ユウ
私、アニスは最近Dランクになった冒険者だ。
丁度冒険者生活にも慣れてきて、油断というか気が大きくなっていた。
私はいつも通り、ゴブリン達の討伐へ向かった。
群れとなると逃げるしかないが、三、四匹なら危なげなく狩れていた。
慣れてきた事による油断と、その普段なら問題のなかった狩りの油断。
それが重なって私は背後から迫るゴブリンの攻撃に気づけずに意識を手放した。
次に私が目を覚ましたのは薄暗い洞窟、ゴブリンの巣だ。
私は「ここで終わるんだ」と思った。
私の両親は数年前に流行病で亡くなった。
兄弟も居ないので、両親に会えるという無理矢理な暗示をかけて恐怖を忘れようとしていた。
そんな時には彼はやってきた。
複雑な表情をした黒髪黒眼の青年だ。
私たちの拘束を外すと、ユウと名乗った。
一緒に捕まっていた男の冒険者がゴブリンについて聞くと、全て倒したそうだ。
有り得ない。そう思った。
だって彼はどうみても体は細いし、武器すら持っていない。
彼が言うには魔術で倒したらしいが、それも有り得ないと思った。
やがて、繁殖室につくと一面は血塗れだった。
彼はがっくりと肩を落とし泣いていた。
こうなるのは当たり前な筈なのに、彼はこれを自分のせいだと思っているようだった。
彼は彼女たちを外に出し、火葬をしてそれを眺めていた。
私や捕らわれていた人達は少し離れて野営をしていた。とても町まで歩けるほど体力は皆無いらしい。
私は今日きたばかりで、顔も見知らぬ人達が仲良くしている中にいるのは居心地悪く、彼、ユウの元へと向かった。
ユウは倒れた木に腰をかけて炎をみていた
私が近づくと振り返って彼は
「…えっと…」
洞窟内で自己紹介したのに忘れているらしい。
「アニスです、それより大丈夫ですか?ずっとここにいて。」
「大丈夫。アニスこそ平気なの?」
逆に心配してくれているようだ。
「はい、私が連れてこられたのは今日だったので大丈夫です。」
ユウは少しつらそうな顔をしてる。
「ユウさん、何かあったら相談聞きますよ?」
思わず言ってしまった。お節介だろうか?
ユウはゆっくりと炎を見つめて
「…救われたって言ってたんだ。」
「あの部屋に行ったときに、一人の女性に言われたんだ。私は救われたって。でも彼女は死んでしまったんだ。」
救われた…そんなことを言われていたんですか…。
「俺はね、助けてあげられたのかなって思ったんだ。で も彼女達は自殺してしまった。そうしたらさ自分が殺し たような気がしてさ。」
彼は炎を見つめたまま動かない。
彼は何を言っているのか。彼は殺してなどいないのに
「違います!」
思わず声を荒げる。
「あなたは救ったんです!殺してなんかいません!彼女 達はっ!ゴブリンの子を産み続けるモノから人に戻れた んです!彼女達はモノではなく、人として死ねたんです !」
私はユウにそれを伝えた。ユウは涙を流し始める。
「あなたは私も、他の人達も救ったんです!だから自分 を責めないで下さい!」
そう伝えたとき、ユウは涙を流し
「ありがとう。」
その一言と共に小さく笑った。
何故だか、私も泣いていた。




