涙
俺は大きく燃える炎から少し離れて、それを眺めていた。
炎の中には繁殖室にいた女性たちの亡骸がある。
彼女たちは全員死亡していた。
体が弱っていたのもあって助からなかったのだろう。
その亡骸を俺は一度アイテムボックスへ収納し、外まで連れ出し火葬している。
助けられた人達はもう少し遠くで野営をしている。
彼らはお礼を何度も言ってくれたが、気分は暗いままで居心地も悪かった。
だから彼女たちを火葬している少し離れた開けた場所にいた。
火葬を始めた頃は夕方だったのに、いつの間にか周りは真っ暗になり目の前の大きな炎だけが俺を照らしている。
ボーッと眺めていると、後ろから足音が聞こえてきた。振り返ると助けた茶髪の優しそうな女性の一人がいた。
「…えっと……」
「アニスです、大丈夫ですか?ずっとここにいて。」
彼女はアニスと名乗り、少し心配そうな顔をしながら近くへ来る。
「大丈夫、アニスこそ平気なの?」
「はい、私が連れてこられたのは今日だったので大丈夫です。」
アニスは小さく微笑みながら俺を見る。
「ユウさん…何かあったら相談聞きますよ?」
俺の表情を読んでかそんな言葉を投げかけてくる。
少し戸惑ったが、また炎を見つめてその言葉に甘える。
「……救われたって言ってたんだ……。」
「え?」
「あの部屋に行ったときに、一人の女性に言われたんだ。私は救われたって。でも彼女は死んでしまったんだ。」
俺は素直に自分の考えていた事を伝える。
「……それは……。」
彼女も戸惑っている。
「俺はね、助けてあげられたのかなって思ったんだ。でも彼女達は自殺してしまった。そうしたらさ自分が殺したような気がしてさ。」
「違います!」
急に彼女は声を荒げる。
彼女は体に力が入ってか震えている。
「あなたは救ったんです!殺してなんかいません!彼女達はっ!ゴブリンの子を産み続けるモノから人に戻れたんです!彼女達はモノではなく、人として死ねたんです!」
彼女は息を荒げ、肩で息をする
「でも…俺は…」
頬を熱いものが伝う。
「あなたは私も、他の人達も救ったんです!だから自分を責めないで下さい!」
涙で目の前の炎が見えない。
「ありがとう…」
泣きそうな彼女を見つめて、俺は泣きながら
彼女へ精一杯笑顔を作って見せた。
次はアニス視点で