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 魔法使い普通代表。

 それが私だ。

 警戒されるほど強くもなく、驚くほど弱くもない。

 十段階評価があったら、五と六の間ってかんじの。

  容姿は悪くない。だからといって器量よしというわけでもない。

 誰かの横を通ったとして、今のは女の人だな、と思われるくらいのさほど印象の残らない、別に相手に不快感を与えるほどでもない見た目の女でもある。


 魔女の娘として生まれ落ちてこのかた、魔法使いが属する軍隊で隣国の魔法軍とかれこれ一ヶ月間必死に戦って来た。

 魔法使いとは思えぬ槍さばきで敵を威嚇した。

 敵はおののいていた。

 そして不毛な戦いは昨日ついに終わりを迎えて、先々の不安から皆が解放された。やった!

 この戦争に鮮やかな終止符を打ったのは相手の国の女王だ。

 我らが本陣営へ単身乗り込み王様に口づけをかまし、その身ひとつで見事この戦いを終わらせたのである。



 ……おわかりだろうか。

 うちの王様に、敵国の女王が口付け。

 

 そうこれは、ただの痴話喧嘩だった。


  え? 言い間違えじゃないかって?

 間違いではないです本当です。いい大人が恋やら愛やらで戦争してたんです。

 口付けというのは、嫌いな人間相手にはできない行為だ。少なくとも私は絶対にできない。 それにより争いが激しいほうへ変化することなく、あっという間に戦争が終わった。

 ということは、だ。

 そういう仲で間違いないのである。


 孤高の女王と孤高の王。

 二人は独身。昔からの幼馴染み。

 強い魔法使い同士。骨肉の争いゆえに王座についた者同士。

 簡単には恋人になれない身分。けれども惹かれ合う二人。

 小説かと思うくらい、この二人の設定はてんこ盛りだった。

 盛り過ぎて嘘かなと思うくらいだ。

 そのへんの三流脚本家のほうがまだ現実味のある話を書ける。

 何が原因で戦争勃発までいったのか知らないけど、チューひとつで解決したんだから、どうせたいした理由じゃなかったんだろう。

 戦争の勝敗はとりあえず引き分けで終わった。


 二人が恋仲だというのは噂でほとんどの人が知っていた。

 王様の命令だから戦争に出たけど、皆本気で戦わなかったし、死者は出ず(農作物に被害は出た)、戦争の勝敗関係なくここがくっついたら自分達の国はくっつくのかどうかそれだけが気になっていたし、国がくっついたらくっついたでどんな国名になるのか予想している人間だっていた。

  危機感の危すら感じていなかった。むしろちょっとはしゃいでもいた。

 だって犬も食わない。


 なんで戦争している国同士の国民がこんなに一体化を受け入れているのかって?

 それは、私たちの国が大分野蛮な国に囲まれているからだった。

 侵略とかはしょっちゅうある。山間の村とか町とか誰かしら攻めてくる。魔獣も多い。蛮族が魔獣を操って乗り込んでくることもある。

 王政が敷かれている我が王国は、何者にも破られぬ鉄壁の城を国の中心に、煉瓦造りの道が這う城下町、繁華街田園地帯農業地域と広まっている。歴史は長かったり短かったり。国土はそれなりにある。

 歴代の王様が強い魔法使いだったので、何かあればギリギリなんとかしてくれていたのが、現状国として生き残れてきた理由の一つだ。

 今の王様もお強い方だ。

 前王の一人息子。他の親戚がその座を狙おうとしていたらしいが、ことごとくやり返されて失敗して処刑されている。

 竜の血を継いでるだとか言っている人もいた。

 この国、というか地域は昔から竜を信仰していて、その強さから初代国王は竜の血を継いでいたのではないかということを信じている人が一定数いる。

 ゆえに誰も逆らう人はいない。

 竜は現実にいる。昔はこの国の谷に住んでいたという噂だ。

 でもこの国にはもういなくて、今はもっと遠い国、山が多い土地に移り住んでいる。

 私は竜を実際に見たことはないけど、さすらいの商人が時々市場にやってきて、竜の鱗や爪を売っているのを見る。


 国境付近は常に国王の兵がいて、いつ攻撃されても対応できるようになっている。

 けれど押し負けることも当然あるので、近くの農家はいつもビクついている状況だ。

 特に西側の国は気性が荒い。

 そんな国がたくさんある中で、この隣国はだいぶマシ、いいやぜひ一緒に戦おうと思える同志的な国だった。

 歴史を辿ればもともと両国は一つだったのもあり、国民同士互いに親戚が散り散りでいたりなんかして、どっちかが仮に吸収されたとしても「吸収されちゃったねー」くらいの感想しか出てこないと、以前隣に住むおばちゃんがつまらなそうに話していた。

 普段から王家の世継ぎが血筋が~と、やたら君主の家庭事情に首をつっこみたがる裏手に住む頭の硬い爺さんさえそれに頷いていた。

 まぁそういうことだ。

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