第十九話 勇者
目線アキト→リュウ
「おお、よくぞ!いらっしゃいました!勇者殿!」
俺はなんでここにいるのだろう。
確か溺死した記憶しかないんだが、なんか生きてるっぽいな…
適当に歩いていたら巡回していた兵士に捕まり、なぜか老人にいる部屋に連れていかれたんだ。
部屋を出た理由は…ない。
取りあえず老人に相づちを打つ。
「勇者…?なんだそれ?RPGで言う、あの勇者か?」
自分がため口なのは気にしない。
「あーるぴーじー?ですとな…まさか…!それは禁じられし魔法…!」
「おじさん…いい歳して厨二病か…?」
「厨二病!?それは病気の一種ですかな!?」
「ああ…かなりの重症だ…」
「も…もうそんな歳か…」
「普通…歳とる毎になおるはずなんだがな…」
そんな話をしつつ、俺は話を戻す。
「それで、おじさん…勇者ってなんだ?」
「実は…この世界にいる魔王を倒すために…勇者達を召喚したのじゃ」
「…へー…」
「なんじゃ!その『へぇ、この人頭イカれてるんじゃねー?』みたいな顔は!!」
「なんで分かんだよ!」
「なんと!?真に当たったぞ!?」
「本人驚くな!」
まて…これじゃまた振り出しに…
「お爺様!いい加減話を進めてください!」
後ろを振り向くと幼い青髪のツインテールの女の子がいた。
目は若干つり目でその表情は怒っている様に見える。
「おおと…そうであった…では、勇者殿。これからの事を良く聞いて下され」
「は?」
いやいやいや!まだ聞きたいことあるんだけど!
「今から一週間後…王都ヴァルガンノへと向かって貰いたい。」
「な…ここが何処かも話されていないのにか!」
俺は怒鳴る。
いきなり見ず知らずの人に何処其処へいけと言われたってこんな反応するのが普通だと思う。
「…勇者って怒りっぽいのね」
女の子が口を挟む。
「こんな状況でどうしろってッ…!」
「自分の運命を受け入れる事よ…私はとっくに受け入れてるもの…」
「受け入れられるか!チビ!」
突発的に俺は言葉を発する。
おじさん?知るかっ!今はこっちが優先だよ!
「ちっ…チビですって…!?…むぅううううううっ!私はチビじゃないわよっ!」
「どっからどう見てもチビだろ!大体なんで子供がここにいるんだ!」
「はぁっ!?子供!?私はもう16よっ!!」
「…!?」
「なんでそんなに驚いてるの!?」
「いや…その身長で…ああ…ああ!仕方ないよな!後から伸びるって!大丈夫!」
「励ますのやめて!?なんか私が慰められてるみたいじゃない!」
いやぁ…本当、身長って分からないぞぉ…中学で背がちっこいやつだって高校入った直後、有名な配管工の大好物のキノコ食ったか?ってくらい大きくなるからな!
…って俺なに言ってんだっけ。
「あー…なんか…ごめ…少し頭に血が昇ってたかもしれない。」
「う…うん…分かればいいの…分かれば…」
「それで、おじさん…俺は今から何すればいい?」
俺は女の子に謝罪した後、おじさんに話をする。
「ぷくくく…孫がチビッ…」
「お爺様…その顔面…血だらけにしますよ…?」
女の子は鋭い視線でおじさんを突き刺しながらドスの効いた声で言う。
「ご、ホン…そうですな…勇者の力を開花させる為に魔物と戦闘をして経験を積むのが宜しいでしょう。」
「ま、もの!?」
魔物ってあれだよな?有名なゲームにいる青色のプルプルとか、なんか固定された姿勢のまま戦闘になるサボテンとか…
「私の孫娘を勇者殿のパーティに加えさせて貰います。」
「私は…フィリア・クラブ…チビじゃないからぁっ!」
チビじゃないことをなぜ強調した…
「…貴方…は?」
フィリアがたずねてくる。
「俺か…俺は白崎 竜。」
「…本当に日本人なんだ…」
「ん?なんか言ったか?」
「い、いえ、何でもない!それより名前は苗字が後よ!」
「はーん…そうなのね…」
紹介が互いに終わった所でおじさんが話す。
「それではフィリアを宜しく頼みますぞ。私はこの村の村長ヒロ・クラブ。困った時は私にご相談を…」
「分かった。」
「ああっと、一つ忘れておりました。」
「ん?」
「勇者殿にはこの家に一週間滞在して貰うので一階の客室をご使用下され。そしてその服ではない違う服も用意させて貰いましたのでそちらへ着替えて下され。」
「分かった。まず、一階の客室へ向かって着替えて外だな。」
「貴殿のご活躍を期待しておりますぞ…!」
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「で、だ…外で待っててくんね?」
「私の勝手でしょー…なんか変なことしでかしたら嫌だし」
客室に二人、リュウとフィリアの言い争う声が聞こえる。
「変なことってなんだよ…」
「い…!いいでしょ!そんなの!いいから早く着替えなさいよっ! 」
「着替えたいけどお前…後ろに振り返ってるなら外へ出てろよっ!」
前途多難だな…こりゃ…




