ルカのはじめてのうた
ここはふわまるずが暮らす、ふわまるタウン。
今日は、川のそばから歌声が聞こえてきます。
でも、いつもとすこし違う歌声のようですよ?
ルカは、いつも歌っていました。
歩きながら、食べながら、川を見ながら。
でも、それはいつも「誰かの歌」でした。
知っている歌、聞いたことのある歌、覚えている歌。
自分で作った歌は、まだ一度もありませんでした。
その日の朝、ユキが言いました。
「ねえルカ、自分の歌って作ったことある?」
「ない」
「作ってみたら?」
「……むずかしそう」
「わたし、作ってみたいんだけど、ひとりじゃ不安で」
ユキはマイクをぎゅっと握りました。
「一緒に作らない?」
ルカはしばらく考えました。
「……やってみる」
ふたりは川のそばに座りました。
「まず、何について歌う?」
ユキが聞きました。
「……ふわまるタウンのこと、かな」
「いいね!じゃあ、ふわまるタウンのどんなところ?」
ルカは川を見ながら言いました。
「川の音とか、ひーくんのスープのにおいとか、ジロウが転がってくるとことか」
「それ、全部うたにしよう!」
ふたりは考えました。
「川の音はね~、ちょろちょろって感じ?」
「ちょろちょろ……ちょろちょろ……」
ルカが口ずさみます。
「そこに、スープのにおいがふわっとして……」
「ふわっとふわっと……」
ユキが続けます。
「ジロウがコロコロコロってきて……」
「コロコロコロ……あ、これなんかいいかも!」
しばらくして、短い歌ができました。
ちょろちょろ川がながれてて、
ふわっといいにおいがして、
コロコロ誰かが転がってくる、
ふわまるタウンのいつもの朝。
「歌ってみる?」
「うん」
ルカが歌いました。ユキが途中から一緒に歌いました。
音はところどころはずれました。
言葉もところどころつっかえました。
でも、ふたりはとても楽しそうでした。
歌い終わって、ルカはしばらく黙っていました。
「どうだった?」
ユキが聞きました。
「……なんか、ふしぎな感じ」
「ふしぎ?」
「誰かの歌を歌うのと、ぜんぜん違う感じがした」
「どう違う?」
ルカは少し考えてから、言いました。
「……自分の声がする感じ」
そこへ、通りかかったライくんが立ち止まりました。
「なんか、聞こえた気がして」
「ルカが歌作ったんだよ!」
「え、ほんとに?」
「聴いてもいい?」
ルカは少し照れてから、うなずきました。
もう一度、歌いました。今度はユキも一緒に、最初から。
ライくんが静かに聴いていました。
歌い終わると、ライくんは言いました。
「……ふわまるタウンのこと、ちゃんとわかる歌だね」
「ほんとに?」
「うん。聴いてたら、川の音が聞こえた気がした」
ルカはそれを聞いて、なんだかじんわりした気持ちになりました。
夕方、川のそばでルカはひとりで口ずさみました。
ちょろちょろ川がながれてて、
ふわっといいにおいがして、
コロコロ誰かが転がってくる、
ふわまるタウンのいつもの朝。
自分の声で歌う自分の歌は、やっぱり、ふしぎな感じがしました。
いい意味で。
「「まだふしぎな感じだけど、まっいいか」」
—おしまい—




