十話:スキルについて
これだけファンタジー色出しながら今回でやっとそれらしいのが出ます。
今まで何やってたんだ! というと、小暮さんと翔が延々と駄弁ってただけです。
調停者が決まったら、段々とシリアス及びバトルも出てきますが、基本は小暮さんいじりがメインです。
小暮「ちょっと!? なんであたしばっかりがいじられるのよ!?」
「そんなところにあたしが住んでも―――というか入っても大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫」
ドアノブにかけていた手を離し、振り向く。
そして小暮さんの目の奥を覗き込むようにしていう。
「俺、小暮さんは悪い人じゃないって知ってるし。信用する」
「昨日あったような人を信用するって、品野くんって結構すごいよね…」
「ああ、勇者になったことでさ、勇者のスキル『審眼』を使えるようになったんだ」
『審眼』。
相手の目を覗き込んだらその人が悪人かどうか、また、過去に犯した罪が見えるという代物だ。
このスキルの結果は色でわかる。瞳の奥の色が見えるんだ。
小暮さんは純白。
「ここまで白いと逆に悪い人に騙されちゃいそうでお母さん心配」
「そんな心配結構よ!」
「うん、まあ、というわけもあるけど、それ以前に、俺一個人として小暮さんを信用してる。小暮さんはいい人だ。俺が保証する」
「……そんな、面と向かって言われたら……!」
何か言ったような気がするけど、多分気のせいだろう。聞こえない。
「あれ、どうしたの小暮さん。顔真っ赤だけど。やっぱりまだ怒ってる?」
「御主人様。ここは熱があるのか、と心配する場面ではないでしょうか」
今まで沈黙を保ってぼーっとしてたケイトが口を開いた。
「そうか。――――というかケイト、俺のことは翔でいい。御主人様はなんかくすぐったい――――小暮さん、熱?」
小暮さんの額に手を伸ばす。一瞬ビクッと体を震わせたものの、おとなしくされるままな小暮さん。
「うーん、熱、はないような」
「べ、別に熱なんかないわよ! ちょっと……そう、品野くんに突っ込むことが多すぎて疲れただけで!」
☆☆☆
「ふう、疲れた」
「お疲れ様」
「まあ、家を壊してるからね、これぐらいはするさ」
小暮さんの家と俺の家を往復し、やっとすべての荷物を運び終わった。
女の子だから仕方がないのか小暮さんだから荷物が多いのか、荷物を運ぶだけで一時間ぐらいかかってしまった。
「思考を口に出してるわよ? ……わざと?」
小暮さんがジト目で睨んでくる。
「まさか」
「じゃあなんでそっぽを向いてるの?」
「あれだよ、ちょっとケイトの胸の発育具合が気になって」
「どうせあたしは貧乳ですよー!」
「小暮様。……ドンマイ」
「ケイト、おまえ、たまに俺が思いつかないこと言うよな…。気に入った!」
「なんで今の会話の流れで!?」
とまあ、それはさておいて。
ポケットから携帯を取り出して、コール。
Prrrrrr―――――