るけど、夜に何が起きるか分からないだろ」
「えっと、ミールは?」
「……オレは休ませてもらう。疲れた」
「元はと言えばお前たちのせいだろうが」
思わず愚痴るジューメに見向きもせず、ミールは木に寄りかかるようにして目を閉じてしまった。それに三人は苦笑し、肩をすくめる。
「ま、お前たちは何も考えないで良いから、休んどけよ」
「ありがとう、ジューメ」
と、ユーは毛布に潜り直すとすぐに寝息を立て始め、ヴェントはそんなユーの体をポンポンと叩きながら、目を閉じた。




