第二十話 世界の常識
白銀の世界…空は灰色に包まれた村…
俺はこの村の民族衣装と思われる物に身を包み、村を歩いている。
「確か外で魔物討伐だったっけか…一週間そうしてろっつうのか…」
「ちょ、少しペース早くない?」
フィリアは後ろから着いてきている。
「ん、そうか?なら遅くするけど」
「む…いい。頑張るから」
「つか俺が先頭行ってもどこ向かえばいいのか分からないからブラブラするだけなんだが…」
これは正論だろ。
まぁ…村の外でりゃ魔物はいるもんだろうけど。
「あっ…そっか…リュウはここの事分からないんだった…」
「分かったらそれこそホラーだ…」
「あははっ!それもそっか。それじゃ簡単な案内だけするね。」
ここの村は水の村クラブというらしい。
水の国という流通都市から南東にある場所にこの国は位置している。
この村は水の国の南東の端にある。
まぁ、そのまま南東に行っても氷河の流れる海にダイブする事になるからいけないっつう訳で。
俺らは北へ行く。
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「…あのな…武器なしで戦えっつうのかよ…」
防具がぬののふくとかどこの主人公だよ…
あ…ドラ○ンクエストか
俺の目の前にはドロドロの液体…
そう!あの有名なRPGの雑魚モンスターッ!
「にしてはグロ過ぎるだろ…」
ボソッと俺は言う。
その姿はまるで青い物体で何かの骨らしきものが中でうごめいている。
「流石に拳で殴りかかるのは抵抗しかないな…」
「へぇー勇者の実力ってそんなものなんだー」
「うっせ!チビ!」
「な…!チビじゃないって言ってるでしょ!」
ったく…
幸い、動きは鈍いし攻撃される心配はないとは思うが…
攻撃できねー…
「…はぁ、分かった…少し見てて…」
「…武器なしで何やるんだよ」
「決まってるでしょ…!」
フィリアは両手を真横にかざす。
「この魔法…当に氷点下…!水は姿を変え…凍てつく一撃となれ…!」
そう唱えると目の前に手をかざした。
「貫く氷塊!氷槍!」
こちらにも伝わる冷気…
フィリアの手から鋭い氷の槍ともいえるべきものが出てきた。
そしてそれがスライム(疑)に命中し、貫き、スライム(疑)は破裂する。
「すぅ…ふぅ…どう?凄いでしょ!」
「なっ…お前…人間か?」
「なんでそうなるのっ!?」
「いや、何をしたのかさっぱりだったんで」
「…これは魔法っていってね、魔力をぎゅっとしてばっとするとボンッてでるの」
「表現が分かりづらいな!おい!」
ぎゅっばっボンッてなんだよ!
「むぅう…リュウもやってみれば分かるよーだ!」
「やるったって…」
「大丈夫だってば!ほらほらっ!」
俺が出来る訳ねぇだろ…
俺は雪が積もった樹を狙う。
右手を前にかざす。
「…荒れ狂う激流…我の内に秘められし力…」
かざした手を拳にし、胸にあて、いつのまにか閉じていた目を開いた。
「今…解き放たれる…!」
右手を左から右にかざす。
そして上に挙げる。
「…津波…!」
そう言ってすぐに地面に右手をつけた。
「…って俺何やってん…」
そう言った瞬間、目の前の地から前方に向かって津波のように水が押し寄せる。
目の前に立っていた樹が波に飲まれ、倒された。
「…す…ごい…」
フィリアが何かを言った気がしたが俺は目の前の事が気になりすぎて耳に届かない。
「フィ…フィリア…これ…なんだ…?」
「っえ!?…あ…や、やるじゃない…」
「は?」
「…もしかして気づいてないの…?」
「いや…何が…」
「それは貴方が唱えた魔法でしょ!こんな凄い魔法…私だってまだ出来ないのに…」
「俺が…?唱えた…?」
俺が…唱えた…魔法…
いやまて
話についていけねぇぞ
俺が唱えたってどうやってだ!?
「どうやって唱えたんだ俺…」
「…はぁ?どうやってって…まさか…いつの間にか唱えてて出来ちゃいましたー(笑)って感じじゃ無いでしょうね!」
「全くもってその通りだ」
「…はぁ!?」
「…つか…休んでいいか?なんか…疲れたんだが…」
「…あっ!ちょ…ちょっと!」
フィリアの呼び止める声を無視し、俺はクラブに向かう。
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「…俺…どうしたんだろうな…」
さっきの自分の行動が理解出来ない。
まず、なぜ俺が魔法を撃てたのかが疑問だ。
そしてフィリアが言っていた限り、とても強力な魔法なハズ…
勇者ってんな感じなのか?
…
っ…なにがどうなってんだ…!
「くそっ!」
「はぁ…はぁ…!…何を…はぁ…言ってるの…」
「っい!?」
いつの間に追い付いてきたんだ!?
気になったが、口に出さないようにした。
「何に…驚いてるの?」
「いや……なぁ…聞いてもいいか?」
「何を?」
「…この世界って…人が死ぬのは当たり前なのか?」
魔法が使え、さっきの魔物もいる。
ならば必ず死と隣り合わせなのだろう…?
この世界は…
「…そうだよ…毎日の様に人は死んで行く…魔物がいる限り…私たち人間はその死を恐れながら過ごすしかないの」
思った通りか
やはり俺は…
常に死のつきまとう世界に来た。
そう考えるのが妥当だろうな
「…だから…私たち人間は…100年に一度現れる魔王を倒すの…!」
「…魔王を倒せば魔物は消えるんだろ?」
そう言ったがフィリアは首を横に振る。
「少し…ほんの少し魔物を抑制出来るだけ…」
「意味ねー…」
ぶっちゃけ俺の本音だ。
「それでも…!なにもしないよりいいじゃない!」
「…ったく…召喚される身にもなれっつうんだよ…」
「う…」
「…魔物が現れる原因は他にあるんじゃないのか?」
「例えば?」
「…これから…探す」
「駄目じゃん!」
「まぁ…魔王退治っつうのは気が進まねぇなぁ…」
ゲームに当たるラストボスポジションだろうが、多分、倒さなくてもいいんじゃないだろうか。
…魔王が世界を滅ぼすーとか中二全開な発言さえしなければ…
「で…でも…」
「ってかまず死なない様にしないといけないな…まだ死にたくねぇし」
「…うん…そう…ね」
死なない様に…ねぇ…
そうなると命のやり取りなんか普通なんだろうな
魔王とかの問題よりこっちのが今は重要だ。
「…だからフィリア…明日から魔法を教えてくれないか?」
「…え?」
「魔法の基礎とかさ…詳しそうだし、いいか?」
「…分かったッ!厳しく指導するよ!」
「頼む」
そう…まずは戦い方からだ…
魔法を扱えれば戦闘に役立つだろうし、武器なしでは最高クラスの威力を望めるしな。
そう俺は考え、フィリアに教えてもらう事になったのだった。




